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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.710 夜の運動会場

 みなさん、こんにちは。


 ええとですね、私、霊園というものが好きなんです。

 多磨霊園とか青山霊園とか――そういったアレです。


 別に、墓石に興奮する特殊性癖の持ち主ではないのですよ。

 霊園という空間が好きなのです。


 それはなぜか?



【●静かである】

 今の時代、静穏な場所というのは、とても貴重なのです。

 自宅で目を閉じてみる。

 例え夜であっても、ひっきりなしに音が聞こえてきます。

 エアコンの音、冷蔵庫の音、外を走る車の音……。


 その点、お墓ってのは昼間であってもだいたい静かです。


 もし同レベルの静けさを味わおうとしたら、ちょっとした山の中まで行かないといけないくらい。

 そんな贅沢を街中で享受できる。


 コスパ、いいですよね。



【●線香の匂いがタダで楽しめる】

 これまた好きなんですよ、線香の匂いが。


「だったら自分の家で焚けばよいのでは?」

 と言うあなた。それはごもっとも。

 けれども……


 ・アパートの部屋は狭いので、匂いが部屋に染みつく。

 ・仏壇も無いのに、線香の匂いがするのは怖い。

 ・同居する存在が嫌がってポルターガイストを起こすかもしれない。

 ・うっかり吉田による火の不始末で、アパートが灰燼に帰す可能性がある。

 ・線香ってば結構高い。


 特に最後、こればっかりはいかんともしがたい。ない袖は振れぬのです。

 だから、線香の匂いの中毒症状が出たら、霊園に行く。


 コスパ、いいですよね。



【●ドラマがある】

「コスパ、コスパ、コスパ! 騎士として恥ずかしくないのか!」

「騎士以外の発言は認めない!」


 ……とまあ茶番はさておき、コスパだけではない魅力が霊園にはある。

 お墓を見て回っていると、色々な発見があるのです。


 ・いつも野良猫たちが集っているお墓がある。Why?

 ・辞世の句や座右の銘が刻んであったりして、故人の生前が偲ばれる。

 ・小さいピラミッドだったり、オブジェだったり、ユニークな墓石が面白い。

 ・一族の戒名が居並ぶ中で、一人だけランクが高いのはなぜ!?


「そんな不純な動機で墓所を訪れるとは、この罰当たりが!」

 そんな声もあるかもしれません。

 ただ、墓というのは、ここに誰かが眠っているとのサインなのです。

 人にそのことを認識してもらうためにあるのです。

 誰にも見てもらえぬより、せめて私だけでも心に刻み込む。

 これも、立派な供養と言えるのではないでしょうか。


 ……なんて、ただの野次馬根性なんですけどね。


 まあまあ、いいじゃないですか。

 もし自分が霊になったら、吉田みたいな不届き者に「宝くじが外れる」みたいな地味な祟りを下す。

 泉下でのいい退屈しのぎになると思うのですよ。


 ――どんどはれ。

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