2025.3.20 朝から深紅のロマンホラー
周囲から隔絶された空間の中で、あるべきものを探した。
しかし、決して見つかることはなかった。
――すなわち、完全なる喪失ッ!
ドドドドドドドドドド……(効果音)
「間違いない……これは、スタンドによる攻撃だ……
俺は今、スタンド攻撃を受けているッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……(効果音)
「俺の能力をもってすれば、この空間から抜け出すことは容易い……
だがよーッ!謎が解けなきゃ意味がねえ!!
だから、あえて俺は、この薄暗がりの中で手がかりを見つけてみせるッ!!!」
(ここから、「ウルトラQのテーマ」を脳内に流してお楽しみください)
こんにちは。
今朝、セーターを着ようとしたとき、頭を突っ込んだ段階になって、
どっちが前側で、どっちが背中側か、わからなくなってしまったのです。
こういうとき、あなたならどうしますか?
【一回脱げばいいんじゃない?】
なるほど、あなたは正しい。
だが、それじゃあ、まるで私が
「前後を確かめずにセーターに頭を突っ込んだ小学生」みたいではないですか。
そんなこと、到底認められませんよ。恥ずかしいですよ。
改めて聞きます。
あくまで頭を突っ込んだ状態で、どうやってセーターの前後を確かめますか?
……Exactly。
セーターの内側の背中側にはだいたいタグが付いているので、それを見つければよいのです。
今、私の顔を覆っている側には、タグはありませんでした。
ならば、セーターを被ったまま、それを180度回転させます。
あれ、やっぱりタグがない……
何度繰り返しても、タグは見当たりません。
タグが破損して落っこちてしまったというわけではありません。
私の視覚や触覚がタグを捕えそこねたというわけでもありません。
タグは確かに存在するのに、あるべきところに存在しないのです。
まるで、異次元に迷い込んだようではありませんか。
「この謎がとけるかッ! チャットG●Tィィィィーッ!!」(CV.子安)
【セーターを裏返しに着ようとしている可能性が高そうです!試しにセーターの縫い目や表面の質感を触ってみると、内外が逆かどうかが分かるかもしれませんね】
あ……はい……正解です。
凄いね、キミ。賢いね、キミ。
ま、まあ……
日常に、これだけのミステリが潜んでいるとは!
まさしく、ボイス・オブ・ワンダーランドですよ、VOWですよ!
もう、朝からテンションが上がっちゃって上がっちゃって、この事件を推理小説にすれば、「占星術」だの「十角館」に匹敵する作品が出来るような気がして、さっそく江戸川乱歩賞(主催:日本推理作家協会)の応募要項を確認しちゃいました。
「――四百字詰め原稿用紙で350~550枚」
……ちょ、ちょっと、日本推理作家協会さんよぉ! あんたら正気か!?
「セーターを裏返しに着ようとしていた」ってだけの話を、どうやってそんな枚数まで膨らませろって言うのよォォォォォ!
私が産まれてから今朝に至るまでの人生を事細かに描写したって、原稿用紙50枚がいいとこだぞ!?
あーあ、こういう世間の無理解が、偉大な才能を世に埋もれさせるんですよ。
もったいない、もったいない。