018 なにそれ知らん怖ぁ
昨日の広場に着くなり、ノノがマリーに戦闘技術を教えたいと言ってきた。
ま、まさか、俺が一人でゆっくりと剣を振りたいと言う事を察してくれたのか!?キュン!
こ、この胸の高まりは一体!?これが自由って事なのか!?ひゅ~!
俺は感動のあまり暫くその場に立ち尽くしていた。ありがとうノノ…それしか言葉が見つからない。すると突然轟音が鳴り響いた。
音の方を見ると、倒れた木の前にノノが立っていた。察するにマリーに指導する為に実践して見せたのだろう。
見るにマリーもノノの実力を認めた様だし、ノノ御大のご厚意に甘えて俺は素振りタイムと洒落込む事にしよう。
久しぶりの静かな素振りタイムについつい熱が入る。素晴らしい、やはり素振りとはこうでなくっちゃ。
剣を握る手にもいつも以上に力が入る。
「分かった!分かりましたよししょー!ノノちゃん!!」
すると突然マリーが大声を上げた。何事かとそちらを見れば、マリーが嬉しそうに飛び跳ねている。
「ありがとうございますししょー!お陰で理解できました!!」
「…ああ」
何故感謝をされているのかは全く分からないが、取り敢えず頷いておく事にする。
マリーがノノがへし折った木の、隣の木の前に立つと、ダガーを一閃する。すると一瞬遅れて木が倒れた。
ええ、凄ぉ。何したらそんななるの?少なくとも昨日剣を教えていた限り、今の彼女の実力ではこんな事はできる筈がない。
と言うよりも、二十センチ程度のダガーでは一撃で斬るなんて無理だ。
「…なのクロ?」
「…ああ」
思考に耽っていると、ノノから急に言葉を掛けられた。何のことかは分かんないけど頷いておく。
コミュニケーションで大切なのは、相手の言葉にしっかりと反応する事である。知らんけど。
「なので私はししょーの剣を頭の中でイメージして、そのままダガーにマナを纏わせる様に意識しました!そしたらちゃんと出来ました!!」
何で俺の剣をイメージする事が、ダガーにマナを纏わせる事に繋がるのか、これが分からない。
「だから昨日ししょーは、俺の剣を見て真似ろって言ったんですね!」
「…ああ」
確かに剣を振るところを見ててねって言ったけど、それは俺が素振りたかっただけだ。
マリーはノノと何やら話した後、手を木に向ける。何も起こらない事を確認すると、またも何やら話した後今度は手刀形にして、手を振るう。
すると、ダガーの時と同じ様に一拍置いて木が倒れた。
「やっぱり!剣の形に近ければ出来そうです!ししょー!」
ええ…何それ知らん、怖ぁ。どうすれば手刀で木を斬れるのだろうか。そもそも手自体は木に当たって無かったし。
けれどもマリーが褒めて欲しそうな目でこちらを見ているので、取り敢えず褒めておく事にするか。
「…よくやったな」
「!はい!!」
しかし、あれだな。ノノの指導力は凄いな。昨日俺が教えた限りでは大きな成長は無かった。
そもそも剣の腕前なんて、一朝一夕で身につく筈も無いが。だが、ノノは何らかのアプローチでマリーの才能を開花させたのだ。
流石はノノ御大、俺の静かな素振りタイムも、マリーの育成も同時にこなすなんて。俺じゃ出来ないね。
「…ノノ、凄いな」
俺は思った事を素直に口にした。すると、ノノは少し驚いた表情をした。
「…クロ程じゃ、ない」
流石は御大だ、謙虚さも忘れない。あれ程の手腕を見せておきながら、こちらも褒めるとは。なかなか出来るものでは無い。
「あ、水無くなっちゃいました」
マリーが水筒を持ちながら声を上げる。確かに水筒は空になっている様だった。
「…汲んでこよう」
「良いんですかししょー?」
「…問題ない」
御大のお陰で俺は好きなだけ剣を振れたのだ。この位の労働はして然るべきだろう。
マリーから水筒を受け取り、俺は昨日の内に見つけていた川へと向かう。
十分程度で川に着き、水筒を沈めて水を汲んでいると、前方から何やら大きな生物がこちらに向かってくる音がする。
しまったな。水筒を受け取ってからそのまま川へと来たので、剣を持ってくるのを忘れたのだ。
今魔物、それも力の有る魔物との戦闘は避けたい。何処か別の場所に行ってはくれないかと願う。
