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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.9.26 心頭滅却すれば火もまた涼し

【注意:危険なのでマネしないでください】


 みなさま、こんにちは。


 数日前までは、それなりに涼しい日が続いておりまして、とうとう秋がやって来たかとウキウキしていたのですが……


 今日の暑さときたら、これまたいったいどうしたことでしょうか。

 天気予報によれば、最高気温は32℃。8月中旬並みということです。


 ちなみに、気象庁が先日発表した「早期天候情報」によれば、

「10月1日頃から“10年に一度レベル”の高温の可能性」とのこと。

 しばらくは不快な暑さが続くようです。


 うっほほーい!

 いつになったら秋がやってくるんだよッ!

 お天道様は「暑さ寒さも彼岸まで」って言葉を忘れちまったのかーい!!


 ……ただ、まあね。

 私のようなちっぽけな存在が、大自然に文句を言ったって仕方ないわけですよ。

 どんなにのたうち回って叫び声を上げても、暑さに変わりはありませんから。



 そう言えば昔、地理の教科書にこんなことが書いてありました。

「カラハリ砂漠の某部族は、昼は40℃、夜は0℃近くまで下がる過酷な環境を、

ほぼ裸で暮らしている」


 はい、そこでテンションが上がっているあなた!

 大事なのは「ほぼ裸」という個所ではありませんよ!!


 えー、ごほん。私がお伝えしたかったのはですね、

「たかだか32℃の暑さなんて、なんてこたぁない」ということです。


 より厳しい環境を、エアコンや衣服の力を借りずに生活している人がいる。

 同じ人間だ、私にできないはずがあろうか!




 ――というわけで、正午過ぎ。

 最高気温32℃の中、ちょっと買い物に出かけてみました。



  ドドドドドドドドドド……(効果音)


   「買うのは米5㎏!

    それをあえて、自転車を使わずにだッ!」


   ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……(効果音)



 さて、一歩外に踏み出た感想は――


「ん? どうってことねえな」


 それはそうでしょう。ここ数か月、ほぼ体温に等しい猛暑を乗り越えてきたわけですから、32℃ごとき耐えられないはずがありません。


 そうして、備蓄米が置いてあるスーパーまで、30分ほどの道のりをとっとこ歩いていったわけです(あ、ちなみに服はちゃんと着ていますよ)。


 さて、20分くらい経った頃でしょうか。猛烈にだるくなってきました。

 すでに体じゅう汗でびっしょりです。


(い、意外と体力を消耗するじゃない。クッ、どうして自転車で来なかったのさ……バカバカ、アタイのバカッ!)


 それでも、さらに10分後、無事スーパーに到着。

 冷房から出る涼風が、火照った体に染みわたります。


(あああ、もうここに永住してえ~。外に出たくねえ~)


 しかし、昼休みの時間は有限ですからね。

 きりきりと買い物を済ませて、店の外に出たとたん……


 暑さ+米5kgのダブルパンチが、冷房に甘やかされた心身に襲い掛かります。

 早くも朦朧とする視界に、バス停が映りました。

 心の中の悪魔がささやきます。


【バスだよ~。バス使っちゃいなよ~】


 しかし、今日の私のマインドは誇り高き砂漠の民!

 カラハリ砂漠の名に懸けて、32℃ごときに屈するわけにはいかぬのです。


 そんな鋼鉄の意思をもって、来た道を引き返し始めたのですけどね、米5kgは想像以上に重いのですよ……


【お前さん、神奈川県民じゃん。砂漠の民でもなんでもねーだろ】

【それにさ、米袋かついだ砂漠の民とか、聞いたことねえよ】


 悪魔のツッコミが、だんだんキレを増してきました。

 心が弱っている証拠です。


 喝!

 心頭滅却すれば火もまた涼し!


 全ては心の迷い。

 そう自分に言い聞かせて、一歩一歩、前へと進みます。

 するとまた、悪魔のささやきが……


【心頭滅却うんぬん言った坊さん、意地張りすぎて焼け死んだぜ】

【へへ……生きろ、そなたは美しい】


 あ、うん。

 心の中の悪魔が、存外いいやつでした。

 砂漠の民のプライドはどこへやら、

 もう何もかもバカバカしくなりまして、バスで帰りましたとさ。


 どんどはれ。

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