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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第77話 光の塔 ライティングタワー②

塔内の玄関ロビーには、ふわふわと浮かぶ光の玉が無数に漂っていた。そのうちの一つが、エリアたちに向かって滑るように近づいてくる。小さな羽の生えた存在――光妖精だった。柔らかな金色の光をまとい、その瞳は万華鏡のように輝いている。


「ようこそいらっしゃいました〜。……あっ! エリアさん!? また何かやったんですか!? エバ様から聞いてますよ! まったくもう、悪戯はほどほどにしてくださいって言ったじゃないですか! すぐ懲罰房をご用意しますからね? ちゃんと反省してくださいよ〜?」


「ご、ごめんなさい……」


反射的に謝ったエリアは、光妖精に腕を取られ、ずるずると“懲罰房”なる謎の施設へと引っ張られていく。


「ちゃんと罪を償ってこいよ〜」


「姉さん……何をしようと、私は姉さんを姉さんとして愛してるわ」


「エリア、何年でも待ってるから……!」


「みんなありがとう……って、違うわよッ!!」


「えっ!? 違うんですか!?」


「今日はイザーナ様とエバーテイン様の精霊契約のために来たの! 懲罰じゃないの!!」


「あぁ〜〜〜! そうでしたそうでした! エリアさんのお顔見たら、反射でつい懲罰モードに入っちゃって……いや〜職業病ってやつですね! アハハ!」


エリアはぷるぷる震えながら、一言。


「……わたし、どんなイメージよっ!」


そのやりとりを見ていたオレクが、感心したように呟いた。


「顔も名前も覚えられるほどって……」


「すみませんでした。それでは、契約の証を見せて頂けますか?」


イザーナは、不死鳥の杖を出して見せ。


「……確かに確認しました。それではこちらへどうぞ」


案内されるまま、一行は光力エレベーターに乗り込む。


光の塔――その高さは約一キロメートル。二百五十階建ての円筒型で、上層にいくほど細くなる尖塔構造をしていた。階段はなく、すべては光の力で動くエレベーターによって昇降されている。地下には研究所があり、一階は受付と多目的広場、二階から二百階までは神官や司祭たちの仕事場兼宿舎、そして二百一階から二百三十九階までは精霊殿。二百四十階以上は、人類の母・イブが住まう神域だった。


「すごい構造ですね……」


エレノアが周囲を見渡す。透明な筒に乗った足元の光の床が、静かに上昇を始める。


「ところで、光妖精さん。あなた方は光の精霊ではないのですか?」


「光の精霊たちは――あちらに。あの辺りを集中して見てください」


妖精に促され、エレノアがその方向をじっと見つめる。すると、空間の一点で、不規則に点滅する微かな光の粒がちらついていた。


「……あれは?」


「下位の光精霊は常に光の速さで動いています。なのでガラスなどに反射したときだけ、こうして姿が見えるのです」


「そんなに速く動いているんですか……じゃあ、会話は無理なのですか?」


「直接音声での会話はできません。あなたが声を発した時には、もう彼らは遠くへ行ってしまっていますから」


「じゃあ、どうやって……?」


妖精は優しく微笑んだ。


「彼らは“光の点滅”――つまり、光の瞬きに情報を載せて語りかけてくるのです。光を信号のように発し。私たち光妖精は、その光の信号を読み取り、音としてあなたの脳に伝えるのです」


「……翻訳みたいな?」


「ええ、まさに。私たちは信号を受信できる存在です。彼らの意志を“可聴化”して、あなたに届け、あなたの声を逆に光信号に変換して彼らに届けます」


妖精は一瞬言葉を切り、補足するように続けた。


「ちなみに、この通信技術は“精霊媒介型”と呼ばれる念話手法のひとつです。光の精霊が媒介として働くことで、遠く離れた場所との意思疎通が可能になります。これとは別に、“精神リンク型”と呼ばれる近距離通信術もありますが、それはお互いの精神を一時的に接続する方式。私たち光妖精が用いているのは、より広域・高速に対応した光精霊特有の精霊媒介型です」


そう言って、妖精はふわりと宙を舞い、エレノアの額すれすれまで近づいた。


「では、今つないでみますね。少しだけ、意識を開いてください」


エレノアが静かに頷いた瞬間、頭の奥に、柔らかく差し込む光のような感覚が広がった。


 ――チカ、チカチカ……チッ、チカ……。


眼前に残像のように残る点滅。そのパターンが、意味をもった“ことば”として、思考の中へ染み込んでくる。


『はじめまして、人の子よ』


音ではない。それは光の点滅が翻訳された、思念の声だった。まっすぐに心の奥へ届いてくる、透き通った響き。


「……聞こえる。これが……」


「はい。これが“光通信”です。彼らの言葉は、光の意志。私たちが信号を解読し、あなたの“心”に直接、言葉として伝えているのです」


『あなたの中に、光を見る力がある。だからこそ、今こうして、声が届いたのです』


エレノアは胸に手を当て、そっと頷いた。


「光精霊さん……ありがとう。よろしくお願いします」


「すべては、エバーテイン様が私たちにこの役目を授けてくださったおかげです」


「エバーテイン様々ですね……どんな方なんだろう」


「えっ……」


「見たことがないから、気になって」


「そ、そうね。もうすぐ会えるから、分かるわ」


「???」


「それでは、到着いたしました。こちらが二百三十四階、光の精霊殿でございます」


塔の構造は二百一階から変化し、二百三十四〜二百三十九階にかけては吹き抜けの広大な大広間となっていた。大陸の中央に向かって開かれた大きなベランダがあり、その荘厳さは圧倒的だった。


さらに高みに登るには、光の超位精霊エバーテインの許可が必要であり、二百四十階へ以上へ続くエレベーターは別の場所に設置されている。


一行は静かに息を呑み、待ち受ける出会いへと心を引き締めていた。




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