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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第91話 第四師団オリバル

ツベツ平原で魔物たちとの戦いが始まった。罠にかかった魔物たちは、足を止めてそれぞれが一定の間隔を空け、マス目状に整列した。まるで人間が通れるように通路を作っているかのようだ。


「なんだあれは? あんなにきれいに並んだら、どうぞ間を通ってくださいと言っているようなもんじゃないか」


軍隊オオアリが罠にかかった後、不自然なほどに間隔を空けているのを見たシールド兵Aが声を上げる。


その整列した軍隊オオアリの中に、魔物化した人々が正気を取り戻し、あちこちで青い光を放ちながら動き回っている。


「魔物化した人の青い光が真正面に見えた兵は手を挙げろ!」第一師団の連絡兵が叫ぶと、シールド兵Aが「はい!」と手を挙げた。

その合図で、後ろから軽装の兵士が駆けつけ、軍隊オオアリの列の中へ入っていく。軽装兵がオオアリの横を通り過ぎても、オオアリたちは攻撃することなくその場に留まっている。誰もが不気味な行動に警戒していたが、次々と救出に向かう軽装兵が無事なのを見て、次第に安堵感が周囲に広がり始めた。


「なんだ、楽勝じゃないか。軍隊オオアリに盾や鎧をカミカミされると覚悟してたのに」シールド兵Aが拍子抜けしたように言う。


「なんか拍子抜けだな」とシールド兵Bも続く。


中央付近のシールド兵たちが気を緩め始めた頃、左翼の騎馬隊も同じような状況になっていた。


「なんだ、本当に何もしてこないで、きれいに並んでいるな」ザンザが言う。


「ええ」とジンが応じる。


「この調子なら、救出が終わったらすぐに殲滅戦に移行して、退路なんか必要ないかもしれないな」


「セシリアが用心しているようですので、警戒は必要かと思います」


「そうか……そうだな。救出の方はどうだ?」


「魔物化した人の数が少ないようですので、左翼側は間もなく完了しそうです。中央と右翼側も、救出部隊が突入したとの情報が入っています」


「わかった。救出が終わりオルクス様の様子を見て、左翼側面から中央に向かって軍隊オオアリを倒していくぞ。退路は左翼シールド兵側に作っておいてくれ」


「了解しました」


ザンザは左翼側面で雁行の陣形を作り、先に突入した救出部隊の帰りを待っていた。そして帰還した後、オオアリたちを倒しながら中央へ進軍する作戦を立てる。


城壁上から左翼の動きを見ていたセシリアは、楽しそうに笑みを浮かべた。


「ザンザ君、退路はシールド兵側じゃなくて、魔物たちが来た方向にしないと危ないよ……フフフ」


全体的に魔物化した人々の救出が進む中、

第三師団もまた準備を整えつつあった。


「セシリア様、あの黒い球はなんですか?」


中央司令本部の近くに設置されたサイクロン(竜巻発生装置)の周りにいる兵士たちが、見慣れない手のひらサイズの球を持っていることに気づいたラキが、セシリアに質問した。


「あれは秘密兵器の一つさ。兵士たちには扱いを教えてあるから、効果はそのうちわかるよ」


「そうですか……」

(外城壁内でも特大カタパルトの設置が進んでいるし、なんかすごく嫌な予感がする……)


一方、右翼側の司令部テント内では、第四師団師団長のオリバルと、イザーナ、エリアが再会を果たしていた。


第四師団 師団長 オリバル

年齢:八十代、賢者、魔力のオーラが常に漂っている。白髪ロング+長い顎ひげ


性格:超心配性。杞憂と思われがちだが、ほとんどが的中する。菓子職人としても有名。


「おお……イザーナ様、ご無事でなによりです」


「オリバル、心配をかけました」


「うぅ……年を取ると涙もろくていかん。

エリアも無事でなによりだ」


「ありがとうございます」


「イザーナ様を守った褒美に、後でオリバル特製饅頭を食べるが良い」


「それはありがとうございます」


オリバル特製饅頭は、菓子職人としての顔も持つオリバルが長年培ってきた茶菓子の集大成だった。絶妙な薄さの皮に餡子がたっぷり詰まったその饅頭は、兵士たちに大人気の商品だ。


「して、そちらのお二人は?」オリバルが尋ねる。


「重戦士のオレクと、魔法剣士のエレノアです」


「オリバル様とご一緒できるとは光栄です」オレクが言う。


「久しぶりじゃな、オレク。勇者が迎えに来るまで城門から動かないと頑なに言っていた時は心配したが、良き仲間ができたようで安心したぞ」


「へへっ」


「そなたがエリアの妹か」


「はい! エレノアと申します」


「姉と違って礼儀正しそうじゃな」


「私、そんなにやんちゃですか?」


「訓練の時、男どもを『おんどりゃ〜!』とか『クソ野郎共!』とか……」


「えっ? 私、そんなこと言ってますか?」


「おかげで気の弱い兵士たちが密かにファンクラブを作っているとかいないとか……」


「はっ! そんなクラブ、すぐに叩き潰します!」


「姉さん……」エレノアが呆れたように姉を見つめる。


見た目の美しさとは裏腹に粗暴な一面を持つエリアは、多くのファンがいた。可憐なイザーナとクールビューティーなエリア、この二人が相まって、最近では兵士たちの間で「アイドル」化しつつあった。


「さて、積もる話は後日に回して、今は魔物化した人たちの救出中じゃが、セシリアから『魔物化した人たちを救出したら、風の壁をシールド兵の前に展開して黙って見ていろ』とのことだ」


「セシリア様が指揮を執っていらっしゃるのですか?」エリアが尋ねる。


「ああ。師団全部が動いているからな。指揮はあの娘に任せるのが一番じゃろう。勝手に動いて、第三師団の攻撃が後ろから飛んできてはたまらんからな」


エリアは少し不安げな表情を浮かべる。


「『マッドサイエンティスト(狂信者)』と言われるセシリア様が、何も起こさなければ良いのですが……」


物理攻撃が得意な第三師団と、魔法攻撃が得意な第四師団は、中遠距離攻撃を得意とする。互いが協力し合う場面では、第三師団が指揮を執るのが常だった。物理攻撃の矢や石と魔法攻撃がぶつかると、魔法が矢や石を消してしまうことが多いため、第四師団が支援に回ることになっていたのだ。


「お主たちはどうしたいか? もちろん、イザーナ様にはここで休んでいただくが」オリバルが尋ねる。


「私たちは参戦したいです」エリアが即答する。


「ここで見ているだけでは気が引けるしな」とオレク。


「そうです!」とエレノアも同意した。


「そうか。では、右翼の端についてくれ。ハーフエルフたちがキヨサトを守ろうと陣を張っているので、協力すると良い」


「了解しました。では、一息ついたら向かいます」


「頼んだぞ」


「私も行きます」イザーナが立ち上がる。


「イザーナ様は此方に……」オリバルは止めようとするが、


「大切な仲間が行くのですもの、私も一緒に行きます」イザーナの固い決意に、オリバルは折れる。


「左様でございますか……わかりました。エリア、重ねて頼んだぞ」


「お任せください」


「あと、キヨサト町が近いから火の取り扱いには慎重にな」


「了解しました!」



こうして、エリアたち一行は右翼側の端で、火熊と戦ったキヨサト町入口に近い場所で戦うことになったのだった。


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