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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第74話 あるひと時の雑談

風の超位精霊シルフェードと契約を果たしたエリアたちは、鬼ヶ島に設けられたブートキャンプ場で、黙々と鍛錬の日々を送っていた。


その朝も、いつもと同じように始まった。朝食のあとの軽い体術訓練を終え、休憩のひとときを過ごしていたとき、エレノアがぽつりと口を開いた。


「エバ様は、いつ呼び出してくるんでしょうか?」


空を仰ぎ見るように言ったその声は、どこか寂しげでもあった。


エリアは風に髪をなびかせながら、真剣なまなざしで妹に答える。


「分からないわ。でも、私たちはもっと強くならなければならない。これから何が起きるか分からないもの」


その言葉に、エレノアは小さく頷いた。


「……そうですね」


ブートキャンプでの訓練を経て、彼女たちの戦闘能力は目覚ましい成長を遂げていた。


オレクとエリアは共にランクS、レベルは九十五に達している。イザーナは登録こそランクFだが、すでにレベル七十七とランクB相当の実力を持っていた。エレノアもまた、かつてのランクBからA+に昇格し、レベル八十八という短期間で驚異的な成長を見せている。


「そういえば、レベルの上限ってどれくらいなんでしょう?」


エレノアが何気なく呟いた言葉に、エリアは少し考え込んだ。


「確かランクはGからSSS+まであって……」


そう言って彼女は記憶を辿るように説明を始めた。


G:レベル〇〜十

F:十一〜二十

E:二十一〜三十

D:三十一〜四十

C:四十一〜五十

B:五十一〜七十

A:七十一〜八十

A+:八十一〜九十

S:九十一〜百

S+:百一〜五百

SS:五百一〜八百

SS+:八百一〜九百九十九

SSS:千以上


「最も多いのは冒険者や兵士で、ランクBのレベル五十一〜七十あたりね。人間としては十分強い部類だけど、亜人や魔族の中にはA以上がほとんど。だから、人間より強いのも納得いくわ」


「じゃあ、勇者様や魔王は?」


「アレス様はS+のレベル四百九十だったと聞いたわ」


「四百九十……」


「魔王カールはそれをも上回る、ランクSSでレベル八百だったそうよ」


「八百!? 勇者様、よくそんな相手を封印出来ましたね」


「確かに。三人パーティーでは無理だったでしょう。でも、カールを封印した時は十二人のパーティーで、全員が勇者の加護を受けていたの。皆、勇者様と同じレベルまで引き上げられたっていう話があるわ」


「魔王もすごいけど、勇者様も規格外ですね……」


「軍隊のように大勢を使って多少の犠牲を許容する戦いではなく、少数精鋭で犠牲を出さない指揮は本当に難しい。確か、ルーク様とリアム様がその指揮を任されていたそうよ」


「納得〜。あの方達、頭良すぎですもんね」


そう言って笑うエレノアを横目に、エリアはふと表情を和らげる。


「ところで、エレノアは、戦う以外でやってみたいことってあるの?」


「ん〜。空さんが言ってた“中立都市の娯楽”ってイマイチ分からないんですけど……飲食のお店とか、興味ありますね」


「へぇ〜」


「ギルドの食堂じゃなく、もう少しこじんまりしたお店がいいな〜って」


「誰とやるの?」


「く、熊……じゃなくて、ひとりで。ひとり!」


頬を赤らめて慌てる妹の姿に、エリアは思わず微笑んだ。


「ふふっ」


「そ、そんなことより、姉さんこそ……空さんのこと、気になってるんじゃ?」


「そんなことないわよ。私は強くて細身の人が好みなの」


「空さんのランクとレベル、調べた時“☆二・五”って表示されてましたけど、なんなんでしょう?」


「……☆ってまさか、伝説級、ランクSSS☆二・五……」


「そんな伝説級なんて……」


「間違いないわ。ランクSSS☆一はレベル千以上。SS+の九百九十九を超えた者たちの領域。☆五になるとレベル上限は九千九百九十九よ」


「ひっ!」


「もはや神の領域ね」


「そんな天使様が、普通に私たちに付いて来てたなんて……」


「ダイセツキャニオンの砂を吸い込んだことも、地下トンネルで世界記録を出したことも、今なら納得できるわ」


エリアの口調に、エレノアはふと気づいた。


(……姉さん、本気になりそう。でも、☆四だったあの人が一番のライバルになるってことは……忘れておこう。愛は、種族を超える……!)


そのとき、遠くからオレクの大きな声が響いた。


「おーい、エリア! エレノア! 飯だぞー!」


エレノアはそっと姉の袖を引いた。


「分かりましたー! さ、姉さん、行きましょ」


「……そうですか、空さん……」


(あ、完全にロックオンの雰囲気……とりあえず先に行こう)


「エリアは?」


「あ〜、いーのいーの。悩めるお年頃なんだから」


「?……まぁいいか。イザーナ〜飯だぞ〜!」


「分かりました〜。イフリート様、アクアディア様、喧嘩は後です。食べに行きましょう」


「我じゃなくてアクアディアがちょっかいを――」


「あなたの語彙力にはツッコミどころが多すぎるのよ!」


「なんですと〜!?」


「シルフェード様、お願い!」


「はいはい、ご飯にしましょう」


「ハーイ!」


イザーナがぽつりと漏らす。


「イフリートにはシルフェード様が一番効くんですよね……」



その後、皆が笑顔で食卓を囲み、鬼ヶ島の訓練場には、ささやかながらも温かな団らんの時間が流れていた。



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