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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第79話 光の塔 ライティングタワー④

光の塔ライティングタワー・二百三十四階。そこから広がる世界は、大陸を一望できるほどの高さ――まるで、編まれた神話の一頁のようだった。


澄んだ空気の中、白く輝く雲海が遥か遠くにたなびき、眼下には光国の都市群が宝石のように煌めいていた。高みに立つこの場所こそ、選ばれし者のための舞台。

エバはベランダの中心に、イザーナを連れてきていた。


「……物凄い景色ですね」


思わず息を呑んだイザーナの頬に、穏やかな風が当たる。それは、まるで歓迎の意を示すかのようだった。


「光国側が一望できるからな」


エバはベランダの欄干に手を添えて立ち、ゆったりと答える。


「風もコントロールされている。突風は吹かん。安心してくれ」


「分かりました」


イザーナは促されるまま、ベランダの先端――少し高くなった場所へと歩を進めた。


「ここで良いですか?」


「そうだ」


エバの声に、イザーナはまっすぐ前を向く。その遥か先、見えぬ水平線の向こうには、あの闇の塔「ダークネスタワー」が存在しているという。

そこにいるのは、闇の超位精霊・カイン――。


「あの地平線の彼方に、闇の超位精霊カインがいるが……それはまた後の話だ。まずは、この光景をよく見ておくといい」


イザーナは言われた通りに視線を巡らせた。空の青さ、陽光の煌き、地上の輝き、そして風の匂い。すべてを魂に刻むように、静かに目を閉じる。


「では、始めるぞ。今見た光景を思い浮かべてくれ」


「はい」


エバは両手を上げ、呪文を唱え始めた。

するとイザーナの足元に魔法陣が現れる。


「我が心に秘めし知識を封じ込めし魔力の波動によって、古の叡智を呼び覚まさん。エーテルの流れよ、我が手に集いし力を解き放ち、禁忌の契約を結びし者よ……今こそ保存せよ!

――エーテル・フラッシュメモリーセーブ!」


その瞬間、イザーナの手に握られた“不死鳥の杖”が輝きを放ち、白銀の光が空に舞った。杖から現れたのは、翼を大きく広げた白く透き通った不死鳥。彼女の背後で浮かび上がり、空へと舞い上がっていく。


空へ舞った不死鳥が羽ばたくとそれに呼応するように、半透明の半球状の結界がイザーナを中心に展開された。その広がりは瞬く間に空へ、大地へと拡がり――ついには惑星イオ全体を包み込んでいった。


塔の中で様子を見ていたエレノアとエリアは、驚きに目を見開く。


「これは一体……?」


「光の結界……?」


その問いに答えるように、エバの声が空から届いた。


「これは禁呪、“エーテル・フラッシュメモリー”という術だ。惑星イオの現在の状態を、そっくりそのまま記録するためのものだよ」


「記録……?」


エレノアが首をかしげると、エバは肩をすくめて微笑んだ。


「まぁ、不死鳥が世界を記録したと思って、気にしなくてもいい」


魔法陣の中心に立つイザーナは、静かに目を開けた。そして、ぽつりと呟く。


「……すごい……生きとし生けるものの姿が、私の中に入ってきたような感覚……」


エバは頷きつつも、冗談を交えて言う。


「どうやら問題なさそうだな。不死鳥が記録した量に耐えられなければ……おデブちゃんになってたところだ」


「えぇ!? 先に言ってくださいよ!」


「ハハハ!」


だが、二人の笑い声は突如として立ち込め始めた黒雲によってかき消される。


大陸の中央、ダイセツマウンテンの上空から黒い雲が湧き上がり、それは生き物のようにうねりながら、大陸全土の空を覆い始めていた。


イザーナが不思議そうに呟く。


「あれは……?」


エバの表情が凍りついた。


「……まさか、兄様……。皆、塔の中へ!」


「エバ様、これは……!」


「いいから中へ避難するんだ!」


エリアが叫ぶ。


「みんな、塔の中へ!」


エリアたちが塔内へ避難し、ベランダと塔を繋ぐ重厚な扉が閉じられた直後、空に轟く叫び声が世界を震わせた。


「闇よ……滾れ。燃え盛る黒炎よ――

ダークブレイズキャノン!!」


耳慣れぬ声。しかし、その主をエバはよく知っていた。


「……一体どういうおつもりですか、カイン兄様! 反撃をさせていただきますね……!」


空に光が走る。エバはすでに、光竜の姿へと変身していた。


「闇に堕ちた魂よ……光はすべてを照らす!

我が祈りよ、白き炎となりて放て……ホワイトブレイズキャノン!!

――そして、“陽光公爵”!」


光の塔からホワイトブレイズキャノンが対極にある闇の塔からダークブレイズキャノンが放たれ、ダイセツマウンテンの上空で激突し、閃光が世界を包み込む。相殺された二つの力の後を追うように、“陽光公爵”と呼ばれる光魔法がカインの元へと飛んでいった。


その“陽光公爵”とは、公爵風のご立派な顔を持つ光球である。対象の目の前を飛び回り、視界を妨げ、光熱を発して眠気を阻害し、五年間にわたりお仕置きを与え続けるという光魔法だ。


「……なんとか防げたが、黒雲は収まらないな……後できっちり話してもらいますからね、カイン兄様」


扉が開き、エリアたちが再びベランダへと駆け戻ってくる。


「エバ様、大丈夫ですか!」


「……あぁ。心配してくれてありがとう」


その時――光妖精たちがエバの元へ飛来し、何かを耳打ちし始めた。





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