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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第83話 勇者アレックスと封印の王冠

エリアたちが光の塔へ向かう少し前のこと――。


勇者王国へ向かう三人の姿があった。勇者アレックス、ドワーフの戦士ダモン、魔道師カレン。 彼らは五年前に結成された勇者パーティーであり、魔王討伐のため、世界を巡って「鍵」を探す旅を続けていた。


というのも、魔族領への出入口と魔王城には強力な結界が張られており、それを解除するには、特別な「鍵」が必要だった。 この鍵は、先代勇者にして現国王アレスによって五つに分けられ、各地に隠されていた。 それは次代の勇者に試練を与えるための――「勇者育成プログラム」の一環だった。


そして今――。


アレックスが勇者城へ帰還すると、玉座の間でアレス王が待っていた。


「よく戻ったな、勇者アレックスよ」


広間には、アレス王とアレックス一行のみ。王は穏やかな笑みを浮かべて迎えた。


アレックスは深く頭を垂れる。


「ただいま戻りました、アレス王」


【国王アレス】

シールド領出身、現在七十歳。中肉中背で身長高め、黒髪に白髪が混じる。かつて世界を救った先代勇者であり、穏やかで思いやり深い国王。


【勇者アレックス】

二十歳のハーフエルフでエデン出身。身長高めで痩せ型。金髪ショートの髪に、強い正義感を宿した瞳を持つ。世間知らずながら真っ直ぐな性格で、「勇者の腕輪」を身につける五代目勇者。



王は目を細め、アレックスの背後に立つ二人に視線を移した。


「こちらが仲間たちか?」


「はい。戦士のダモンと、魔道師のカレンです」


アレックスは、二人との出会いについて語った。 五年前、旅立ちの直前にハジメの町で商人の護衛をしていた彼らと出会い、意気投合。ともに旅をする仲間となったのだ。


アレス王は満足げに頷いた。


「良き縁に恵まれたな。して、旅はどうだった?」


アレックスは力強く頷き、口を開く。


「はい。各地で情報を集め、多くの迷宮やダンジョンを巡りました。その時々の私の力に応じた試練が、まるで用意されていたかのように現れました」


かつて世界を救ったアレス王は、自らの経験をもとに「勇者育成プログラム」を考案し、各地にそれを仕掛けていた。 各町に“導き手”を配置し、勇者候補に向けて適切な助言を与える。 魔物の強さに応じた討伐依頼、仲間の所在、装備情報など―― 旅人が助言に従い行動すれば、自然と経験を積み、勇者としての力を育むよう設計されていた。


すなわち、この世界そのものが、次代の勇者を導く“見えざる試練の場”となっているのだ。


アレス王は、自らが設計した育成プログラムが機能していたことを喜んでいた。だが、その背後にある真実に気づいてはいなかった。


実際には、そのプログラムはすでに悪魔たちに察知され、改ざんされていた。勇者候補にデタラメな情報を吹き込み、弱体化させる罠となっていたのだ。 だが、アレックスはダモンとカレンという仲間に出会ったことで、勇者育成プログラムのルートを早々に離れ、ドリード王国を経て闇国側へ向かっていた。 結果として、プログラムの影響は受けていなかったのである。


「して、肝心の魔王はどうなったのだ?」


アレス王の問いに、アレックスの表情が曇った。


「魔族領の各地、そして魔王城の中まで探しました。しかし見つけたのは側近と使用人たちだけで……。彼らはフレンドリーに接してきましたが、魔王のことは知らないと。名前すら分からないようで……」


アレス王は重く息を吐いた。


「……まるで魔王カルスティンのようだな。まあ、見つからぬものは仕方あるまい」


そう言って、王は言葉を継いだ。


「しばし休むがよい。仲間たちも共にくつろぐと良い」


アレックスは一歩前に出ると、神妙な面持ちで口を開いた。


「実は……報告があります。私は、カレンと結婚したいと考えています」


王の目が見開かれた。


「なんと……!」


だが、すぐに破顔し、朗らかに手を叩いた。


「ふはは、そうか。しかし私の承認など不要だが、国をあげて盛大に祝わせてもらおう!」


アレックスは振り返り、カレンの前にひざまずいた。


「カレン、私と結婚してくれ」


「……はい」


玉座の間に、祝福の空気が満ちた。


だがそのとき――。


「実は私のお腹には……」


カレンが妊娠をほのめかした瞬間、アレス王の王冠から黒い霧が立ちのぼった。


王の瞳が妖しく紫に染まり、次の瞬間、低く響く声が玉座の間を揺るがす。


「我が名はカール……魔王カール!」


アレックスは目を見開いた。


「まさか……第四魔王の封印が……!」


魔王カールは叫ぶ。


「カレンとのことは許さん!」


「なぜ貴様の許可が要る!」


「なぜだと? カレンは――我が娘だからだ!」


静まり返る玉座の間に、衝撃が走った。


カレンが一歩前に出る。


「……お父様。やはり、王冠に封印されていたのですね」


アレックスは絶句した。


「カレン……君が、魔王……?」


「ごめんなさいアレックス。でも私は嘘をついていたわけじゃない。父の封印場所を探すために旅に出た……けれど、あなたと出会って、あなたを無視できなくなった。だから一緒に旅をした。そして、あなたを愛した」


アレックスは、はっきりと答えた。


「君が魔王でも……私の気持ちは変わらない!」


「アレックス……」


しかしその言葉も、魔王カールには届かなかった。


「父の前でラブコメをするな! とにかく許さん、絶対に許さん! カレンよ、魔王の加護を返してもらうぞ!」


カールが右手を伸ばすと、カレンの身体から黒煙が立ち昇り、それがカールの掌へと吸い込まれていく。 カレンはそのまま気を失い、崩れ落ちた。


「カレン!」


「アレックスよ、カレンを取り戻したくば……来るがよい。ダモン、行くぞ!」


「はっ!」


アレックスの顔がこわばった。


「ダモン……お前も……!」


ダモンは肩をすくめて、言った。


「……また会おうや、アレックス」


そう言い残し、魔王カールと共にカレンを連れ、闇へと姿を消した。


アレックスはその場に立ち尽くす。


だが、すぐにその瞳に、決意の炎が宿った。


「……落ち込んでいる暇はない。真の魔王が復活した。ならば、私がなんとかしなければ!」


そのとき、近衛兵が駆け込んできた。


「アレス王! ご無事ですか――って、アレックス様? 王はどこに?」


アレックスは静かに答えた。


「……魔王カールが復活し、皆、連れ去られてしまった」


「なっ……!」


「このことをアレク王に報告してくれ。私は魔族領へ向かう。以後は、アレク王の指示に従ってくれ」


「承知しました。どうか……ご無事で!」


アレックスはひとり、愛する者を取り戻すため、魔族領を目指して歩み出す。


歴代最強魔王の復活――


勇者アレックスの運命を大きく揺るがす、新たなる戦いの幕が、今上がった。



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