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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.4.4 月光のミステリー 開幕篇

 前回のあらすじ


 アタクシ、どうして「ムーンライト伝説」をそらで完璧に歌えるのかしら……?

 練習したなんて記憶、まったくなくってよ!?

 恐ろしい、恐ろしいわッ!


(以下しばらく、日●日出志先生のノリでお楽しみください)


 ――どうして自分があの曲を歌えるのか。


 実は、つい先日、封印されていた記憶の扉が開いたのです。


 きっかけが何であったのかは、自分でもはっきりしません。


 けれど、そんなことはどうでもいいことなのです。


 重要なのは、その奥にあったものが、二度と体験したくないような酷薄苛烈な思い出であったということ。


 無意識のうちに、思い出すのを避けていたのでしょう。


 ククク……


 ここまで読み進めてしまったあなた!

 

 あなたにも、私の苦しみを追体験してもらいますよ!!

 


                § § §



 あれは、私がゴリッゴリの社畜だった頃のこと。


 あるとき、いつもお世話になっている「先生」と呼ばれる方をお招きして、親睦会を開催することになったんですね。


 まあ、実質は接待というやつです。


 一次会は無事終了して、二次会も終了、先生がえらく御機嫌だったので、カラオケボックスでの三次会に突入することになりました。


 コミュ障の私には、正直、職場の飲み会とかシンドイのです。

 できれば、早く帰りたい。


 しかし、その日は金曜日でした。

 ですので「明日の仕事に差し支えるから」という言い訳は使えません。


 電車通勤で乗り換えのある人は、幸いです。

「早く出ないと乗り換えが間に合わなくなるので」という鬼札(ジョーカー)を切れますから。


 ところが私は自転車通勤でしたので、それもできません。


 あ、コンプライアンスの観点から申し上げておきますが、私は酒乱のため、接待の時にお酒は飲みません(飲ませてもらえません)。

 なのに会費は同じとかふざけん(以下省略)


 それはさておき――

 時刻はすでに24時近く。○○線の終電の時間が近づいてきました。

 参加者の大半が○○線を利用しているため、これが最終ライン(お開きの合図)となります。


 皆が帰り支度を始めたそのとき、ベロンベロンに酔っぱらった先生がこんなことを言い出したのです。


「あ~ごめん、私、もうとっくに終電間に合わないや~

 誰か始発まで付き合ってよ~(てへぺろ★)」


 刹那、先生の声が聞こえなかったふりをして、

 周りの人たちが一斉にいなくなったのはじつに滑稽でした。


 会場に残されたのは、先生と飲み会の幹事である先輩、そして私。

 私が逃げられなかったのは、先輩が私の腕をがっちり握っていたからです。


「吉田さぁぁん、置いていかないでくれよぉぉ、こんど昼メシおごるからさぁぁ」


 くっ、こいつ、万力のようなパワーでッ……

 放せっ、放せっ。

 しかし先輩は、死んでも私の手を放さないといった様子。


 ――こうして、惨劇が幕を開けたのでございます。


(続く)

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