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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.12.3 安物買いの銭失い ①(※注意 出血表現あり)

 みなさま、こんにちは。


 ――あれは、とある冬の朝のことでございました。


 目を覚ました私の目に、 “鮮烈な赤” が飛び込んできたのです。


 あたかも一凛の牡丹を思わせるそれは、よくよく見れば、枕に付着した結構な量の血液でした。

 

(ひょええ~、ひょええ~、横溝正史の世界でござる!)

 

 慌てて鏡に向かい、自分の顔面をくまなく点検してみたのですが……


 鼻血ではない。

 歯槽膿漏でもない。

 おできをつぶしたわけでもない。


 では、この出血は、いったいなんじゃらほい?


 ――そこで、ぴぃんと閃いたのでございます。


 この事件が起きる前日、風呂場で使っていた櫛の歯が欠けてしまったので、100円ショップで新しい櫛を買ったのですね。


 ちなみに、前に使っていたのは、某ビジネスホテルのアメニティ品。

 気が付けば、3~4年は使っていたでしょうか。

 デザインが「どこからどうみてもアメニティ」ってところを除けば完璧な相棒で、私は彼女を「アメリア」と呼んで可愛がっておりました。


 おっと、昔の櫛の話は置いておいて……問題は新入りの方。


 こいつがもう、歯の先端がやたらめったら鋭いのです。

 いつもの調子で髪をいたら――


 ザクッ!! ザクッ!!


 痛ぇぇぇ!


 もう刺さること刺さること。

 備中鍬びっちゅうぐわで荒れ地を開墾している気分ですよ!


 とはいえ、私もたいがい大雑把ですからね。


(たまたま前の櫛(アメリア)が優しかっただけで、櫛ってのは本来()()()()()()なのかもしれないなぁ……)


 そんなことをのんきに思って、今度は、平安時代の女官になったような気持ちで梳いてみたのです。

 やんごとなきお姫様の御髪みぐしに櫛を通すような気持ちで、なよやかに……


 ぶさり!! ぶさり!!


 痛や! あな痛や(※)!


 いや待てコラ!?

 この櫛、絶対におかしいだろ!?

 くノ一とか仕掛人が暗殺に使うやつじゃねえの、コレ!?


 頭からドクドク血ィ流しながら、櫛が入っていたパッケージを確認したんですけどね、やはり「暗殺用」とは一言も書いてありません。

 あんまり腹が立ったから、その100円ショップに苦情を入れてやったんですよ。

「そちらで買った “普通の櫛” 、暗殺仕様でしたよッ!」って。


 ……まあ、さすがにそれはホラ話なんですけどね。ぷおーん。(←法螺貝の音)


 ともかく、そんなこんなで「()()」を旨とする吉田サンですから、「安物買いの銭失い」が日常茶飯事になっているわけです。


 そうそう、つい先日もこんな事件がありまして――


(続く)


※……あな痛や

「ああ痛い」「なんとつらいことだ」 という嘆きや苦痛を表す古語。

「あな」は 感動詞。

大事なことなのでもう一度言う。

「あな」は 感動詞である。


ちなみに、グーグルで「あな痛や」を検索すると、なぜか真っ先に近所の「肛門外科」と「円座ムートン」が出てくる。


……そういう意図で検索したわけではないわッ! このうつけポンチめがッ!

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