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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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102/260

2025.6.28 振り返れば100

 脳内帝国ホテル「駝鳥の間」――


 煌めくストロボの嵐。

 金屏風がそれを反射して、周囲は真白き闇に包まれたようである。

 

いったい、何があったのだろうか……。




「『チラシの裏の裏には書けない』100回記念、おめでとうございます」


 ぱしゃぱしゃぱしゃ(シャッターを切る音)


「……ありがとうございます」


 ぱしゃぱしゃぱしゃ(シャッターを切る音)


「どうしました? 元気がないじゃないですか」

「だってさ、もう102回目なんだよ。プロポーズだってワンちゃんだって、許されるのはせいぜい101回目までだろ……」

「恐縮です! どうしてこんなことになったのでしょう?」

「……コメントで指摘されるまで、100回越えたって気が付かなかったから」

「いえ、そうではなくて、なぜ100回を見落としていたかということです」

「……毎日書くのが習慣と化していたから、わざわざ回数なんて見てなかった」

「すばらしいですね!」

「そいつは、どうも」


 ぱしゃぱしゃぱしゃ(シャッターを切る音)


「吉田さんは、この連載が一ヶ月を迎えたとき、こんな目標を立てています。

【「裏裏」を毎回1時間で書き上げられるようにする】

 ――どうでしょう、無事達成できましたでしょうか」


「……」


「どうでしょう、この目標は達成できましたでしょうか」


「……すいません。無理でした」


「具体的には、どのような状況ですか」

「多分、書くスピードは上がっている。前は1時間あたり原稿用紙1枚分くらいだったけど、今は原稿用紙2枚分くらいになっている気がする」

「それは素晴らしい! あとちょっとで目標達成じゃないですか!」

「でもネタ切れが深刻で、そっちに時間を取られるから、書き上げるまでの時間はあんまり変わらない。毎日PCの前に座っている時間が増えたせいで、外の世界と触れ合う機会が減ったからネタも入ってこない。悪循環ですよ」

「頑張ってください!」


「……ついこの前も、『サルをシャルと言い換えるとカッコよくなる法則』というネタを思いついたんだけどね」

「は、はあ」

「例えば、『サルモネラ菌』が『シャルモネラ菌』になったら、()()()()()が増すでしょう?」

「は、はあ」

「『サル山』が『シャル山』になってごらんなさいよ。まるで賢者が潜む霊峰のようではないですか!」

「は、はあ」

「こんなことを半日くらい考えていたんですけどね、ふと冷静になってみるとぜんぜん面白くないのよ」

「でしょうね」

「で、このネタをボツにして、時計をみたらもう午前2時、

走れない狼たちがさまよっちゃっている時間帯ですよ!? どうすんのさ!?

シャルものは追わず! な~んちゃって、あはははははは――」


「(アカン)はい! そろそろ時間となりますので、読者のみなさまに向けて何か一言お願いします」



               § § §



 みなさま、こんにちは。

 この度は100回記念を逃してしまい、まことに恐縮です……。


 そんなポンコツな私がここまで書き続けることができたのは、いま、こうしてこの文章を読んでくださっているあなたがいたからであります。


 ほんとうに、ありがとうございます!


 この「チラシの裏の裏には書けない」、もうしばらく続けるつもりでおりますので、今後ともなにとぞよろしくお願い申し上げます。






「ちょっと真面目すぎませんか? 読者はこういうの求めていないと思いますが」

「こういうお礼の言葉は、真面目なぐらいがいいのッ!」

「恐縮です!」

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