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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第9話 南東樹海基地設営

 空たちは、南東樹海の調査へと向かっていた。


 道中、多少の魔物に遭遇したものの、同行する冒険者たちが速やかに対処し、大きな問題もなく目的地――南東樹海の入口へとたどり着いた。


 樹海には、かつての冒険者たちが設置した出入口の門がいくつも存在していた。各門には番号が振られており、どの門から樹海へ入るかが分かるようになっている。また、門柱には引き出しがあり、そこには日付と名前を書き込める紙が置かれていた。


 今回、空たちが到着したのは「五番」の出入口だった。同行していた冒険者の一人が引き出しを確認したが、紙には誰の記入もなかった。


「五番から南東樹海へ入り、約二キロ進んだ場所にキャンプを設営する。そこを基地として、魔物化した者の保護、魔王軍の行方、そして“黒い霧”の調査を行う予定だ」


 メイソンが皆に説明する。


「空さんの結界内にいる魔物化した者は、俺のように見た目こそ変わっていても人語を話す可能性がある。もし話しかけて反応がなかったり、攻撃してくるようなら、通常の魔物と見なして討伐してくれ」


「了解しました!」一同が声を揃える。


「それじゃあ、空さん。結界を頼む」


「分かりました」


 空は頷き、無空間調律の結界を展開した。その結界は、魔物化した者の自我を一時的に取り戻させ、魔物の攻撃性を抑える効果を持っている。


「じゃあ、行くぞ。南東樹海へ!」


 馬車の荷台に揺られながら、空は隣に座る美加に話しかける。


「なぁ、美加。この樹海の地下に、中立都市を作るってのは、どうかな?」


「それは……可能性としては十分にありますが」


「地上だと、どうしても魔物がいるから武力優先になってしまう。でも地下なら、惑星ガイアのように経済を中心とした都市が作れるんじゃないかと思ってさ」


「そうですね。ただ、私たちはいずれ天界に帰る身。人間と魔族たちが、自らの意思で街を築くように導くべきでしょう」


 美加の言葉には、“過度な介入は天使による支配と変わらない”という戒めが込められていた。


「だよな……。魔族側に人間と共存できる者を、人間側に魔族と共存できる者を、それぞれ探しながら、惑星ガイアからの転生者も探さないと」


「そういうことですわね」


 そんな会話を交わす中、馬車は目的地へと順調に進んでいった。


「改めて中に入ると……この樹海、邪念や怨念がすごいな」


「特に、動物たちの怨念が強いように感じますわ。理不尽に命を落とした者たちの無念が、渦巻いているのかもしれません」


「……あの黒い霧とも、何か因果関係があるのかもしれないな」


 そう語りながら、馬車は基地設営予定地に到着した。


「この辺りでいいだろう。川も近いし、地形も悪くない。よし、準備を始めるぞ!」


「了解!」


 冒険者と兵士たちが動き出そうとしたとき、空が声を上げた。


「皆さん、少し集まって、じっとしていてもらえますか?」


「どうした、空さん?」


「森を切り開く、いい方法があります」


「……分かった! 皆、動かずにここで待機だ!」


 集まった一同の前で、空は多数の《グラビティビット》を展開した。重力球であるそれらは、浮遊しながら木々を吸い込み、亜空間へと送っていく。


 その作業は目を見張る速さで進んでいき、わずかな時間で半径二百メートルの空間が開けた。


「こりゃあ……笑うしかねぇな」


 メイソンが呆れたように笑う。


 さらに空は、吸収した木材を丸太や板へと変換し、それを使って直径四百メートル、高さ三メートルの塀を建設。東西南北に出入口を設けた、即席の防御拠点が完成した。


「これで、安心して準備できますね」


 皆が歓声を上げる中、空は控えめに頷いた。


「詳しい話は聞くな! とにかく空さんに感謝しろ! でも建物の設営は、俺たちに任せてくれ!」


「分かりました。必要な木材は言ってくださいね」


 その後、メイソンとリアムの指揮のもと、宿営テントや見張り台、そして基地本部の建設が進められた。


 建物には「建物スクロール」という特殊なアイテムが使われた。設置場所にスクロールを広げると、そこに魔法陣が展開され、石造りの三階建ての建物が現れる。これは数年前にドリード王国が開発した新技術だという。


 一階は本部と食堂、二階と三階は宿泊室として使用される。


 夕食後、メイソンと兵隊長がスキルを使い、冒険者の呼び出しを開始した。


「これで明日の探索も万全だな」


「ああ、見張りも交代で行う。魔物や動物を見かけたら反応を確かめて、意思があるようなら保護、無ければ弓で排除だ」


「了解した。空さん、美加さん、今日はゆっくり休んでくれ。明日の探索は頼んだぞ」


「はい」


 こうして、空と美加は三階建ての宿舎へと入り、南東樹海調査の初日を終えるのだった。


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