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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.8.12 おしゃれ剣士ホリゴメ①

 「おしゃれ」とは、なかなかに難しいものです。


 いつの時代にも、ファッションリーダーというものが存在しますよね。

 現代においては、有名芸能人であったり、近頃では、ファッション系インフルエンサーと呼ばれる方々もいます。


 単純な私は、

「じゃあ、その人たちの格好を丸ごと真似すればいいのかな」

 と思ってしまうのですが、それでは駄目らしい。


 曰く――

「量産型でいいのか!」

「“マネキン買い”は個性の喪失である!」


 かといって、奇抜な格好さえすればいいというわけではないようです。

 今から50年前、当時の私がとつぜん未来のオシャレに目覚めて、ダメージデニムやルーズソックスを履いていたと仮定しましょう。

 

 その場合、はたして世の人に「おしゃれ」だと認識してもらえたでしょうか?


 ……難しかったでしょうね。

 「だらしがない人」と思われるのがせいぜいだったに違いありません。


 人と同じなのはダサい。

 かと言って、人と違い過ぎるのも、おかしい。

 

 うむむ、なんだかなあ。



                § § §



 そういえば、今から10年以上前に、とあるMMORPGにハマっておりました。

 MMORPGってのは、「多人数同時参加型オンラインRPG」のことであります。

 顔も知らない連中が、ネット上で協力して狩りをしたり、ギルド戦をしたりするアレですね。


 さて、そうして人が集まるところには、必ず英雄が現れるものです。


「輝くフンドシ(ギルド名)の剣士ホリゴメは、1分で“仏壇ドラゴン”のHPを削り切ったらしい」

「すげー!」


「ぐなしのみそしる(ギルド名)の魔導士ヨシオちゃん18禁は、たった一人で攻城戦を守り切ったらしい」

「すげー!」


 MMORPGにごとに差があるとは思いますが、私の遊んでいたゲームの英雄は、だいたいが「火力職」でした。


 そのため、火力職向けの優れた装備は、価値が天井知らずで高騰します。

 

 それを入手するためには、「廃人」と呼ばれるほどゲームに時間を費やしたうえで、いわゆる「ガチャ」にリアルマネーをつぎ込む必要がありました。


 一方で私は、「廃人」になるだけの時間的余裕も、リアルマネーもございません。現実世界で英雄になれないことはわかりきっていましたが、ゲームの中ですらモブ扱いとは!


 ……悔しい、激烈に悔しい!

 人生で一番悔しかった瞬間かもしれません。

 私のようなコミュ障の人間にとっては、仮想空間こそが現実なのです。


 わからない?

 ならばわかられよ!

 心で感じ取って欲しいのです、非リア充の慟哭を!


 うほぉぉぉぉん!


 (つづく)

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