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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.8.8 転ばぬ先の杖につまずく(前編)

 みなさん、こんにちは。


 人間は、一度痛い目に遭うと(そんなことは二度とごめんだ)と思います。

 そして、備えるようになるのです――



               § § §



 ちょっと想像してみてください。

 久しぶりに味噌汁を作ろうと思ったら、味噌が微妙に足りない惨状を。

 申し訳程度に残ってはいるものの、醤油や塩ではとうてい補えないレベル。


 だから、前回味噌を使った時の自分に説教してやったのですよ。


「おまえっ、その残量では、味噌汁一食分にもならんのは見てわかるだろう!

どうして買い足しておかないのか―ッ!!」


 すると、当時の吉田がヘラヘラと答えるのです。


「いやぁ、味噌汁には足りなくても、味噌ご飯にするんだったら一回分くらいは残っているじゃないですか。で、それを食べた後に補充すればいいかな~って。

……あ、もしかして未来そっちでは味噌が足りなくなってます? やっぱり!

嫌な予感がしていたんだ。オイラのことだから、足りなくなっていたことを忘れて、味噌汁でも作ろうとするんじゃないかな~って、ぷーくすくす。

自分を信用するとか、愚かしいにもほどがありますよwww」


 あああっ!

 よくもまあぬけぬけとそんなことを言えたものだな!!

 心底自分に腹が立つのです!!!



               § § §



 こんな時、ひとむかし前であれば、ご近所に借りに行けばよかった。

 しかし、人間関係が希薄になった現在、隣人の顔すら知らぬのですよ。


 ええい、ならば近所のスーパーにひとっ走り……いや、だめだ。

 味噌は案外高い。

 できれば安い店で買いたい。


 しかし、近所で一番味噌が安い店は、そこそこ距離があるのです。

 自転車で往復30分くらいかかります。


 なんとなくドアをあけて、外をうかがう私。

 まず、真夏のイカレた西日が目を蹂躙します。


 じゅわわわわ~っ(眼球の水分が沸騰する音)


 ぐああああああ~ッ!

 熱いぜ熱いぜ熱くて死ぬぜ~ッ!!


 それでも外に一歩踏み出したとたん、今度は熱風が吹きつけてきます。

 熱砂を渡る、乾いた風……

 それは、シリア砂漠で吹き荒れていた砂嵐とそっくりでした。

 ――誰かが近所で魔王パズズでも召喚したのでしょうか?


 この中、味噌を買うためだけに外に出るだと……

 だめだ、できねえ……

 そんな気力はどこにも残ってねえ……


 しょうがないので、味噌汁は澄まし汁になりました。

 ちゃんと昆布とカツオ節の合わせ出汁を取りましたから、それはそれで美味しかったのは、まあ、よかった。

 〆はご飯にかけて、出汁茶漬けとしていただきますかね。

 暑くて食欲がイマイチであっても、これならいけちゃいますよ。


 ……しかし!

 今日食べたかったのは味噌汁なのです。

 ミソスープなのです。

 けっしてソルトスープなどではなかった!


 腹の底から湧き上がる負の感情が、五臓六腑を苛みます。


 毒を持つ生物の体は、大抵、自らの毒では傷つかないようになっています。

 しかし、人の抱く「怒り」という名の毒は、己の身体すらも蝕むのです――


                      (勢いに任せて、続く!)

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