が、願いも虚しく、その生物は俺の前へと姿を現した。それは茶色の鱗を持ち、高さこそ一メートル程度だが、体長はかなり長く十メートル近くは有るのでは無いだろうかと言った、トカゲだった。
手足がかなり短く、四足でこちらへと向かってくる。ちょっと可愛い。
「グルルルルルゥ」
あちらとしても俺が居るのは想定外だったのだろう。こちらを見つけるや否や、動きを止め低く喉を鳴らし始めた。
さて、どうしたものかね。剣さえあれば首を刎ねて終わりなのだが、剣が無い今そうもいかない。
茶トカゲの方もこちらの様子を伺っているのか、動こうとしない。暫く見つめ合いになったが、焦れてきたのか茶トカゲが動いた。
「ガアアアアッ!」
その巨大な体躯からは想像も出来ない速さでこちらに迫ってくる。魔物は大量のマナを体に取り込んでいる、その為身体能力の強化量も半端じゃ無いのだ。
体を捻り、余裕を持って躱す。躱された事に気がついた茶トカゲが、体勢を整えてまた、飛び掛かってくる。
そんなやり取りを何度か繰り返す。避けるのは全く問題が無いが、このままだと決定打が無い。
俺の事を諦めてくれるのが楽なのだが、攻撃が当たらない事に苛つき始めたのか、攻撃は激しくなる一方だった。
茶トカゲの攻撃を躱しながら、ふと思い出す。腰のポーチに入れているナイフでどうにか出来るのでは無いかと。
この腰のポーチには様々な刃物が入っている。それは全て妹が手作りした物だった。
俺の家は鍛治士を営んでいた為、俺も妹も両親から鍛治を教わった事があったのだ。俺は鍛治士の才能が無く、碌な物を作れなかった。
だが、妹は違った。ああ言った作業が得意なのか、メキメキと実力を付けていった。
その妹の最初に作った作品を褒めてやった所、何かと作品をプレゼントされる様になったのだ。
なので、このポーチには大小様々な刃物が入っている。そのどれも切れ味は折り紙付きだ。
何故、今までこのナイフの存在を忘れたいたのかと言うと、普段は剣を持っていて、当たり前だが、魔物と交戦する時は常に剣で戦っていた為、この刃物達を戦闘に使うと言った発想が無かったのだ。
ともあれ、これで何とかなるだろう。刃渡十センチ程のナイフを取り出し、逆手で構える。
丁度そのタイミングで、茶トカゲが正面からこちらに飛び掛かって来た。
紙一重の距離で躱しながら、目を思いっきりナイフで切り付ける。
「シッ!」
「ゴシャアアアアッ!!」
先程から逃げてばかりだった相手から、傷つけられるとは思ってもいなかったのだろう。
茶トカゲは辺り一帯に響く程の大きな鳴き声を上げると、こちらに背を向け、一目散に逃げていった。
正直、このナイフで止めを刺そうと思ったらかなりの時間と労力が掛かる。こちらとしても逃げてくれて一安心と言ったところだ。
ポーチを開き、ナイフを仕舞おうとしたところで、ナイフに全く血が付いて無い事に気が付いた。なんか知らんけど拭く手間省けてラッキー。
川に沈めたままの水筒を回収して、俺は二人の元へと戻る事にした。
俺が二人の元へと戻ると、何やら心配した様子の二人が駆け寄って来た。
「ししょー!お帰りなさい、大丈夫でしたか?」
「…凄い声が、聞こえた」
どうやら茶トカゲ君の鳴き声はここまで聞こえていた様だ。
「…問題ない」
「…強い魔物と、遭遇したの?」
「…いや、そこそこの奴だ」
まあ会ったのはトカゲ君なので別に強い魔物では無いな。めんどくさい相手ではあったけど。
俺の言葉を訝しんで、『ほんと?』と何度もノノが聞いて来たが、俺がそうだと言えば、納得してくれた様である。
そんなこんなで丁度日も暮れてきたので、俺たちは町へと戻る事にしたのだった。
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面白い奴と出会った。俺はいつもの様に朝の鍛錬の為、宿の近くの広場へと来ていた。
いつもと同じ順序で、いつも通りに刀を振っていると珍しい来客が有った。
俺よりも高い身長。上は股下ほどの長さのチュニックを着ており、その上からベルトで長ズボン共々止めていた。
