2025.7.8 G戦場アノアレ
ポンポコポン☆ ポンポコポン☆
右も左ごきげんよう☆
はぁ……。
それにしても、今回ばかりは気が進まないのじゃ……。
実はの、この話については宿主が断固執筆拒否をしてしまっておっての、わらわ(※)が代筆することになったのじゃ。
そうそう、今日は黒くてカサカサいうあのアレの話なので、
苦手な人はそっとブラウザバックがおすすめなのじゃ。
わらわとて、出くわしたら「いいいいいいっ!?」となっちゃうくらいには苦手なのじゃがな、あのアレ……。
§ § §
きっかけは一週間ほど前のことじゃった。
たまたま、ちっちゃい虫が床の上を歩いているのを見つけたのじゃ。
特徴的な白い横線、うん、間違いなく「クロあのアレ」の幼虫じゃな。
最悪の事態なのじゃ。
それだったら、黒光りする成虫とばったり対面してあたふたしたほうがまだマシだったのじゃ。
あのアレの幼虫は、飛ぶことができないので、行動範囲は極々せまい。
つまり、室内のどこかで卵が孵ったということになる。
そうなると、退治するのはほんとうにたいへんなのじゃ。
そのときの宿主の絶望ときたら、それはすごいものじゃった……
このあぱぁとに引っ越してきてから三度目の夏なのじゃが、今まで一度もあのアレに出くわしたことがなかったからの。
脳内にいる“吉田の住人”たちも大騒ぎじゃ。
「自分の下あたりで繁殖してるかもしれないっすね」と洗濯機。
「調理場の掃除がいい加減だから、あのアレに昆布をかじられるようなことになるのだっ!」と雄山。
「じょうじ……じょうじ!」――って、おぬしはだめじゃ! 去ねや去ねや、縁起でもない!!
とまあ、それはさておき……。
この時点で宿主は呆然自失。過去のトラウマで、あのアレだけは苦手としておるのじゃ。
しょうがないので、わらわは宿主の体をしびびびび~と操縦して、お薬屋まで買い物に出かけた。
――買って来たのは「ブラック●ャップ」と「ゴ●ジェットプロ」
少々値は張るがしょうがない。今年の夏は戦になることが決定したようなもの。装備に金を惜しんではならぬのじゃ。
で、殺虫剤を片手に流しの下だの、冷蔵庫の後ろだのをちぇっくしつつ、毒餌をしかけていったのじゃ。
ふだん開けない抽斗なんぞを引いたとたん、アレが飛び出して来たらとヒヤヒヤものじゃったが、結局、何事もなく終わった。幼虫もまったく見当たらんかったしの。
(もしかしたら、1匹だけたまたま紛れ込んだのかもしれん……)
そんな淡い期待を胸に抱いたのじゃが、もちろんこれはふらぐというやつなのじゃ。ぽんぽこぽ~ん(泣)
§ § §
それから数日は何事もなかった。
ところが、おとといのことじゃ。
突如、吉田の脳内にあらぁとが鳴り響いたのじゃ。
次の瞬間、わらわは強制的に表人格の椅子に座らされておった。
異常事態じゃ!
異常事態なのじゃ!!
ポンポコポン☆ ポンポコポン☆
そして、視覚がわらわと繋がった瞬間――
「いいいいいいっ!?」
映し出されたのは玄関、正面の戸に、それはもうお手本のような「クロあのアレ」が止まっておったのじゃ!
宿主ぃぃぃぃぃ!
おぬし、都合の悪いことを全部こっちに回すのはやめるのじゃあああ!
――と、嘆いてみても始まらぬ。
こんなこともあろうかと思って「ゴ●ジェットプロ」は、寝室と台所に一本ずつ置いてあるのじゃ。この位置なら、台所の方のやつにすぐ手が届く。
逃げられぬよう落ち着いて、そっと殺虫剤の缶を手に取る。
そして狙いを定めて……
ぶしゅううわぁぁ(殺虫剤を吹きかける音)
がささささっ!!
もちろん、あのアレだって黙ってはおらぬ。
お得意の特攻を仕掛けてきおった。
「ひょえええええ~!!」
腰砕けになりながらも何とか第二射。
それを浴びて、冷蔵庫の下に逃げ込むあのアレ!
ううう……怖いのじゃぁ……怖いのじゃぁ……
しかし、既に決着はついておった。
ヤツが、生きて冷蔵庫の下から出てくることはなかったのじゃ。
§ § §
冷蔵庫の下からヤツの死骸をかき出しながら、考えた。
この夏は、あとどれだけヤツらと戦わなくてはならぬのだろうと。
成虫も幼虫もいたということは、この部屋のどこかに巣ができている可能性が極めて高い。
ブラック●ャップがうまく効いてくれればよいが、楽観視はできんのじゃ……。
あゝ……気分が重いのう。
どんど曇り、なのじゃ。
※わらわ
吉田晶の脳内に潜む人格の一つ。齢を経た雌狸。あざとい。
最近は非常事態担当となりつつある。
そしてこのたびめでたく「あのアレ担当大臣」の座もゲットした。
「そんな政権、とっとと潰れてしまえなのじゃ! ポンポコポン(怒)」




