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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.4.26 しょうちゃん

 近所のスーパーへ買い物に出かけたときのこと。


 悩んでいました。

 関ヶ原の時の小早川秀秋だって、これほどは悩みはしなかったでしょう。


 何に悩んでいたかって?

 もちろん、普通のコーラにするか、ダイエットコーラにするかということです。

 味だけで見るならば、とうぜん普通のコーラです。

 けれど、青天井に増えていく体重のことを考えるなら、ダイエットコーラ一択。


「はぁ? 体調を気にしているんだったら、まずはコーラをやめなさいよ」


 そういうあなた!

 ノン! ノン!

 あなたはね、吉田晶という存在をこれっぽっちもわかっていない。


「吉田晶はね、コーラを飲まないと死んじゃうのよ」

「吉田晶の血管には、コーラが流れているらしいぜ……」

「吉田晶の半分は、コーラでできています」

「吉田晶がコーラで コーラが吉田晶で」


 さてさて――

 そんな脳内関ケ原の真っ最中に、親子連れの声が聞こえてきましたよ。


「ままぁ、()()()()()()、コーラのみたい。コーラにしよう」


 しょうちゃんは4歳くらいでしょうか。

 さすがコーラを所望するだけあって、賢そうな顔をしています。


「こないだ飲んだばっかりでしょう。だめ」

「はーい」


 あれ、諦めちゃうんですか?

 しょうちゃん、ずいぶんと聞き分けの良い子ですね。


「ねえー、ままのすきなジュースなに?」

「伊●園の野菜ジュース」

「……じゃあ、にばんめにすきなジュースは?」

「うーん、ウ●ルチのぶどうジュースかなあ」

「じゃあ、それでいいよ」


 しょうちゃんは、満面の笑顔でぶどうジュースを買い物かごに放り込みました。

 こいつ、天使のような見た目をしながら、狡猾です。


「あ、ちょっと、ジュースなら家にあるでしょ。いりません」


「えー、あれ、おいしくないよ、まずいよ」


「せっかくおばあちゃんが送ってきてくれたんだから、そんなこと言わないの。

 あれがなくなるまで、新しいジュースは無し」


「ままだって、あれおいしくないっていってた……」


「ママはちゃんと一日一杯飲んでます。

 パパとしょうちゃんが飲まないから減らないんでしょ」


「だってあれ、にがくてくさいよ。たんぽぽのはっぱのあじがする……」


「体にいいんだから、我慢して飲みなさい」


 タンポポの葉っぱの味がするジュースって、いったいなんぞや!?

 っていうか……

 しょうちゃんはなんでタンポポの葉っぱの味なんて知っているのさ!?


 そんなことで頭がいっぱいになって、

 肝心のコーラを買い忘れてしまいましたとさ。


 どんどはれ。

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