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片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww  作者: 康成


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後日談「サンタクロースの贈り物」

 レオ兄さんへ


 やっと俺にもサンタクロースからの贈り物が届きました!

 とりあえず今はいいかなってことで、そのまま取っておくことにします。マジでサンタクロースっているんだなって思いました。



 *──*──*──*──*

 



  異世界にサンタクロースはいるらしい。


 いや、マジで。違いといえば大人も貰えるらしい。

 ただし、生涯に一度だけ。それも何が貰えるかも分からない。

 一番多いものは失くしたものが、朝起きたら枕元に置いてあるパターン。

 後は今まで見たことも食べたこともないお菓子やらご馳走がテーブルの上にあるとかはよく聞く。


 珍しいのは難病の治療薬がポンと置かれていたりと、奇跡に近いものもあるとかないとか……。

 というようなことを、子供の頃に兄上から聞いた。それでサンタクロースがいるからには、吸血鬼もエルフもドワーフだって存在するだろうと思った俺は悪くないと思う。


 それはさておき、兄上もサンタクロースからの贈り物は頂いたらしい。

「弟がほしいと、お願いしていたんだよ」

 と言っていた。


 当時の俺はわくわくしながら「お馬さんがほしいです」と冬のある日、手紙を書いて枕元に置いて寝た。

 兄上からは

「生涯に一度、いつ来るかも分からない贈り物だよ?」

 と不思議そうに言われたけれど……。


 翌朝。

「手紙を書くめずらしい坊やへ


 生き物は無理(笑)その時を待っててね」


 無理(笑)って何だよ、無理って!

 ノリがおかしいとは思ったけれど、誰の字でもないそれは読んだ途端に消えたから「あぁ、マジでサンタクロースっているんだ」とは思ったよ!



 

 その出来事から時は流れて……片耳が聴こえなくなってちょうど一年が経った日のこと。

 枕元には見知らぬ小瓶とメッセージカード。

 

「坊やへ

 待たせたかな?失ったものが返ってくるよ」


 失ったものといえば一つしかなくて……。

 まじまじとその小瓶を見つめて、自室を出る。


「さて、やるか……」

 蓋を開けて中の液体をちょっと分析を……しようとしたら


 爆発した。

 

 は?!爆発するような物を飲めってことだったの?

 呆然としている間に小瓶は跡形もなく消えていたのだった。


 片方とはいえ聴こえなくなって、まぁ困る時は困る。方向感覚が狂ったままでたまに危ないし。

 けれど、もうすっかりこの状態にも慣れてしまっている。

 

『リシアン、今度は何したのー?』

『髪の毛めちゃくちゃー』


 どこからともなく集まってくる精霊たち。

「ちょっと実験しようと思ったら……待て、髪を引っ張るな、やめろ」

 ……たまにうるさいけれど、こいつらの声が聞こえなくなるのはちょっと嫌だなと思ったから。


 噂に聞く「サンタクロースの奇跡の薬」なら成分分析して研究でもと思ったら、爆発して消えた。

 これは、自分で薬は作れってことか?

 生涯に一度だけの特別な贈り物はこうして消えた。


 


 と思った、翌朝。

 枕元には一本の小瓶。


「坊やへ

 志は素晴らしいけれど、成分分析は二度としないように。

 あの薬は必要ないみたいだから、忘れん坊の坊やが思い出すように……」


 何気なくメッセージカードをひっくり返すと

 

「この悪童が!」

 

 と一言書いてあったそれは、相変わらず読むと消えた。そして手のひらが真っ黒になった……何これ、煤汚れ?

 手を洗いながら考える。忘れん坊?

 俺、何か忘れてることって別に――……あるな。


 前世の、記憶。

 たまに浮かぶそれは曖昧で、ぼんやりとしている。社畜だとか過労死ラインとか……

 

「いい!二代目はもう何も思い出さなくていいから」

 

 ギンさんが以前、思い出さなくていいって言ってたから何か碌でもないことな気はする。


 迷って小瓶は、大事なものを入れている鍵付きの箱に仕舞うことにした。

 生涯に一度の特別な贈り物。

 今は必要なくても、いつかはそれが必要になるかもしれない。

 ……忘れた何かを思い出したくなる時も、来るかもしれない。




 ❖──❖──❖──❖──❖



 リシアンに、サンタクロースからの贈り物が届いたらしい。

 物心がつく頃から違和感のあった世界。

 それがはっきりしたのは、サンタクロースからの贈り物だった。


「坊やへ

 思い出してみる?」


 シンプルな白いメッセージカードと、綺麗な小瓶。

 普段なら、母上に相談したと思う。こんな如何にもな小瓶は怪しく、絶対に飲まなかった。

 末端とはいえ貴族家の嫡男。毒を盛られる可能性は低くても存在する世界だから。


 その時は、誰にも告げずその小瓶に口を付けた。

 味は覚えていない。

 怒涛の勢いで前世の、日本の記憶がなだれ込んできたから。

 消えていく小瓶を眺めながら、サンタクロースの贈り物だということは確信して――……そのまま倒れて寝込むことになった。


 弟の最期を思い出した時は、それが二度目の体験でも同じ重さをもってのしかかってきた。

 僕は転生している。それならあの子もどこかにいるんだろうか。

 もしもまた出会えたら、今度は守り通すと決意した。

 出会えなくても、この世界でも僕は医師になろうと決めた日だった。


 今でこそ、この出来事は懐かしいなと思えるけれど一体リシアンは何を貰ったんだろうか?

 肝心なことは相変わらず抜けている手紙に

「まぁ、元気にしているならいいかな」

 誰に言うでもなく、そう呟いた。

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