2025.9.1 それがいけなかった
「あの子、やればできるのに」
そんな言葉をときどき耳にします。
「やればできる――そんなのは、できないのと同じだ」
そんな言葉もあったりしますね。
……いやね、どうにもやる気が出ないときって、あるんですよ。
自分の場合、それが顕著なのは皿洗いです。
家事だと、料理はけっこう好きですし、掃除洗濯も嫌いじゃない。
でも、皿洗いだけはどうにも気が進まない。
なんでかなあって思ったら、理由は単純明快。
だいたいお腹いっぱいになっているからなんですよね。
多分、空腹時なら皿洗いもそこまで苦にならないと思うのです。
しかし、「洗い物がある」即ち「食事を済ませた」ということなので……
そんなの、いかんともしがたいじゃないですか。
私は悪くない!
食洗機を導入しようか真面目に考えたこともあります。
ただ、我が家のキッチンは狭い。本当に狭い。
ネコバスの額ほどしかありません(←割と正確な情景描写)。
ここだけの話、食材を切るとき、まな板を置く場所にすら困るくらい。
唯一置けそうな場所といえば冷蔵庫の上ですが、そこにはすでに電子レンジ大明神が鎮座しておりますので、新たな家電を迎え入れることなど不可能なのです。
……って、大げさに言いましたけどね、あくまで侘しい一人暮らし。一度の洗い物の量など、たかが知れているんですよ。
けれど、やる気がない状態では重労働。
効率よくやれば5分、いや3分もかからない作業なのに、ゾンビのような精神状態では、いたずらに時間ばかりが過ぎていく。
(あれ、ゾンビに精神ってあるのかな? ふふ、おかしみ……)
はいはい、そんなこと考えているから手が止まるんですよ。
頭が働かないなら手だけでも動かす。ほら、ほらほら――
がちゃーん
(ガラスのコップは、手から滑り落ちる運命。ふふ、かなしみ……)
そんな、ある日。
なけなしの気力を振り絞って皿洗いを始めた途端、猛烈な勢いで「自然に呼ばれた」ことがありました。
しかし、手には既に泡まみれのスポンジが……
ええい、ままよ!
クネクネしながら猛烈な勢いで洗い物を終え、トイレに駆け込みます。
そして、用を足しながら、思ったのです。
(あれ……これだったらいけるんじゃないの?)
なるほど、生理的欲求というのは強力な動機付けになりますからね。
それ以来、自然に呼ばれたタイミングで皿洗いを始めることにしたワタクシ。
しかし、それがいけなかった。