黒髪黒目のその男は、一見して筋肉量からなにから存在感の強い男だったが、その背に在る物が異常だった。
彼が背負っていたのは、自身の身長よりも長いのではないかと言う程の大剣だった。
長さだけでは無く、太さも異常だ。レンガ程の厚みがあるのではないかと言う程に太い。
こんな奴は初めて見た。もしかするとこいつがギルドで噂になっている、イカナ山から生きて帰って来たって奴かも知れない。
兎に角俺は話しかけてみる事にした。そいつは言葉数は少なかったが、感じるオーラは今まで出会った中でもトップクラスだった。
俺はどうしてもそいつが剣を振っているところが見たくて、頼んでみるとあっさりと承諾してくれた。
剣を振り始めたそいつを見て、俺は度肝を抜かれた。あれ程の大剣を、羽を振るかの如く軽々と扱い始めたのだ。そして、世界にはこんなにも美しく、そして楽しそうに剣を振る奴が居たのかと、そう思った。
別に表情が特別変化した訳ではない。ただ感じるのだ。剣を振るのが楽しくて楽しくて仕方がないって気持ちを。
気が付けば俺も刀を手に持って振り始めていた。どれ程の時間振っていただろうか、気が付けば日も高くなりつつあった。
どちらとも無く剣を振るのをやめる。こいつは本物だ。そして真の強さを知っている。
どうしてもそいつ、クロと手合わせがしたくなった俺は頼んでみようと口を開いたが、それは妹のヨウにやって阻まれる事となった。
まあ、良い。あいつも同じ冒険者だろう、ならばギルドで会う事もある筈だ。
俺たちはソノーヘンの付近にあるダンジョン。白鹿のダンジョンに潜った帰りだった。辺りはすっかりと暗くなり、少しの月明かりを頼りに町へと歩みを進める。
このダンジョンは名前の通り、白い鹿型の魔物、ホワイトホーンが多く棲息しているランク六のダンジョンだ。
この白鹿の角は高値で取引させる為、ここ最近の旅で路銀の尽きかけている俺たちにはうってつけの場所だった。
「お兄ちゃん疲れた〜」
「文句を言うなヨウ。俺だって疲れてる」
ダンジョン帰りに妹の一人であるヨウが文句を言うのはいつもの事だった。
何故か俺の妹達はいつもメイド服を着ている。辞めろと言っても辞めないので俺はもう諦めていた。
ただ、『お兄ちゃんのメイドです!』と周囲に言うのだけは辞めて欲しい。周りから見れば俺が変態に見えるからだ。
「兄さん、何か来てる」
もう一人の妹のツキが口を開く。ヨウと比べて大人しい彼女だが、やはりメイド服を着ていた。
ヨウのメイド服は白い部分が多く、ツキのメイド服は黒の部分が多いと言う謎の拘りも持っていた。
メイド服を着ている部分以外は頼りになるツキの警戒の言葉に、俺とヨウは荷物を下ろして警戒態勢に入る。
少しして地鳴りが聞こえる。かなりの大物が接近している様だ。だがおかしい、この付近にはダンジョン以外にその様な大型の魔物は棲息していない筈である。
つまりはイレギュラー。警戒レベルを最大に上げる必要がある。
「ツキ、ヨウ」
「分かってるよお兄ちゃん」
「分かってます兄さん」
二人も異変に気が付いたのだろう。既に警戒態勢であった。
段々と音が大きくなり、目前の木を倒しながら“ソレ”は現れた。
“ソレ”は高さ一メートル、体長十メートル程もあり、鋭い牙に鋭い爪、そして堅牢な鱗を持つ最高レベルの生物、竜。
その竜の中でも識別名を持つ程に強力とされている地竜その物だった。
「おいおいまじか」
「兄さんっ地竜です!」
「ああ、分かってる」
ツキが声を張り上げる。地竜の強さはランク四。それはランク四の冒険者ならば“対等に”戦えると言う事だ。
つまり同ランクの冒険者が、命を懸けながら倒す相手だと言う事だ。同レベルなら楽に倒せると言う訳ではない。
そして奇しくも俺達三人のランクも四。ここで戦わない選択肢は無い。
「いくぞッ!二人共っ!」
「はいっ!」
「うんっ!」
二人共やる気は十分だ。ここで逃げた所で誰も俺たちを責めないだろう。だが、もし、地竜が町へ向かったら?俺たちよりもランクの低い冒険者が被害に遭ったら?
