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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
75/101

第75話 招集の風、光の塔へ

オレク、イザーナ、そして超位精霊たちが先に集まっていた。熱を帯びた地獄岩――岩自体が熱を発するという特殊な鉱石――で作られたテーブルの上には、香ばしい匂いが立ち込めている。オレクが焼き上げたイボブーの串焼きと、地の恵みをふんだんに使った山菜スープ。その湯気がゆらゆらと上がっていた。


「うわぁ〜、いい匂い!」


後から来たエレノアが目を輝かせて駆け寄ると、その視線の先には、妖艶な空気を纏った妖狐と、どこか憂いを帯びた表情のぽん吉の姿があった。


「妖狐さん、こんにちは」


にこやかに声をかけたエレノアに、妖狐も柔らかく微笑み返す。


「こんにちは、美味しそうやね〜」


続いて、エレノアの視線はぽん吉へと向かう。だが、いつもと違って彼の顔には陽気さが感じられなかった。


「ぽん吉さんは……元気ないですね?」


「エレノアさん、こんにちは。ミアちゃん、見いひんかった?」


ぽん吉の声はどこか寂しげだった。


「いや〜、見てないですね」


「そうか〜……あの純心な瞳を見て癒されたかったのに〜」


「お気持ち、お察しします」


エレノアは少し困ったように微笑んだ。


シルフェードとの契約の後、天空門の屋敷にてエバが玄関ロビーでミアに会い、彼女をティオーネ教団へ連れて行っていたのだ。


「しかし、エバ様がミアちゃんを連れて行くなんて。珍しいというか……」


エレノアがつぶやいたそのとき、不意に後ろから声がかかる。


「エバ様がミアちゃんを連れて行く際に、なにか四角い紙みたいなのを見せたら、ミアちゃん、喜んでいたわね」


「わあ、姉さん、いつの間に……」


驚いたエレノアに、エリアはふふっと微笑んで見せる。


「ところで、ぽん吉さんはティオーネ教団には行かないのですか?」


「それがな〜、もう最高峰でデンジャラスな任務があるさかい、中々時間取られへんのよ。それにな、わいらの主神は男神様やから、女神の結界に触れると……黒いたぬきさんが完成するんやで」


(意外なところで、女神様と男神様の効力が……これは人間の私には触れられないお話ね……)


エリアは心の中でそっと思った。


「心配してくれてありがとな。でも、まああまり気にせーへんでええんよ」


そう言いながら妖狐が立ち上がると、ぽん吉に声をかける。


「ほら、ぽん吉、行くで!」


「あいあいさ〜」


ぽん吉も立ち上がり、妖狐とともに任務へと向かって行った。


「妖狐さんもぽん吉さんも、大変だな〜」


エレノアが呟くと、隣のエリアも小さくうなずいた。


「そうね。あのキールたちがどうなったか聞きたいけど……イザーナ様が思い出されても困るし」


「ちゃんと調教されてますよ。閻魔様が命じているんですし」


エレノアの言葉に、エリアは小さく息を吐いた。


「閻魔様や天使様といった“架空の存在”だった方が、実在して介入されるなんて……神話かおとぎ話の世界に迷い込んだみたいで、まだ落ち着かないわ」


「そうですね〜」


エレノアも、少し夢見るように頷いた。


そのとき――


オレク、エリア、エレノア、イザーナ、そして超位精霊たちが共に食事をしていると、突如、風が揺らぎ、そこに風の精霊シルフが現れた。彼女は軽やかな足取りでシルフェードのもとへ近づき、何かを囁く。すると、現れたときと同じように、風とともにふっと姿を消した。


「エリア、エバ様からの伝言よ。明日の昼、エルサリアの光の塔に来るように、とのこと」


シルフェードが静かに告げる。


「分かりました。皆さん、良いですか?」


エリアが周囲を見渡すと、エレノアが即座に頷いた。


「もちろんです」


「おうさ!」


オレクが力強く答える。


「分かりました」


イザーナも落ち着いた声でうなずき、クルルが元気よく「クー!」と鳴いた。


「では、明日よろしくお願いします。私が場所を知っていますので、安心してください」


エリアの言葉に皆がうなずき、一同の決意は固まった。


シルフェードとの契約から数週間。ようやく届いた光の塔への呼び出しを受けて、エリアたち一行は準備を整え、エルサリア町へと旅立つのだった。




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