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片耳から「ピニャー」って聞こえるけど、俺にしか聞こえない精霊言語だったwww  作者: 康成


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閑話「第二王子と王家の影」

「ルイたーん、見てみて!最年少の王家の影のルミスくんだよ」


 私が9歳だった頃、叔父上がそんなことを言いながら不機嫌そうな少年を連れてきた。

「……ルミス?」

 まだ14歳の少年が新しく王家の影として任命されたと聞いたときは驚いたものだ。

「第二王子殿下にお会いできて光栄です。王弟殿下、訓練があるので離してください」

 ちっとも光栄そうじゃないその表情がおかしかった。


「今日の訓練はー、子供は子供らしく!2人で遊んでおいで!」

「「え?」」

 ルミスをただ見せたいだけかと思ったのに。最近になり、王家の影という存在を知り会ってみたいとは言ったんだけど、遊んでもらいたいとは言っていない。

 何より母上から「第一王子に遅れを取ってはなりません」と言われて勉強の時間が詰まっている。


「叔父上、今日はまだ勉強が残っているのです。教師もそろそろ来るのでまた……」

 座学では同い年ではあるけれど、第一王子のお兄様には敵わない。だから、体術や剣術や魔法の訓練も始まったばかりで遊ぶ暇なんてない。

 午前も午後も予定でびっしり埋まっている。

「知ってる知ってる!午後からは体術でしょ?叔父たんが教師にはもうお帰りいただいてるから、安心していいよ」


 そんなことをしたら母上から怒られちゃう!

「叔父上、だめです。母上が……」

「大丈夫だよ、ルイたんの年頃はまだまだ遊んでいいんだからね」

 叔父上はそう言うけれど……。どうしよう?

 

「王弟殿下、自分は遊んでいる場合ではないのでこれで。訓練に戻ります」

「へー、ルミちゃんって王家の影なのに子供と遊ぶことも出来ないんだー?ふーん。できる任務も減っちゃうけど仕方ないかぁ?」

 王家の影は他の貴族家に使用人として潜入することもあるって聞いたよ。

「……出来ないとは言ってませんが?」

 ルミス、ちょっと怒ったみたい。


「じゃあかわいいルイたんと遊んでね!……怪我は絶っっっ対にさせるなよ?」

 ルミスは「しまった」みたいな顔をして黙り込んだ。

「ルイたーん、叔父たんは側妃様にルイシンには王家の影から特別訓練ってことを伝えてくるからねー」

 ひらひらと手を振って行ってしまった。



 ❖――❖――❖――❖――❖ 


「……」

「……」

 取り残されたがお互いに何を話せばいいのかも分からない。カラベルト伯爵家にいたときから、王家の影となるように育てられた。遊んだことなどない。

 目の前の第二王子殿下もどうしていいのか分からないようだ。


「あの、王家の影ってどんな訓練をするの?」

「色々です」

 ……会話が終わった。雑談は慣れていないから苦手だ。

 誰とでもどのような話題でも話せるようになれという課題があるが、子供相手だとさらに難しい。

「……やっぱり、私の相手はしなくていい。お兄様のところにルミスも行きたかった?行っていいよ」

 そのようなことは考えていないのだが。ルミスも、と言うことは……余計なことを言ったやつがいる。

 第一王子殿下と第二王子殿下を比べたのか?そのような態度を王族に……まだこの小さな子供相手にするとは許し難い。


「第二王子殿下のお側が嫌だとは言っていません。……なぜそのようなことを?」

「皆、お兄様の方がいいと言うから。大丈夫、私はこのまま勉強をする」

 いそいそと歴史の教本を取り出す第二王子殿下。

 いじらしくも諦めたような態度を取る第二王子殿下が……かつての自分を思い出して嫌になる。

 期待しては裏切られた日々。諦めることが当然になるまでそんなにかからなかった。

 思わず小さく舌打ちが出て、びっくりしたのか第二王子殿下の動き止まった。

「怒ってる?いいよ、ルミスも忙しいでしょう?叔父上には私から言っておくから大丈夫だよ」

 慌ててそう言う第二王子殿下に


「怒っているのは殿下にではありませんよ。第一王子殿下の方がいいと言った無能どもにです。王族に不敬極まりないそいつらの名前を聞いても?」

 数人の教師の名前を告げられた。まぁ、こいつらも排除せねばならないし……舌打ちの理由は誤魔化せた。

「殿下、自分も王家の影と呼ばれる者ですから。王族に不利益をもたらす者は許さないのでご安心を。もう、殿下にそのような物言いをする輩は近付けないとお約束します」

「本当?ルミス、すごいね」


 目を輝かせる第二王子殿下。……この純真で素直な少年のどこが第一王子殿下に劣っているというのか。

 第一王子殿下は確かに頭脳明晰だが、第二王子殿下も同世代の中では優秀だという。

 自分にとっては2人とも敬うべき王族だ。

 ただ……この目の前の少年に、暗い影を落とすことのないようにしたいと思った。

 今のまま育ち、全てを諦めた暗い目をした自分のようにならなければいい。

 そう、思った。

 


 ❖――❖――❖――❖――❖


 今まで、貴殿は第二王子だから。正妃ではなく側妃の子だからと言われて、比べられながら育った私。

 別け隔てなく接してくれる人は叔父上しかいなかった。

 お父様もいるけれど、やっぱり病がちなお兄様のところに行くことが多かった。

 こんな風に私のことも守ってくれようとする人は会ったことがない。

 ……護衛騎士もいるけれど、彼らの主人はお母様だから。私が言うことよりお母様の命令が優先されるんだ。


「……遊びは何がいいか分かりませんが、その勉強なら教えることは出来ます」

「そうなの?私も遊んだことがないから何をすればいいか分からないんだ。一緒だね」

 ルミスは「次は何か遊ぶことを考えてきます」と言ってくれた。

 次があるんだなぁとうれしくなった。

 


「ただいまー!2人で何してるの?お絵描きかなぁー」

 と言って、ひょいと覗いてきた叔父上が

「勉強じゃん!何やってんの?!」

 と騒ぎ出した。ルミスは教え方も上手だし、とっても楽しかったよ?

