2025.9.28 ウィザードリィなんかじゃない(3)
【前回までのあらすじ】
・いろいろあって、パーティメンバーが揃ったよ!
・さあ、冒険に出発しよう!
§ § §
【キャンプ】
ヨシダ・アキラ レベル1 中立―戦士 人間?
ナツメ レベル1 中立―侍 人間
ニンジャヨシダ レベル1 中立―忍者 人間?
ソウリョヨシダ レベル1 善―僧侶 人間?
デンショウ レベル1 善―司教 ワータヌキ
ユースケ レベル1 善―魔術師 人間
【街はずれ――迷宮の入口にて】
「あのさ、フンドシもアウトなの? すげえ落ち着かねえんだけど」
と、不機嫌なナツメ。
「ダメ! ニンジャとはそういうものでござるよ、ニンニン」
と、ニンジャが真っ裸で胸を張る。
「のう、このニンジャは前列じゃろ。後列のわらわは、冒険の間じゅう、
こやつの尻を見続けることになるのじゃが……」
ワータヌキの少女が、泣きそうな顔で言った。
ダンジョンに入る前から、パーティ崩壊の危機である。
なぜ、こんなことになっているのか?
ウィザードリィの世界において、「忍者」という上級職は、とりわけミステリアスな存在である。
「戦士」に引けを取らない格闘能力に加え、「盗賊」のように宝箱の罠を外したり、鍵のかかった扉をこじ開けたりすることもできる。
さらには、「クリティカルヒット」と「AC低下」という、他職にはまねのできない特殊能力を備えている。
ちなみに「クリティカルヒット」とは、どんなに生命力の高い敵であろうと一撃で首を撥ねて倒す能力であり、「AC低下」は、自身のレベルが上がるたびに、敵からの攻撃を避けやすくなる能力である。
このスペックだけを見れば、忍者はまさしく最強の存在と言えよう。
しかし、「クリティカルヒット」と「AC低下」の能力を発揮するためには、
「動きを妨げるようなものを一切装備してはいけない」という条件がある。
そのため、「忍者は防具を装備しない」=「事実上、全裸」というのは、半ば常識となりつつあるのだ。
「ごあんしんめされよ、おのおのがた」
ニンジャがドヤ顔で言うには――
「拙者、今は駆け出しゆえ、かように無様な生尻を晒しておるが、修行を積めばそんなことはなくなるでござる!」
「へぇ! それは一体全体どうしてだい!?」
アキラが食いついた。
彼は、こうした尾籠で下世話な話が大好きなのだ。
「忍者というものは、修行を積むにつれて、だんだんとその姿を目で捉えるのが難しくなるのでござる」
「ふむふむ」
「例えば、“西風”の位階に達した者は、風を自在に操ることができるようになるのでござる。そうなれば、枯れ葉や砂塵が、絶えず急所をカバーしてくれるのでござるよ」
「そいつぁチラリズムでスリリングだね!」
「さらに修行を積んで“真夏”の位階に達した者は、全身から太陽のような闘気を発することができるようになるのでござる。そこまで至れば、急所は絶えず眩き光に包まれ、何人の目にも映らなくなるのでござる!」
「うふふふっ、素敵じゃないか! いぇ~い!」
「ゐゑ~ゐでござる!」
ハイタッチを決める戦士と忍者。
ナツメが、心底うんざりとした顔でユースケに尋ねた。
「ねえ、ユウちゃん。なんかさ、こう……裏ワザみたいなのもので、なんとかなんないの?」
「……いや、多分、それ以前の問題だと思うんだよね」
ユースケは、ニンジャのステータス画面を確認すると、意を決したように口を開いた。
「ニンジャさん、お話があります」
(続く)




