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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.7.12 鼻のあぶら

 いつのころからでしょうか。

 鼻のあぶらが気になるようになりました。


 テカテカ テカテカ


 いくらあぶらとり紙でぬぐっても、すぐに元どおりになります。


(よくもまあ、これだけ湧き出て来るものだ)


 我ながらあきれてしまいます。

 そんな折、友人のМ君がこんなことを言い出しました。


「最近さ、鼻のあぶらがすごくてさ」

「ああ、私も。やんなるよねえ」

「でさ、あぶらって言うには燃えるのかなと思って、集めて燃やしてみたのよ」

「うへえ。気持ち悪いこと、するね」

「そしたらさ、ぱちぱちぱちって、凄くいい音を出すのね」

「……」

「それで、さ。いいことを思いついたんだ」

「絶対にろくでもないことでしょ。千円賭けてもいい」

「鼻のあぶらで、線香花火を作ったらどうかなって」

「どうもこうもねえよ」

「でね、その線香花火のパッケージにね」

「その話、まだ続くの?」

「もう、ここからが大事なんだから、ちゃんと聞いてよ!」

「わかったわかった……それでパッケージに何よ」

「あぶらをとった人の顔写真を貼る」

「……はあ?」

「美男美女のはプレミアがついて、お値段高めに設定!」

「……」


 これは、私が二十歳になるかならないかのお話です。

 まさか、鼻のあぶらを金儲けのタネにするような人がいようとは……


 ところが、世間は広い。

 もっと昔から、この鼻のあぶらを商業利用している話があるのです。


 以前、某百貨店でアルバイトをしていたことがありました。

 そこで、物産展のスタッフをしたことがあったんですね。

 で、そのときの物産展のテーマが「○○箪笥」。

 「○○」には某所の地名が入ります。いわゆる伝統工芸品というやつです。


「おい、見ろよこの箪笥。100万円超えてるぜ!」

「こんなの誰が買うんだよwww」

「でもさ、やっぱなんというか、いいよなあ。こんなのが家にあったらいいなあ」


 バイト仲間がそんなことを言い合っています。


「ほら、この金具の細工とかいいじゃん。光沢もシブいよ」

「ああ、わかる! なんか重みがあるよな!」


 その言葉を聞いたとたん、「ぐふぅ」と変な声が出てしまいました。


「ん、どうしたの吉田さん?」

「いや……なんでもないです……」


 実はですね、この「○○箪笥」、私の実家のある町で作っているんですよ。

 工房もめっちゃ近くにありました。

 作った箪笥職人のことも知っています。

 その道では有名な人らしいのですが、はたから見たらただの酒飲みの爺ちゃん。

 で、その匠が言っていたんですよ。


「○○箪笥の金具はな、鼻のあぶらで磨いて仕上げるんだ」

「オレだって、色々なオイルを試してみたけど、人間の鼻のあぶら以上に良く仕上がるものは見つからなかった」


 ――もちろん、酔っ払いのホラかもしれませんけどね。


 どんどはれ

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