つまり、ここで止める以外の選択肢は、少なくとも俺たちの中には無いのである。
「グルァアアアアア!!」
何故か、怒りに満ちているそいつは、俺たちを見るなり一目散に向かってくる。
怒りによって単調になった攻撃は、簡単に躱す事が出来る。真っ直ぐ突進して来た地竜を、俺たちは二手に分かれて避ける。
地竜が通り過ぎる瞬間に、刀で斬りつけてみるが、堅牢な鱗に阻まれ全く効果が無い。
「チッ!硬過ぎる!」
「フレイム…ショット!」
反対側に避けたヨウが得意の炎魔法で攻撃する。
「駄目、全く効いてないよっ!」
どうやら効果は無い様だ。両側から攻撃された事により、地竜は怒りのボルテージを更に上げた様だ。
その短い手足に血管が浮き出る程に力を入れている。その貯めた力を解き放ち、俺に向かって突進してくる。
「チッ!」
想定以上の速さに完全には躱す事が出来ない。その巨大に刀を合わせ、力を流す様にして攻撃を逸らし、どうにか無傷で攻撃を凌ぐ。
「フレイムショット!」
槍状になった炎が、地竜に降りかかる。
「グルアッ!」
だが、やはりそれは地竜の堅牢な鱗に弾かれて全く効いていない。それはヨウも分かっている。
だからこそ、同じ箇所を狙っているのだろう。少しでもダメージを蓄積させる為に。
しかしそれは気の遠くなる様な作業だ。どれ程当てれば効果が有るかも分からない。とは言えこちらの攻撃が全く効いていない今、少しでも勝ち筋を作るべきだ。
せめて、相手の動きが止まりさえすればやりようはあるのだが。
「ふぅっ」
ツキが地竜の攻撃を避けながら、その体に手を触れる。ツキの得意魔法は“毒”である。
毒の様に変化したマナを送り込む事によって、相手の体を蝕む事が出来るのだ。
「グァアアアアッ!」
恐らくそれが、相当に不快だったのだろう。地竜はツキを優先的に狙い出した。
だが、ツキは回避のスペシャリストだ。毒と言う特異魔法は、直接的に触れ無ければその真価を発揮しない。
その為彼女は究極なまでに回避術を極めた。今の彼女に攻撃を当てるのは至難の技だ。それも怒り狂った地竜には不可能だろう。
そうして効いているのか分からない攻撃を繰り返し、膠着状態に陥る。
「兄さん、毒は効いてます。けど、あの巨体です、あまり効果は見られませんね」
「そうか」
ツキが俺に近づき、そう話す。確かに最初に比べれば動く速さも落ちてきた様に感じるが、その程度である。
並の魔物であれば一分と掛からずに動けなくなる程の毒なのだが、流石は地竜と言った所か。
「でも、私気が付いたんです。地竜の左側、明らかに反応が悪いです」
「何?本当かツキ」
「ええ、暗くて見え難いですが、恐らく負傷しているのかと」
「成程、ならやりようは有るな」
「“アレ”をやりますか?」
「ああ、やろう!」
「分かりました。ヨウと私で隙を作るので兄さんは準備を」
「任せろ」
ツキはそう言って、地竜の攻撃を引き受けているヨウの元へと走って行った。
さて、ツキが隙をつくると言ったのならそれは絶対に果たされる。ならば俺は、自分の最大火力の準備をするだけだ。
刀を鞘に入れ、力を抜く。体全体にマナを流し、しなやかに弓を引くイメージをし集中する。
