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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第64話 ワカーナ岬と海中の扉

昨日、火の超位精霊イフリートとの精霊契約を果たしたイザーナ。

その姿は、超位精霊と不死鳥の杖に選ばれし“契約者”としての自覚が芽生えつつあった。


そして今日。次なる契約の地へと、一行は向かう。


旅の仲間は六人。

中心に立つイザーナを支えるのは、オレク、エレノア、エリア、そして天空門より同行するのはエバと空


一行が目指すのは、水の超位精霊アクアディアが住まうという、伝説の海底都市アクアンティスだった。


天空門を出発した一行は、エバの導きに従い、大陸最北端──「ワカーナ岬」へとたどり着く。


そこは、荒れ狂う波が断崖に打ち寄せ、風が絶えず唸り声を上げる過酷な地に、

静かに佇む一体の像があった。人魚の姿を模したそれは、まるで深海の神話を今に伝えるかのような神秘的な気配を放っていた。


「ここが……ワカーナ岬。これがアクアディア様の像ですか」


エリアが感嘆の声を漏らす。

四メートル近い像の姿は、見る者を圧倒するほど堂々としており、ただ立っているだけで聖域のような空気を生んでいた。


「不死鳥の証に、いずれかの超位精霊が宿っていれば──この像の下に、海底都市へと続く海中トンネルが現れる」


エバの説明する声は、吹きすさぶ風の中でも確かに響いていた。


「なるほど。アクアンティスへ行くには、不死鳥と精霊……勇者や救世主の器が必要なのですね」


エリアが納得したように頷くと、エバも静かに同意を示す。


「第三魔王ですら、ここに迷宮を作ろうとはしなかった理由だろうな」


そう言ってエバは、鋭い眼差しをイザーナに向けた。


イザーナは無言で一歩前へ出ると、不死鳥の杖を高く掲げた。その動きには、神聖な決意がこめられている。


次の瞬間──


像が眩く輝きはじめ、その土台が音もなく滑るように動き始めた。海側へとスライドした先に現れたのは、深く裂けた海の裂け目。そして、そこから浮かび上がるように、海中へと続く階段が姿を現した。


「なるほど、こういう仕掛けなんですね……」


エレノアが驚きの声を上げる。


「私と空さんは問題ないが、みんな、水の指輪は着けているな?」


エバが確認すると、仲間たちはそれぞれ頷き、手元に輝く指輪を見せた。


「それならよし。あれさえあれば水中での呼吸と水圧の防御が保証される。絶対に外すなよ」


全員が再度うなずき、足を踏み出す。階段を下りていくごとに、入り口はすぐさま音もなく閉ざされていき、他の侵入を拒んでいた。


徐々に、視界が青に染まっていく。やがて、彼らは透明な壁に囲まれた海中トンネルへとたどり着いた。


「うわ〜! 魚が泳いでます!」


エレノアの声が明るく響く。

太陽の光が水面を通して差し込み、さざ波が壁に反射して、幻想的な光の揺らぎを生んでいた。


「これは……綺麗ですね……」


エリアも感動したように、目を細めて呟く。


「……あぁ、美味そうだなぁ」


オレクの一言に、一同は思わず吹き出した。


「オレクは食べ物のことばかりですね」


エリアが笑いながら突っ込むと、オレクは誇らしげに胸を張る。


「戦士は身体が資本だからな。食ってナンボだろ」


和やかなやり取りが続く中、一行は海中トンネルの先にある、巨大な扉の前へとたどり着いた。


そのとき──


「わぁ、入口の音がしたと思って来てみたら……勇者様の仲間たちですか? それとも……」


澄んだ声とともに現れたのは、水の精霊・ウンディーネだった。

青銀色の尾をたなびかせ、人魚の姿をした彼女は、優雅に水中を舞うようにして近づいてきた。


「強い精霊の気配を感じますね……あら、イフちゃん?」


「ふふふ、気づいたかウンディーネよ! 我の気配を見抜くとはな!」


「やっぱりイフちゃんだった! 相変わらず“我”とか言ってるし!」


「笑うでないわ!」

顔を真っ赤にしたイフリートを、ウンディーネはさらりと受け流す。


「ここへ来られるのは、精霊と勇者様か救世主様の資格を持つ者……あなたですね」


ウンディーネの視線が、まっすぐにイザーナを捉えた。


「初めまして。イザーナ・エレバンと申します」


「私はウンディーネA、よろしくね」


そのとき、空はウンディーネの姿を見て──ただ、息を呑んでいた。


(……本当に、いるんだ……精霊っていうか、人魚……)


目の前に広がる、漫画やアニメでしか見たことのなかった世界。

だがそこに立つウンディーネは、ただ美しい存在ではなかった。確かに「生きている」と思わせる、リアルな存在だった。


(ほんとに、生きてるんだな……)


「空さんどうかしました?」


エバがウンディーネを見てぼーっとしているのに気が付き声をかけた。


「いや、私の記憶にはウンディーネは空想上の霊的な生き物だったので、いざ間近に見ると見とれてしまうなと……」


「なるほど……人間として生きていた場所では空想上の霊的な生き物と……私もいつか行って見たいですね」


「ここと変わらず良いところですよ」


「そうですか」


空とエバの話を聞いていたウンディーネがエバに話しかける。


「エバ様お久しぶりですね。イフちゃんの事件以来だから、数百年ぶりくらいかな」


「久しぶりですね。あの時は大変だったな〜」


「わ、我は助けただけだぞ」


「まったく……悪意がない迷惑っていうのも中々に厄介だな……」


イザーナが問いかける。


「なにかあったのですか?」


エバとウンディーネは目を合わせ、そして視線をイフリートに向けながら、微妙に話題を逸らすように言った。


「昔、色々な……」


「まぁ今はなんとか元に戻りましたし。では、さっそくご案内しますね。アクアディア様のもとへ」


再び動き出す一行。


伝説の海底都市──アクアンティス。その扉が、静かに彼らの前に開かれようとしていた。


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