2025.4.16 『雙(ふたつ)に獨(ひとつ)を加ふる話』
少し前に『雙に獨を加ふる話』と言う短い作品を書いた。
「二つでひとそろいのものが、いつのまにかひとつ増えて三つになっている」
そんな怪しいことが起きる化物屋敷を舞台としたお話である。
§ § §
最初、この話は原稿用紙80枚程度の中編推理小説となるはずだった。
しかし途中で、筋書きがあまりにも陳腐であると感じてしまい、どうにも着地することができなくなってしまった。
その時ふと、三津田信三先生の「刀城言耶シリーズ」を思い出した。
この「刀城言耶シリーズ」、うまく解説するのは難しいのだが、
「ミステリーの仮面をつけたホラー」であり、
「ホラーの皮を被ったミステリー」でもある。
物語の最後で、いちおう謎は解明されるのだが、はたしてそれは人の仕業なのか? もしや、本当に怪異の仕業なのでは?
そこらへんの曖昧さが、とても素敵なのである。
――これだ!
推理ものに、ホラーの要素を付け加えてみればいいのでは?
今村昌弘先生の『屍人荘の殺人』だって、ホラーとミステリーの融合じゃないか。
――いける!
読者諸子はよく憶えておいてほしい。この吉田のようなお調子者が、
「いける!」
「いいことを思いついた!」
「ここはまかせろ!」
そんなことをしたり顔で言い出したら、それは危険信号である。
§ § §
それからしばらくの後、私は絶望のどんぞこにいた。
ぜんぜん、いけてないのである。
どう頑張っても、陳腐。
というか、ホラーを加えたらさらに陳腐さが鼻につくようになってしまった。
(これじゃあ、消●力でもファ●リーズでも消臭できんでしょ……まいったなあ)
§ § §
さんざん悩んだ結果、推理小説として完成させるのはばっさりと諦めた。
ただ、作品の設定(明治時代で双子が出てくる等々)をまるごと捨ててしまうのはもったいなかったので、ホラー9割、謎解き1割の短編としてリサイクルしてみることにした。
結果、物語としてはなんとかまとまったと思う。
不要な描写はできるだけ削るよう心掛けたので、なにより読みやすいはずだ。
その点は満足している。
ただ、課題点ももちろんあって……
①書き出しが地味。
②明治という魅力的な時代背景が活かせていない。
③各キャラクターの描写が不足していて、感情移入ができない。
これらはひとえに、作者の実力不足である。言い訳はできない(血涙)。
特に③、少なくとも後半の主人公である昭雄の心情の機微だけは、もっと丹念に掘り下げるべきであったと、おおいに反省している。
……とまあ、長々と与太話に付き合っていただいたが、この『雙に獨を加ふる話』、もし未読のかたがいらっしゃいましたら、ちょっと読んでみてくださいよというコマーシャルなのでした。へっへっへ。
どんどはれ。




