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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.9.25 新人さんが想像以上にぐいぐい迫って来るんだが!?

9月×日

私のお屋敷に同居人が増えた。

どんなタイプかって?

ひとことで言えば――デカい。

手のひらからはみ出すくらいデカい。


9月△日

彼女が想像以上にぐいぐい迫って来る。

物怖じしないタイプみたいで、私がゲームなんかしていると、すぐ横でその様子を観察していたりする。

その距離、わずか30cm。

なんだか落ち着かない。ドキドキする……


9月〇日

最近、屋敷の「古株」が次々と行方不明になっている。

怖い。

そして、台所はいつも静かだ。


9月24日

朝起きたら、彼女が私の顔を覗き込んでいた。

近い! 近いってば!


……てか、どうやってこの部屋に入って来たのさ!?


それを尋ねようとしたら、まるで水が引くようにひゅるひゅるひゅるとドアの下の隙間から出て行ってしまった。

隙間の高さは5mmほどしかないのに……


気が休まらない。



                § § §



 みなさま、こんにちは。

 彼女ことアシダカグモさんのせいで、どうにも落ち着かない吉田サンです。


 ここまでの経緯につきましては、「2025.9.19 秋のホラー 台所の捕食者」をご覧いただくとして……


 結局、この夏は一度しか「あのアレ」を見かけませんでした。

 その点、彼女には深く感謝しております。


 でも、とにかく心臓に良くないのです。


 空き瓶を片付けようとして、その陰から這い出てきた時には、本当にタマシイが身体から飛び出しそうになりましたよ。

 こういうのって「ジャンプスケア(※)」って言うんでしたっけ?

 毎日毎日、強制でリアルなホラーゲームをやっている気分なのです。


 ところで……

 ウィキペディアの「アシダカグモ」の記事には、こんなことが書いてあります。


「本種はテリトリーを持ち、1室に1個体しか生息しない」


 ですので、彼女は台所をテリトリーとして満足してくれるものだとばかり思っていたのです。

 そうであれば、「台所=彼女」「寝室=私」と住みわけができて、顔を合わせるのも最低限で済むじゃないですか。


 けれど、私のアパートは狭いですからね……

 台所と寝室を合わせて “1室” と認識したようです。


 くそっ、なんか腹立つな……


 そして、どうやらワタクシ、随分と彼女に好かれてしまったようなのです。

 夜になると、事あるたびに近くに寄ってくるんですよ。


 手を伸ばせば届くくらいの距離まで近寄ってきます。

 近所の野良猫より、よっぽど人懐っこい。


 朝起きた時、すぐ目の前の壁に貼り付いていたときには、

 ビビり過ぎて「おはよう」を言う余裕もありませんでした。


 さて、そんな自慢話を知り合いにしたらですね、

「もしかしてお前のこと、でっかいゴ〇ブリだと思っているんじゃねえの?」

 そんな負け惜しみを言うんですよ。







 ……いや、なるほど。 


 つまり、オイラはエサか!


 悲しいけど、めちゃくちゃ納得がいきましたとさ。




 どんどはれ。



※……ジャンプスケア

ホラー映画などで、突然大きな音を鳴らしたり、不気味な映像を映したりして、観客を思わず飛び上がらせる(Jump)ことを狙う演出手法。

『バイオハザード(初代)』の最初の方で、犬がガラス窓を破って入ってくるアレ。

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