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片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww  作者: 康成


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0話「【急募】補佐官」

 □──□──□──□──□


【急募】ヴァルディリア辺境伯領での補佐官


勤務地:ヴァルディリア辺境伯領(辺境大森林付近)

給与:通常の補佐官給与に加え、辺境手当てあり

内容:幅広い業務を募集しています!主に財務、経営、管理など活躍できる文官職を幅広く募集します。業務未経験者でも基礎知識があれば歓迎!

募集対象:今から始まる新しい領です。領主とともに、辺境領を盛り上げてくれる方を大募集!

危険性:辺境大森林が近く、魔獣が多い地域です(※森には辺境伯の従魔がいるので、一定程度の安全は保障されます)


 ▢──□──□──□──□


 王城内のあちこちに貼られてあるこの紙を見た瞬間に、誰の仕業かはすぐに分かった。

「レオナリスくんじゃないか。どうかな、これ!アットホームな職場ですアピールも入れた方がいいかな?」

 楽しそうに話し掛けてくるのはギンケイ様……王弟殿下であり、僕の直属の上司でもある。

 同じ前世の……日本の知識を持つことを知ってから、前よりもずっと私的に話す機会も多い。


「アットホームは意味も分からないですし、止めた方がいいのでは……?」

 呆れ半分でそう返す。

「いたぞ!王弟殿下だ!」

「王弟殿下、うちに補佐官募集って何ですか?の問い合わせがきているのですが」

 騎士と文官とが息を切らして駆け寄ってくる。

 

「あ、もう来たんだ。早かったね、誰かな?」

「誰かな?ではございません。勝手に財務部を窓口にしないでください」

……ここの張り紙には「詳細は運輸部まで!」と書いてあるのですが。

 しばらくは各部署からギンケイ様への問い合わせが増えるかもしれない。

 このギンケイ様がトップとして所属しているのは医官部。まずいなと思って、慌てて業務調整をする事にした。


 ❖──❖──❖──❖──❖


「叔父上……」

 この叔父上絡みで何かあると、よく呼び出されるのは今では私ばかりだ。国王陛下はもちろんのこと、王太子となった兄上は忙しく……叔父上を止められる者はもう私しかいないからな。

「今回は何をしたんです?リシアンの補佐官なら選定も進めていますよ」

 剥がされた補佐官募集の紙を呆れながら眺める。

……いや、わりと簡潔だし分かりやすいな。しかし、それとこれとは別である。


「集まらないじゃないか、辺境は遠いし……」

 確かに打診をしても反応がよくないとは聞く。辺境伯となるリシアンの出自は子爵家の庶子。陞爵して現在の生家は伯爵家だが、それでも彼に付き従うことに難色は示される。

「いっそ広く募集する事で、こちらが思ってもいないようなタイプから自ら志願してもらえたらいいなと思ってさ!」

「こっちも思ってもいないような事をされてんですよ!叔父上が詳細はこの部署ってのを色々書いたせいで……王城内が混乱しているのはお分かりですか!?」

 

 運輸部はいまだにあちこちに貼られたこの紙を剥がすのに忙しく、通常業務に支障が出始めている。

 問い合わせ先を増やすことで、部署間では仲が悪いとこもあるし志願者が詳細を聞きに行きやすくなると思ったらしい。

「それならあんたが一人でその役を引き受けてくださいよ!何で他所を巻き込むんですか」

「医官部は忙しいし緊急対応もあるから、とりあえずお願いしよっかなみたいな?」

 それなら事前に許可を取ってからやれと言いたいが……。


「……レオナリスが医官部のことは調整するのでご心配なく、だそうだ」

「えっ?!」

 何でそんな予想外みたいな反応をするんだろう……。

「リシアンのことを理解しておられる叔父上が選ぶ補佐官なら、間違いないでしょう?レオナリスもそう言っているので……後は御自分で何とかしてください」

 最後に「補佐官の選定が済むまでこの部屋から出ないでくださいね」と告げて、叔父上を閉じ込める事に成功した。

 中から何か言っているが、そのうちに諦めるだろう。


 ◇──◇──◇──◇──◇


 想定していたよりも早く、叔父上がリシアンの補佐官となる二人を連れて来た。

「たった二人……ですか?」

 リシアンは領地経営について学びだしたばかりだ。最低でも五人はいると思っていたんだが。

「いっやー、優秀な人材を発掘した俺すごくない?こちらはクレメンテくん。財務から法務まで幅広くカバーする若手文官の有望株」

 

 聞いたことはあるなと思った。若く有能だが、あちこちの部署を渡り歩いている。どの部署でも成果はあげているが、どうにも真面目で優秀過ぎるせいか上司と折り合いが悪くなるのだと。歯に衣着せぬ物言いさえ落ち着けばとは……と、どこへ行っても惜しまれながら異動している。

 財務部で落ち着くと思った矢先なのだがな。……そして、リシアンとの相性が悪そうに見えて不安だ。


「クレメンテくんの突っ込みスキルには一目置いてるんだよ!だってあのリシアンだよ?これはもう必須だよね」

……何が?ただリシアンだし、彼もまた叔父上に近しい性質を持っている。常識的な人物が止めるのが最適かもしれない。

 クレメンテの生真面目で誰が相手だろうと物怖じせずに話す性質は合っているかもしれない。


「そしてジャスウェルくん。いっやー、この子めっちゃ面白いんだよ!リシアンのガチファン!あのリシアンの……」

 途中から笑いすぎて何て言っているか分からない。彼の顔は見たことがないなと思った。

「新年祭で興味を持ったんだよね?王都新聞社にいたんだけど、リシアンへの取材を断られてそれなら王城の広報部ならいけると思って転職したんだって」

 ガチファンが何かは分からないが、とりあえず彼はリシアンに興味や近付きたいと思っているのだろう。


「ジャスウェルくんは大丈夫だよ。広報部と運輸部とで取り合いになるくらい有能。だから、この二人がいれば辺境伯領もうまく回るんじゃないかな」

 叔父上は非常に満足そうにしている。

 生真面目そうなクレメンテ。にこにこ笑っているジャスウェル。

 この対象的な二人に加えてリシアンか……。辺境伯領の将来が見えない。


――それでも最後には「叔父上がそう言うのなら」と納得してしまう。自分ならまず思い付きもしないその二人を見て、私の人を見る目はまだまだなのかもしれないと思った。

続きは下にある「続・片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww〜辺境伯編〜」からどうぞ。

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