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チラシの裏の裏には書けない  作者: 吉田 晶


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2025.6.27 引けぬ戦

 近所のオー●ーに買い物に行った時のこと。

 さて、この日はお目当てのものが四つありました。


 一つ目は、お蕎麦(乾麺)。

 暑くなると食べる機会が増えますからね。一気に二袋買ってしまいましょう。


 二つ目は……おかか。

 そうそう、蕎麦つゆを作るときに使い切ってしまっていたのです。


 三つ目は…………トマト。

 今の時期は美味しいし安いですから、買わない理由がありません。

 なんだか最近、毎日食べている気がするなあ。


 四つ目は………………四つ目は、なんだっけ?

 あー、あれですよ、あれ……なんだっけ?

 食材なんです。それは間違いない。間違いないのですが……あれ?







  ドドドドドドドドド…………(効果音)


   「俺は今、スタンド攻撃を受けているッ!」


      ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………(効果音)




 ありましたよね、そんなスタンド。

 そいつに触られると、物事を「三つ」までしか覚えられなくなってしまう。


 家を出るときに「買わなきゃいけないものはたったの四つだけだから、メモなんて要らんでしょ」って、油断していたのが悪かった。

 能力者(※)として覚醒したからには、いつ、どこで能力バトルになるかわからないのです。

 常在戦場、その気持ちを忘れた先に待っているものは「暗く冷たい眠り」……

 

 はい、画面の前のあなた。ちゃんと聞こえていますよ。

「忘れっぽいのは生まれつきなんじゃねえの?」なんて言わない!

 これはスタンド攻撃なのです。いいね?


 とまあ、茶番はさておき……。


 例えばこの四つ目の品が、電球とか殺虫剤といった()()()()()()()()()であったなら、「思い出せないのもしょうがないね」と諦めがつくのです。

 しかし、食材ということまでは思い出してしまっている。だとすれば、せっかくオー●ーにいるのに、これを買わないのはもったいない……

 自分のことだからよくわかるのですけど、これ、思い出せないとメンタル的に凹むこと間違いなし。「この負け方は後を引く」というやつです。


 よって、私に残されている選択肢は、「今ここで思い出す」のみ――


 さあさ、背後は剣が峰。

 引けぬ戦が、ここにある。


 まず、思い返してみましょう。

 昨日はカレーを作ったのでした。

 よって、目当ての食材はご飯のおかずになるものではありません。


 ……あと2、3日はカレーが続くわけですからね。

 

 そして、おそらくはカレーを作る際に使ったもの、

 さらには保存が利くものだと思われます。


 とすると、肉だの玉ねぎだのではない。

 桃缶は特売の日に買いだめすることにしている。カレールーはまだ残りがある。

 調味料は……特に切らしていない。コンソメキューブでもない……


 ああ……だめだ。どうしても思い出せません。

 そこで私はプライドを捨て、最終手段をとることにしました。


 作戦名(コードネーム)「ファルコンアイ」


 ――まあ、スーパーの棚を片っ端から見て回るだけなんですけどね。(泣)


 それから5分後、万引きGメンに目を付けられないかヒヤヒヤしながらたどりついた正解は、玉ねぎを炒めるときに使うバターでした。


 なるほど、思い出せないはずです。

 毎日は使わないし、調味料か油かも微妙だもんな……アイツ。



 

 どんどはれ。

※……「2025.6.8 OR6A2 」参照

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