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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.9.27 みみっちい話

 みなさま、こんにちは。


 突然で恐縮ですが、なんだか自分が嫌になるときってありませんか?


 自分の趣味が「散歩」なことは、以前、このエッセイでもお伝えしたとおり。

 で、その散歩の途中にスーパーマーケットに寄る癖がついたんですよ。


 きっかけは、米価のチェックのためだったんですね。

 やっぱり米は大きな買い物ですから、できるだけ安く買いたいのが人情というものです。

 だから、米を安く売っているお店を、できるだけ幅広く把握しておこうというのが当初の目的だったのですが……


 最近は、特売のジュースを買ったり、半額になった菓子パンを買ったり、なかば買い食いが目的になってまして、ええ。


「中高生か、お前はッ!」


 ふふっ、自分でツッコんでおいて、心が痛いのなんの。

 10月には健康診断があるので、体重を絞らないとカッコ悪いんですけどね。


 さて、そうしてスーパーに寄ったワケですよ。

 ふと果物コーナーを見れば、特売のバナナが一房100円を切ってまして、ええ。


(なんたることか……こりゃ安い……)


 で、悩むわけです。

 ここでバナナを買ってしまうか、否か。


 別に重たいものでもないですし、刺身なんかと違って、すぐに傷むようなものでもありません。

 しかし散歩はですね、できるだけ身軽なほうが絶対に楽しいのです。


(ぐむむむむ……あっちょんぶりけ……)


 もうね、バナナの前で、ブラックジャックのピノコ並みの百面相ですよ。

 傍から見たらすっごい気持ち悪かったと思います。

 オマケに、5分くらい悩んだ挙句、結局買わなかったというていたらく。


 いや、それ自体はいいのです。

 問題は――


(やっぱりバナナを買っておけば良かったのではなかろうか……)


 そんな思いがチラチラして、どうにも散歩に集中できない。


 なんともまあ、情けないことです。

 安いといっても、たかだか2、30円の違いですよ。

 それでこんなにも心乱されるとは、人としてどうなんでしょうね!


 ――それが先日の話。

 

 で、ここからは今朝のこと。

 

 まだ涼しいうちに散歩に出かけたのですよ。

 最寄り駅から二駅くらいの所まで歩いて、スーパーに立ち寄ったんです。

 そこは24時間営業だから、早朝でも開いているんですね。


 そしたら……

 キハダマグロのお刺身が半額になっていて、100g200円くらいだったのです。


 安い……

 最近、お刺身なんてせいぜいビンチョウかカツオしか食べていない……

 そう思ったら、無性に食べたくなってしまったのです。


 しかし、どうする?

 頭の中では、臨時ヨシダ首脳会議が招集されるわけですよ。

 

  ぽわんぽわんぽわ~ん(←妄想にふける音)


--------------------------------------------------------

【脳内ホワイトハウスにて】


「こいつを買ったら、もう快適に散歩を続けることはできない。

 貴殿らの散歩にかける想いは、その程度のものなのか!」


「いやあ、だって食べたいじゃないですか。マグロのお刺身。

 これを逃したら、次はいつ食べられるかわかりませんよ」


「それもバナナの時と違って、およそ200円引きです。

 桁が増えて100円単位の割引ともなると、重みが違いますな」


(ざわ……ざわ……)


「左様、左様。例えば道を歩いていて、10円が落ちていたとする。

 もしかしたら拾わない人もいるかもしれない。

 だが、これが100円ならどうですか?

 ほぼ全ての日本国民が、これを拾い上げることでしょう!」


「しかし……天気予報によれば、これからどんどん気温が上がってくるぞ。

 刺身は()()()()()から、家に帰り着くまでに、傷んでしまうかもしれない。

 そんなことになったら、次の選挙に影響する」


「なに、電車で帰れば――」


「このクサレ脳ミソが」


「何だと!? 聞き捨てならん」


「電車に乗ってしまったら、たった二駅とはいえ200円近くかかる。

 刺身を安く買った意味がなかろうが!」


(ざわ……ざわ……)


「つまり、こういうことだね。ここで刺身を買ってしまったら、できるだけ迅速に、歩きで家まで帰らないといけない」


(ざわ……ざわ……)


「いかにも。われわれは、究極の二択を迫られているのですよ」

--------------------------------------------------------


 ――ちくしょう!

 首脳のわりに、どいつもこいつも貧乏くせえなあ!!


 結局、誘惑に負けて刺身を買ってしまった私は、

 ほとんど競歩のような勢いで、家まで5kmの道のりを駆け抜けましたとさ。


 どんどはれ。

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