「姉さん!アレをやります、地竜は左目が見えてませんっ!」
「!成程ね、分かったよツキ!フレイムッ!」
ヨウが魔法の炎槍を地竜の右目に向かって放つ。それは見事に命中し、地竜は一時的に視界を失った。
「グルアァアッ!グルァアアッ!」
パニックになった地竜はその場で地団駄を踏む様に暴れ出す。だが、それを縫う様に避け、接近したツキが傷のある左目を触る。
「眠ってください」
毒の方向性を麻痺から眠りに変えたのだろう。巨体故に効果の薄かった毒も、傷口から直接流されれば効果は覿面である。
すぐに眠りはしないものの、明らかに動きが遅くなった。
「兄さん」
ツキが静かな声で合図する。こちらの準備も問題なくできていた。
「シィッ!」
短く鋭い息を吐き、限界まで引かれていた弓の弦を、離すように力を解放する。鞘から鋭く抜かれた刀は音を置き去りにして、標的へと向かいその首をなぞる様にして通り過ぎ、仕事を終えた刀は鞘へと戻る。
一拍して、時が漸く動き出す様に全ては遅れてやってくる。地竜が気がついた時にはその首は胴体から離れていた。
一気に毒も回って来たのだろう、切り離された体はぴくぴくと動くだけで暴れる事は無かった。
「ふぅ」
俺の体からどっと汗が噴き出てくる。それだけの集中力、そしてマナと体力を消費して放つ神速の刃なのだ。
「やったね!お兄ちゃんっ!」
戦いが終わったとみてヨウが抱きついてくる。どうにか勝つ事が出来て良かった。
神速の刃はどうしても貯めの時間が必要だ。一人では絶対に倒せなかった。
「お疲れ様です兄さん」
ヨウに少し遅れてツキもやってくる。ヨウとは逆の背中方面から抱きついてくる。大変大きな果実の感触が、背中から伝わってくる。
「お兄ちゃん?」
「何も考えてないぞ」
「ふーん?」
ヨウは自身の胸があまり大きく無い事を気にしている。とは言えそれはツキと比べれば、であってヨウも十分に大きな部類だった。
隣の芝が青すぎたばっかりに、自分の家の芝も青い事に気が付いていないのである。
「あっ」
ヨウの声に釣られ、彼女が向いていた方を見る。すると先程までぴくぴくと動いていた地竜が、霧の様に霧散していた。
「ダンジョンの魔物だったんですね」
そうツキが呟く。ダンジョンには二種類の魔物が存在する。生物から進化し、魔物となった者。これはダンジョン外にも棲息している。
そしてもう一つ、ダンジョンの濃いマナから発生し、その地の生命の記憶を元にマナを核として生まれるマナ生命体である。
マナ生命体は通常の生命とは異なり、体がマナのみで構成されている為、死後マナとなって霧散する。
後に残るのは心臓部分とされる魔核、魔石と呼ばれる石だけである。
そしてその性質上、マナの枯渇がそのまま死へと繋がる為、ダンジョン外へは殆ど出て来ない。
態々餌の豊富な場所から移動などしないのである。にも関わらず、地竜程の力を持つ魔物がダンジョンの外へと出て来た。それはつまりダンジョン内で異常事態が発生していると言う事だ。
「これは、急いでギルドに報告しないとな」
俺たちは地竜の魔石を拾い、急ぎ町へと向かった。