2025.8.19 真夏のホラー 「祟り」
みなさま、こんにちは……
ごあいさつもそこそこ、まこと恐縮なのですが、どうにも体と頭が重いのです。
別に熱があるわけでもない。
睡眠が足りていないわけでもない。
なのに、すっきりしない。
うっかりミスもやたらに多いですし、これは一体……
まあ、原因はなんとなく想像がついているんですけどね。
――祟りです。
§ § §
【BGM:Twilight Zoneのイントロ(by Manhattan Transfer)】
あれは、お盆休みの中盤くらいだったでしょうか。
部屋でふんぞり返ってゲームをしていると、どうにも鼻の中に違和感がある。
鼻をかむと、しばらくはおさまるのですが、すぐにもとに戻ってしまう。
で、鏡に向かって鼻の中を覗いてみたのですが、特に異常は見当たりません。
(暗くて見えないあたりに、何かあるのかもしれない)
そこで、ライトで照らしてよく観察をしてみたのです。そうしたら……
やたら目立つ立派な鼻毛を見つけたのですよ!
キャ~ッ!?(←スタジオのエキストラ)
そいつは鼻腔上部の死角に生えていたので、これまで切られることもなく、順調に成長してきたのでしょうね。それがとうとう鼻の穴の下部まで届いてしまい、チクチクしていた――そういうわけだったのです。
ほとんど無意識のうちに、それを毛抜きで引っこ抜いていました。ぶちっ。
フゴッ(←刺激に悶える声)
見れば、長さは1.5cm程度で、いままでに見たことがないような太さでした。
(こんなものが、自分の鼻の中で成長していただなんて……)
気味悪さもありましたが、それ以上に生命の力強さを感じたワタクシ。
そいつを親指とひとさし指でつまんで、そのしなやかさを楽しみながら、
「鼻毛賛歌(作詞・作曲:A.YOSHIDA)」を歌ったり踊ったりしていたのですが、30秒ほどで飽きて、フッと吹き飛ばしてしまいました。
――いま思えば、これがいけなかった。
たとえ己が鼻毛とはいえ、粗末に扱ってはいけなかったのです。
§ § §
みなさまは、樹木が祟りを為すという話を聞いたことがないでしょうか?
「齢を経た樹木には魂(いわゆる木霊)が宿るので、粗末に扱ってはいけない」
「仮にそういったものを伐採する際には、お鎮めするための儀式が必要である」
……もう、私の言いたいことはお分かりでしょう。
あの年を経た鼻毛には、おそらく「鼻毛霊」が宿っていたのです!
キャ~ッ!?(←スタジオのエキストラ)
私の体調不良の原因は、この妖霊のせいに違いありません。
……え? 正気かって?
正気も正気。
だって消去法で考えれば、それ以外に原因がありえないのですから。
それにしても、私はどうすればよかったのでしょうね。
抜く前に鶴岡八幡宮に行って、お祓いでもすればよかったのでしょうか?
でもねえ、そんな理由でお祓いを依頼したら、正気を疑われてしまいますよ。
……え? ですから、正気なんですよ私は。
自分のことを「おかしい」なんて言う「おかしい人」はいませんからね。
いやあ、それにしても、困ったなあ……。




