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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.4.28 毛布を巡る冒険(後編)

 前回は、毛布の手洗いに四苦八苦する様子をお伝えした次第でございますが……

なんとまあ、あのどうでもいい話には、続きがあったみたいなのですよ。


               § § §


 あれから時は流れ、つい先日のこと。

 脱水時間を調整しようと洗濯機の端末をいじっていた際、ワタクシ、とうとう発見してしまったのです――


 我が家の洗濯機に「毛布コース」なる機能がついていることに!


 いやあ、思い込みというものは恐ろしい。実家ではずっと二層式の洗濯機を使っていたため、「洗濯機で毛布を洗う」という発想が無かったんですね。


 さっそく私は、洗濯機先輩に心で語りかけます。びわわわ~ん。


(ねえねえ。パイセンは、ほんとうに毛布まで洗えてしまうわけ?)


(うっす。ヨユーっす)


(こんなことをいっちゃあなんだけど、パイセンって、

 新生活応援セットで買った、どちゃくそ安い洗濯機ですよね)


(うっす。でも、実力は本物っす)


 ……いや、まてまてまて。

 ちょっと前もこんなことがあった気がしますよ。

 そのときに悲劇の引き金をひいたのは、同じく新生活応援セットで買った炊飯器くんだったではありませんか。


 二の轍を踏まないためにも、落ち着いてよーくマニュアルを読んでみましょう。


「3kgまでの毛布なら、いけるんじゃないっすか?

 詳しくは毛布についている取り扱いタグでも見てくださいよ。

 ああ、自分、夏掛け布団程度なら洗えちゃうんで、そこんとこヨロシク」


 要約すれば、こんなことが書いてあるではありませんか。

 私は、思わず叫んでしまいました。


「ウッソだろ、お前! こんなチンケなアパートにいていい人材じゃねえよ!!

 さっさと大リーグにでもいっちゃいなよ!!!」


 ……すみません、いささか取り乱しました。

 次は、毛布のタグを確認してみます。


「ないぞ! タグが、どこにも、ついていねえッ!!

 どこのお山から出てきた毛布だよッ!!!」


 ……すみません、温厚な私もいささか荒ぶってしまいました。


 まあ、いつ、どこで買ったかも定かでないような代物です。

 少々痛んだとしても()()()()なので、洗ってみるとしましょうか。


 さて、毛布を100円ショップで買ってきた特大の洗濯ネットに押し込んで、洗濯機先輩に投入します。


 なんだか、えらくギュウギュウだけど大丈夫だろうか……

 一抹の不安を抱きつつ、「毛布コース」をスタートさせます。


 しゃわわわわー(水が注入される音)


 ぎーこん、びーわっ ぎーこん、びーわっ(洗濯している音)


 ぶぅーんぶんぶん、ぶぅーんぶんぶん(脱水している音)


 もう少しで1時間といったところで、洗濯終了のブザーが鳴りました。

 さあ、どんなもんでしょうね――


 毛布を取り出してまず驚いたのは、脱水がバッチリなされていたこと。


 去年、脱水が不十分なままで干した毛布は、一昼夜ベランダに出しっぱなしにしても乾かないほどでした。

 一方、今回と来たらすでに半乾き、ベランダまで持っていくのもお茶の子さいさいです。もちろん服が B B D M びっちょびちょだよマリコちゃん状態になることもありません。


 物干し竿に掛けてから、もういちど確認してみましたが、毛布が痛んでいる様子もありませんし、洗剤が残っているなんてこともない。


 つまりは、完璧です……

 

 最先端の技術力を目の当たりにした私は、感動に震えました。

 遠い昔、黒船を目にした江戸の人々も、こんな気持ちだったに違いありません。


 2025年4月某日。

 この日は、私の文明開化の日として、長く語り継がれていくことでしょう。


 ……あ、この話はこれでお終いですよ。

 たまにはハッピーエンドってのも、いいじゃないですか。

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