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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第72話 世界樹ユグドラシル

風の精霊殿がある太古の森、キヨサト町へと到着したエリアたち一行を、風の超位精霊シルフェードが出迎えた。その姿は透明な風をまとい、金糸のような長髪がふわりと舞い、まさに風そのものといった存在感だった。そのまま彼らを案内して、神樹の上へと導いた。


「それでは改めまして、ようこそおいでくださいました。風の精霊殿――世界樹ユグドラシルへ」


シルフェードの優雅な声が、風に乗って響き渡る。


世界樹ユグドラシルは、イオに存在するほぼすべての植物の起源とされる存在であり、その種子は風に運ばれて世界中に広まり、大地へと緑をもたらしていた。また、この神樹では品種改良も盛んに行われており、病気に強く、味も人に好まれるような果物や野菜が生み出されていた。


「さて、お話は伺っております。精霊契約、喜んでお引き受けいたします」


シルフェードの言葉に、イザーナは深く頭を下げた。


「ありがとうございます。それと……できれば、私とエリアがここに来たことは内密にしていただきたいのですが」


「なるほど、シルフたちの噂は本当でしたのね」


「ご存知で?」


「ええ。風の精霊シルフたちは世界中に存在し、様々な情報が私の元に集まってくるのです。わかりました。ハーフエルフやシルフには通達しておきますね」


「ありがとうございます」


「もし、流したい噂がありましたら、お申し付けください。あっという間に世界中に広まりますから」


「ふむ……それなら、イザーナの偽の居場所を後ほど噂してもらおうかな」

エバがそう告げると、シルフェードは微笑みながら頷いた。


「承知いたしました」


「では、契約を始めましょう。イザーナ、不死鳥の杖を」


「はい」


イザーナが不死鳥の杖を掲げると、シルフェードは風の魔力を高めながら詠唱する。


「――エアロ・ゼロフォール!」


冷たい真空の塊が、天から杖に向かって降り注ぐ。その瞬間、不死鳥の杖が緑色の光を放ち、そこから緑の不死鳥の姿が浮かび上がった。


「綺麗ね……」

「この瞬間が好き」

「こいつは見事だな」


エリア、エレノア、オレクがそれぞれ呟く中、イザーナとシルフェードの契約は無事に完了した。


「さて、エリアと言ったかしら?」


「は、はい!」


エリアは少し緊張しながら身構えた。


(エレノアには水竜クルル、オレクにはアダマンナイト、イザーナ様には不死鳥レミーア……次は私の番よね?)


彼女は、精霊契約によって得られる「友達」や「相棒」が、自分にも訪れることを密かに期待していた。


(あぁ〜どんな子かな〜楽しみ!)


「エリア、あなたには風の加護を授けましょう」


「……あっ、あれ?」


「どうかしましたか?」


「い、いえ……ありがとうございます……」


「それと、エレノアにも風の加護を授けましょう」


「えっ、私も?」


「はい。あなた方お二人には風の適性がありますので」


エリアの落ち込んだ様子を見て、エレノアはなにかを察し、意を決して尋ねた。


「あの、ひとつ質問を……」


「ええ、どうぞ?」


「私はアクアディア様から水竜を、オレクにはロックウェル様からアダマンナイトを。ですが……エリア、姉には何もないのでしょうか?」


「……そういうことでしたのね。でも、ごめんなさい。風の雷鳥は、すでに勇者アレックスのもとにおりますの」


「そうでしたか……」


「ありがとうエレノア。そしてシルフェード様、ごめんなさい。気を使わせてしまって……」


「いいのです。あなたにも、きっと良き友が訪れる日が来るでしょう。祈っておりますよ」


風の加護を得たエリアとエレノアは、風属性魔法を自在に操れるようになった。


(私も……友達欲しかった〜〜!)


エリアの心の叫びが風に乗って誰かに届いたかは、誰にもわからなかった。


「さて、次は光の精霊だな」

エバが口を開く。


「光の精霊は、ティオーネ教団があるエルサリアの町の光の塔にいる」


「国じゃなくて町なんですね?」

とエレノアが問う。


「そうだ。エルサリアとエデンは勇者王国の国内だからな、ティオーネ教団は女神に仕える者たちが無償奉仕を行っている。町ではお金は使われず、食事は無料で衣類も支給だ。各領地から提供された物資の代金は、勇者王国が支払っている」


「なるほど……そんな仕組みだったのですね」


「もちろん、施しを受けるだけではない。教団は各地に僧侶や神官を派遣し、無償で病気や怪我の治療、災害時の救援も行っている」


「すごい……」

と感嘆するエレノアに、エバは頷いた。


「光の超位精霊に会うには予約が必要だから。しばらくは天空門で休息と修行をしているといい。追って連絡を入れる」


「分かりました」


そう告げると、エバは一瞬のうちに転移して姿を消した。


「そういえば、エバ様も国を預かる立場でしたね……」

エレノアがしみじみと呟いた。


「本当に……私たちの世話までしていただいて、感謝しないといけないわね」


「でも……天使様に、閻魔様に、大賢者様に会うなんて、ギルド館にいた頃には考えもしませんでした」


「それでも、不満はある?」


「……不満が無いとは言えません。素敵な仲間に出会えましたから」


「誰かがいないことが、不満なのかな?」


「ね、姉さんっ!」


「ふふっ。さ、天空門へ戻りましょう」


こうして、イザーナは風の超位精霊シルフェードとの契約を終えた。残るは、光と闇の精霊――。新たな旅が、再び動き始める。


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