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天空門のルシフィス  作者: かみちん
惑星イオ 光国編
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第3話 惑星イオへ

神山空――本当の名はルシフィス。天空界の見習い天使である彼は、記憶を失ってからすでに二年が経っていた。

修行の場では、師である揚老師の教えを受けながら武術を身につけ、最近では槍術に特に力を入れている。精神面も鍛えられ、以前よりもずっと強くなっていた。


「ルシフィス様~」


声をかけてきたのは、熾天使ミカイルだった。修行が始まってまもなくから、彼女は空に親しげに接していた。

ミカイルは天使長という地位にあり、女神ティオーネに次ぐ力を持つ存在である。


その立場を初めて知ったとき、空はなぜそんな高位の存在が自分に優しくするのかと戸惑った。しかし理由はわからぬまま、それを深く考えるのはやめることにした。

何より、こんなにも可愛らしい娘が慕ってくれるのだから、悪い気はしない。


「もうすぐ休憩ですよ~」とミカイルが言う。


「呼びに来てくれたんだね。ありがとう」


「今日は女神様もご同席なので、早く行きましょう」


「へぇ、女神様も一緒なのか。珍しいな。わかった、すぐに行こう」


かつての記憶は未だ戻らない。だが周囲が「ルシフィス様」と呼ぶことから、自分がかつて高位の天使であったことに空は気づき始めていた。

とはいえ、記憶のない今の自分にはルシフィスの名を名乗る資格はない気がして、依然として「神山空」の名を使い続けていた。


女神ティオーネの元へ案内されると、女神は優雅に微笑んだ。


「久しぶりですね、ルシフィス」


「お久しぶりです、ティオーネ様」


「元気そうで何よりです。記憶は戻っていないようですが、修行は順調のようですね」


「ありがとうございます」


ティオーネの表情が少しだけ引き締まる。


「早速ですが、実は“惑星イオ”で進めている計画についてお話があるのです」


「計画、ですか?」


「はい。惑星イオにはひとつの巨大な大陸が存在し、そこにあらゆる生命が暮らしています。大陸は菱形に近い形をしており、その中心には“中央線”と呼ばれる境界が縦に走っています。


東側は“光国”――人間、エルフ、ドワーフといった種族が住み、

西側は“闇国”――魔族や獣の特性を色濃く持つ亜人たちの領域です。


互いに住み分けはしているものの、中央線付近だけは接触が避けられず、争いが絶えない地域となっています。


そこで数年前から、中央線付近に人間と魔族が共に暮らせる“中立都市”を建設する計画が進行中なのです」


「なるほど、交わる場を作り、互いに理解し合うことで争いを減らそうというわけですね」


「そうです。そしてあなたには、この中立都市の建設と共に、惑星イオに新たな“楽しみ”や“喜び”をもたらす役割を担ってもらいたいのです。

光と闇、天使と悪魔、魔王と勇者――相反する存在がバランスを保つことで世界は成り立っています。

どちらかに傾けば争いが再燃する。その均衡を保つ者として、あなたに白羽の矢が立ったのです」


「かなりの大規模な話ですね……本当に、私にできるのでしょうか」


「心配はいりません。すでに、惑星ガイアから転生者や転移者が数名送り込まれ、現地での準備が進められています。

あとは、双方の懸け橋となれる人物が必要なのです。あなたならば適任だと、私は確信しています」


「……分かりました。皆さんが協力してくれるなら、私もできる限り頑張ってみたいと思います」


「よかった。では、明日の朝、転送装置に集合してください」


空は丁寧に一礼した。


その夜、空は揚老師や世話になった者たちに別れを告げ、惑星イオへ向かう心の準備を整えた。

自分がかつて人間だった経験、ゲームやアニメから得た知識、そして魔王と勇者が存在する剣と魔法の世界――それらすべてが、これからの旅に役立つのだろう。期待と興奮に胸が高鳴る。


翌朝、転送装置前にはウリイル、ミカイル、そしてティオーネが待っていた。


「それでは、ルシフィスを惑星イオへ転送します。ミカイル、あなたも同行しなさい」


「……良いのですか?」


「ええ。ルシフィスだけでは負担が大きいでしょう。あなたがいれば安心です」


「分かりました。ルシフィス様、よろしくお願いしますね」


「よろしくお願いします。……あ、できれば“空”って呼び捨てにしてもらえると嬉しいです」


(ちょっと複雑な気持ちだけど、熾天使様が一緒なのは正直嬉しい)


「では私のことも“美加”って呼んでくださいね」


そこへティオーネが小さな灰色の宝珠を差し出してきた。


「ルシフィス、これは創造神ノヴァから託された“亜空間の宝珠”です。

この宝珠は好きな時に出入り可能な空間への鍵で、あなたのイメージによってあらゆるものを創造できる力を秘めています。使い方はあなた次第。いろいろ試してみるといいでしょう」


「……すごいですね。ありがとうございます」


「では、よろしく頼みますよ」


ウリイルが転送装置を起動する。


金色の光があたりを包み込み、

神山空とミカイル――もとい、美加は、天使の姿のまま、新たな運命が待ち受ける惑星イオへと送り出された。


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