2025.4.3 月光のミステリー 出題篇
今から数年前のこと、
めずらしく、しこたま酒を飲んだ帰り道――
空をふと見上げてみれば、それはそれは綺麗な月が出ておりました。
すると、頭の中に、どこかで聞いたような曲のイントロが流れてきたのです。
(なんて曲だったかなあ……)
曲名は思い出せなくとも、歌詞が自然と口をついて出てきます。
「ごめんね~♪~♪」
酒が入っていたこともあり、私の歌は止まりません。
サビにもなれば、自然と声も大きくなる。
「つぅきぃのぉ~♪~♪」
音楽の5段階評価はいつだって「2」、音痴であることは自覚しております。
だけど、「歌はこころ!」
……違うかい?(すっごいドヤ顔)
リピートで2・3回くらい歌い終わった頃、団地の自室までたどり着きました。
とりあえずシャワーを浴びると、意識もはっきりしてきたので、あの歌のタイトルが何であったのか、ネットで検索してみたのです。
はじき出された回答は……
「ムーンライト伝説」
言わずと知れたアニメ「セーラームーン」の主題歌ですね!
……どさり(床に崩れ落ちる音)
こいつぁ名曲ですよ。
確かに名曲だと思いますよ。
それはそうなんだけどさ――
私のようにうすよごれた存在が――
お外で大声で歌っていいような曲じゃないんですよ!
「歌はこころ」とかそういうの以前に、イメージの問題ってのがあるでしょうが!
嗚呼!
イントロに「パヤパヤ」のコーラスまで入れちまったよ~ッ!
それは「恋のフーガ」なんだよ~ッ!
イヤーッ 恥ずかし~ッ!
グワーッ 恥ずかし~ッ!
ゼッタイにご近所にも聞かれちまったよ~ッ!
団地は噂が広まるのが速いんだよ~ッ!
うぎゃぎゃぎゃおーす!(断末魔の叫び)
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吉田院が最後に思うこと…
それは、ご近所の評判の事ではなかった
ご近所の評判のことを深く思ってはいたが、
最後に浮かんだ「奇妙な疑問」の前に、
ご近所の評判への思いは頭から吹っ飛んだ
(ナレーション:大〇透)
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(あれ、どうして私は、「ムーンライト伝説」をそらで完璧に歌えるんだろう?)
「セーラームーン」の漫画の方はがっつり読んだんですよ。
いまだにおさぶー氏の亜美ちゃん漫画のことも憶えてますし、
「コードネームはセーラーV」までちゃんとコンプしてますからね。
でも、アニメ版の方はまともに見た記憶がないんだよなあ。
どんなに記憶の糸をたどってみても、心当たりがない。
ミステリーですよ、こいつは……。
(続く)