「だって私たち何して遊べばいいか分からなかったんです」

「……何てことだ」

 叔父上は天を仰いでいる。いちいちリアクションが大きい。叔父上は楽しい人だけど、たまにちょっとだけ疲れる。


「よっし、ルイたんにルミちゃん!叔父たんと鬼ごっこをしようか」

「オニごっこって何?」

「そもそもオニって何ですか?」

 叔父上は物知りだからなぁ。こうやってたまに誰も聞いたことがないものを言い出す。

「そうか鬼……では、魔王ごっこをしようか!」

 魔王なら絵本で見たから知ってる!


 魔王になった人から走ったり、隠れたりして逃げる遊びなんだって。

 捕まっちゃったら、今度は捕まった人が魔王になって追いかけることになる。

「ねぇ、これって勝ち負けあるの?」

「ふむ……ルイたんが叔父たんを捕まえたら何でも言うことを聞いてあげよう!その代わり叔父たんに捕まったら、ルイたんが叔父たんのお願いを聞いてね!」

「叔父上、簡単に何でもとか言っちゃだめですよ?叔父上のお願いも私にできることじゃないと嫌です」

「うちの天使が可愛くて賢くて最高すぎる!!」


 叔父上がまたいつものように1人で何か言っている。

「殿下、自分のことを捕まえることができたらお願いを聞きますよ」

 ルミスがそういうから……私は魔王になったら絶対にルミスを捕まえようと思った。

 叔父上が落ち着いたところで魔王ごっこが始まった。

 10数える間に先に逃げたり隠れていいんだって。ルミスと一緒に逃げることにした。


 隠れている間にルミスとは色々話せた。

「王弟殿下は……いつもあんな感じなんですか?」

「そうだよ。私とお兄様のことをいつもかわいがってくれる」

 何かをくれるときは「セイたんとお揃いだからね!これを着た天使を2人並べたい!!でも天使が並ぶことにより破壊力は2倍ではすまないのでは?そうなるとどうすれば……」ブツブツ言う叔父上の姿が浮かぶ。


「あの、だいぶ個性的というか大丈夫なんですか?」

「大丈夫。叔父上はね、普段はとってもおかしな人だけどすごいところもあるんだ」

 若い頃には珍しい食材集めに各国を旅したり、外交に出たりと優秀だったとお父様から聞いている。

 私とお兄様が生まれる少し前にあった外交トラブルも叔父上が解決させたんだって。


「私はね、叔父上みたいに将来はお兄様のことをお支えしたいと思っているんだ」

 お兄様はとっても優秀みたいだけど、お身体が弱いから私が外交を担当できたらいいなと思っている。

 今は医官として活躍している叔父上だけど、他国の話を聞くと本当に楽しくて行ってみたいなと思うんだ。


 話していたのはここまで。

「よっしゃあー!王家の影取ったどー!!!」

 と、気配もなくやって来た叔父上にルミスが捕まった。

 そこからはまたルミスに叔父上が捕まったり、私が叔父上に捕まったり。

 いっぱい走ったし、疲れたからそろそろ終わりかな?


 当てもなくきょろきょろと歩き回っていたら、ルミスがいた。

「叔父上が魔王だよ。そろそろ魔王ごっこもおしまいみたい」

 遠くからは「ルイたーん、どこに行ったのー!」という叔父上の声がする。

「そうですか」

 叔父上からは本気で逃げていただろうルミスが「ふぅ……」と一息吐くから、私は飛び付いた。


「ルミス、捕まえた」


 さっき、叔父上に捕まったときに相談したんだ。ルミスを捕まえたいって。

 結局1回もルミスのことは捕まえられなかったから。

 ルミスは目を瞬いている。


「私が魔王だよ。ルミス、お願いを聞いてくれる?」

「……殿下、何がお望みですか?」

 小さく笑んでルミスがそう聞いてくるから、私の願いをルミスに伝える。

「私は、王太子になりたくない。叔父上みたいにお兄様をお支えしたい。周りはそれを許してくれないから、ルミスに私の味方になってほしい」

 皆、私に「王太子になれ」と言うけれどお兄様はとっても優秀だから……お兄様が王太子になった方がいいと思う。


「今はそうお思いかもしれませんが、変わるかもしれないですよ?」

 お父様と叔父上……どちらのようになりたいかを考えても、やっぱり叔父上みたいになりたい。

「殿下のお考えが変わろうと、自分は殿下の選んだ道を必ずお支えすると約束します」


 捕まってしまいましたからね、最後にそれだけ言ってルミスは闇属性の魔法で消えた。

 初めての約束を握りしめるようにきゅっと手を結んで、叔父上が迎えに来るまでずっとルミスが消えたところを見ていた。


 


若かりし頃のルミちゃん(14)は今より表情も感情も分かりやすかった、少しだけ。

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