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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.8.11 バステ「石化」体験アリ(後編)

 それから数年後、町で自転車を走らせていたときのこと。


 ――ずぼっ


 自転車の前輪が、突如地面にめり込みました。

 慌てて足をつくと、その足もやはり、ずぼっとめり込みます。


 何が起きたのか全く理解できず、呆然とする私。

 そこに慌てて警備員さんがやってきて、自転車ごと引っ張り出してくれました。


 そう、その道は工事中で、「コンクリート塗りたて」ってやつだったんですね!


 本来ならば、そこに誘導の警備員さんがいなくてはならなかったのですが、何かの事情で、ほんの少しだけその場所から離れていたそうなのです。


 さらに運の悪いことには、そこに反射神経ゼロの私が通りがかってしまった。


 いやあ、この流れるような不幸の連続コンボ。

 さすがはアンハッピーなことに定評がある吉田サンです!




 すると、騒ぎを聞きつけて、現場監督みたいな人が駆け寄ってきました。

 大声で警備員さんを叱りつけます。


「ちゃんと誘導しなきゃだめじゃないか! このままじゃ、この人も自転車もガチガチになってな、ガチガチになってなっ! う、う、う、動けなくなるぞーッ!!」


 なんだか、めちゃめちゃ焦っていました。

 ガチガチになって、動けなくなるそうです。

 「からだがじょじょにせきかする(by FF3)」状態ってことですか、これ?


 それから現場監督は、作業員さんを数名連れてきました。

 各々の手には、蛇口につながったホースが握られています。


「この度はまことに申し訳ございませんでした! このままだとコンクリートが固まってしまって大変なことになりますので、すぐに水で洗い流す必要があります。冷たいかもしれませんが、すこしだけ我慢してください!」


 現場監督がそう言って頭を下げると、作業員さんが一斉に、コンクリ漬けになった私の足と自転車を水で洗い流し始めたんですね。


「あ、あの自分でできるから大丈夫ですよ」

「いえ、そういうわけにはいきません。御迷惑をおかけしたのはこちらの責任ですから。どうか任せてください」


 客観的に見れば、事態は深刻なのでしょう。

 でも……マッチョな作業員さんたちに寄ってたかって足を洗われている吉田って、すっごいシュールな絵面じゃないですか。

 おまけにその瞬間、必死にコンクリートをばらまいているメデューサ様のことを思い出しちゃったんですね。


「アクマは、コンクリートをまいた」

「コンクリートは かたまらなかった」


 じわじわと笑いがこみあげてきます。

 もう、おかしくておかしくてたまりません。

 でも、目の前では作業員さんが必死に私の足を洗ってくださっているわけで……

 

 笑うに笑えず、ちいかわのような顔で震えているしかありませんでしたとさ。




 どんとはれ。

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