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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.4.11 もうあの頃にはもどれない

 皆様、こんにちは。


 今日はこれまでの「裏裏」史上、最も衝撃的な内容をお届けしたいと思う。

 読んでいるうちにSAN値を喪失して、理性を失ってしまうかもしれない。

 その際はすぐにブラウザバックして、この記事の存在を忘れてほしい。



 それでは、心の準備はよろしいだろうか……


(BGM:花祭り)


 ここ最近、気候がすっかり春めいて来て、実に嬉しい。

 中でも特に嬉しいことと言えば……

 それは、水道の水がぬくくなってきたことである!


 これだけ温くなれば、水仕事をする際にわざわざお湯を出す必要がない。

 特に「米を研ぐ」という作業において、これは実に大きい。


 冬場、食器を洗ったり風呂を掃除するとき、私は容赦なく給湯器をONにする。

 それなりに長い時間出しっぱなしにするからだ。


 けれど、米を研ぐ場合、お湯を出すのには二の足を踏んでしまう。

------------------------------------------------------------------------------

給湯器ON→蛇口をひねる→お湯が出るまでしばらくかかる→

温かくなったら米を研ぐ→とぎ汁を捨てる(この時お湯をいったん止める)→

蛇口をひねる→お湯が出るまでしばらくかかる→温かくなったら米を研ぐ→

(以下略)

------------------------------------------------------------------------------

 何と言うか、水道料金と時間の無駄無駄ァじゃないですか。

 だから、真冬であっても米は水で研いでいたのだが……やはりつらい。

 関東地方とは言え、真冬の水は手が痛くなるほど冷たい。


 そして、先日のことである。

 寒の戻りというやつで、気温は再び真冬並み。

 けれど、米を研がないわけにはいかない。

 前の日に作ったカレーが残っていたからだ。


 そのとき偶然、視界のすみに「しゃもじ」が映った。


(手じゃなくて、しゃもじで米を研いだらどうなるだろう?)


 そんな冒涜的な考えを、私はすぐさま頭から振り払った。

 自慢じゃないが、私は幼い頃より、米研ぎエリートして育てられてきた。


【以下、回想シーン】


「弱い! もっと力を入れて! ヌカの臭いがとれないでしょッ!

 よーく米の声を聞きなさいッ!」


 ぴしこーっ!(折檻の音)


「今度は強すぎッ! 米が砕けちまうわッ!! 

 だから米の声を聞けとあれほどッ!」


 ぴしこーっ!(折檻の音)


「ええい、アンタには米の声が聞こえないの!?

 もういい、台所の隅で大根でも降ろしてなさい!!」


 ごーりごーり(大根を降ろす音)


【以上、回想シーン終わり】


 無理もない。

 実家は米どころで有名な東北の某県である。

 「マスター米研ぎ」の称号を得れば、3年で家が建つ。

 そんな世界だったのだ……


 あ、ええとですね、

 つまり何が言いたかったのかというと、

「しゃもじで米を研ぐなんて、そんな横着しちゃっていいの?」

 ――そういうことなのである。


 しかし、いちど火がついた好奇心というものは、いかんともしがたい。


 背徳感に身もだえしながら、しゃもじを手に取り、

 ジェントルかつ大胆に米を掻きまわす。


 するとどうだろう……


 研げる。

 何と言うか、手よりパワフルに研げる。

 米の声はまったく聞こえないが、なんら問題はない。


(いや、まだだ……)


 これで、炊けたごはんがヌカ臭かったら、すべてはおじゃんである。


 しかし、それは杞憂であった。

 ごはんは、いつもどおり美味しく炊けていたのである。


 私は泣いた。

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