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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第5話 ミラー城塞へ

 リアムの家で一夜を明かした空たちは、朝の陽光の中、ミラー城塞への出発準備を整えていた。


「さあ、ミラー城塞へ向かうとするか」  

 メイソンが力強く言うと、空は頷いた。


 メイソンの大きな背に、美加とエミリが軽やかに乗る。旅路の間、リアムとメイソンは旧友らしく昔話に花を咲かせながら、穏やかに歩みを進めた。やがて、前方に威風堂々とした大きな城塞の姿が現れた。


「ミラー城塞って、南東樹海からそれほど遠くないんですね?」

 空がそう尋ねると、リアムは頷いた。


「そうです。ミラー城塞の領主、ルーク様は元冒険者。過去の功績を称えられ、勇者王国のアレス王からこの地一帯――ミラー領とその首都であるミラー城塞を任されたのです。魔物が南東樹海から頻繁に現れるため、即応できるように城塞はその近くに築かれているのですよ」


「なるほど……」

 空は感心したように頷いた。


「ちなみに、二年ほど前にルーク様の奥様――イザベラ様が病を患ってしまいましてね。それ以来、ルーク様は少し様子がおかしく感じられることがあるかもしれません。ですが、あまり気にしないでください」


「分かりました」


「もうすぐ城門です。熊の件については、昨日のうちに諜報員が冒険者ギルドへ報告しています。門が開けば、ギルドのサブマスターが出迎えてくれているはずです」


 その言葉通り、城門が重々しく開かれると、中には数名の人影が見えた。


「ギルマス~!」


 その声とともに数名が駆け寄り、メイソンの熊の姿に飛びついた。


「生きていて良かった~! 姿はどうあれ、生きていて良かったですよ!」

 そう言って抱きついたのは、サブマスターのエレノアだった。


「心配かけたな」

 メイソンが申し訳なさそうに答える。


 他にも男女の職員が二人いた。


「うわっ、マジで熊がしゃべった……」

 男の職員、カーターが驚いた声を上げる。


「報告通りでしょ」

 女の職員、レアがあきれ顔で返す。


「そうだけどよ~……それにしても熊か、ギル熊って感じだな。しっくりくるかも」


「たしかに、もともと熊みたいな見た目だったから違和感がないかもね」


「おまえらな~……」

 メイソンが頭をかくと、二人は「ごめんなさい~」と笑った。


「でも、生きていて本当によかったです。サブマス、泣きまくってましたから」

「こらっ!」

 エレノアが恥ずかしそうにたしなめた。


「本当にすまなかった。とにかく、ギルド館でゆっくり話したいが、城塞に入っても問題ないか?」


「大丈夫です。今朝、町中に熊がいても驚かないよう広報しておきましたから」


「そ、そうか。こちらの二人が、俺とエミリお嬢様を救ってくれたんだ」


「本当にありがとうございます」

 エレノアは深々と頭を下げた。


「いえいえ。私は空っていいます。こちらは美加」


「美加です、よろしくお願いします」


「私はエレノア。冒険者ギルドのサブマスターをしています。詳しいお話は、ギルド館で。さあ、移動しましょう」


 リアムが一歩前に出た。

「では、私はエミリお嬢様をお送りします。後ほど合流しますね」


「よろしくな!」

 メイソンが応える。


 エミリとリアムは、静かにその場を後にした。


 ミラー城塞の中に足を踏み入れると、まず目に入ったのは兵士たちの宿舎と訓練場だった。非常時に即応できるよう、城門の近くに配置されているのだろう。


 続いて見えてきたのは畑や酪農の施設。エレノアの話によれば、魔王が存在する間はすべて城塞内で栽培・飼育し、魔王がいなくなれば外でも行えるようになるという。


 さらに商店や加工施設、住居が並び、そしてひときわ大きな建物――ギルド館が視界に入った。六階建てのその建物は、隣に訓練場を構え、一階には冒険者、レンジャー、商人ギルドの受付があり、昼間は喫茶店、夜には酒場になる広間があった。二階には各ギルドの事務所や応接間、ギルマスの部屋があり、三階以上は商人ギルドが運営している宿泊施設となっていた。


 空たちはそのギルド館へと足を踏み入れる。


「空さん、ギルドについてご存知ですか?」

「いえ、あまりよく分からなくて……」


「ギルドとは、魔物退治や警護、雑務を担う『冒険者ギルド』、お宝探索などを行う『トレジャーハントギルド』、そして職人・商人が属する『職人・商人ギルド』などから成る組織です。それぞれ登録が必要なんですよ」


「なるほど……」


「依頼は右側の掲示板に貼ってありますが……今は人手不足で、ほぼ休業状態なんです」


「それは大変ですね……」


「そろそろ、二階で話そうか」

メイソンが促し、カーターとレアは1階の受付に戻っていった。


 空、美加、メイソン、エレノアは、ギルド館二階のギルマス室へ向かい、メイソンがこれまでの経緯――南東樹海の黒い霧とその影響について語った。


「なるほど……黒い霧がギルマスを魔物に変えた可能性がある、しかし原因は未だ不明……」

 エレノアが眉をひそめる。


「そうだ」

 メイソンが重々しく頷いた。


「たしかに、これまでも南東樹海で行方不明者は多かったですが、事故として処理されてきました。でも今回のお話で、それが事故とは限らないことがわかりました」


「一年前から不定期に調査クエストが出ていた記録もあります。調査の目的や発注元を調べ直してみます」


「頼む。リアムがルーク様に話を通してくれているから、許可が下りればすぐにでも再調査に入るつもりだ」


「分かりました」


 そう答えたエレノアは、そのまま空と美加の方に向き直り、なにかを言い出したそうな表情を浮かべた――

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