ここにいることが罪
悪人はいないと分かった上で非難できますか?
私は他の人が1日で終わる仕事を2日かかって終わらせていた。知ってる前提で説明されるうえ、社員教育も十分でなかった。そのため、私は自分のタスクを周りから遅れを取らないように毎日残業をしていたんだ。
というと、おじいさんは頷き、そうだな、と相槌をうってくれた。私は話を続けた。
なんとか首の皮一枚でやっていたんだ。残業をしなくてもタスクをこなせる人たちが羨ましかった。
上司に残業代をもらうために通常の仕事の手を抜いて、わざわざ残業をしていると疑われたこともある。
それでも私はなんとか頑張れたんだ。それはこんな私にも優しくしてくれる人がいたからだ。
その人は仕事で私の工程の次を任されている人で、私が困難に向き合っているときに、手伝ってくれたり教えてくれたりする人だった。私はその人がいてくれることだけが救いだった。
そんな中、私の作業が遅れて納品が間に合わなかったことがある。その時上司は私に本当に全力で取り組んだのかと怒鳴ってきた。私は何日も残業し、仕事を持ち帰り徹夜を繰り返していたので、涙を流しながら「全力でやりましたができませんでした」と自分の不甲斐なさを恨み震えながら謝った。
上司は顔色を一つも変えず、わかった、お前が本当に全力でタスクに向き合っているのか監視するからなと言い放った。それからも私は今まで通りの残業の毎日が続いていた。
そうか、だから死ぬような勢いでパソコンにかじりついていたんだな、とおじさんが口を挟んだ。私は小さく頷いた。おじさんは短くなったタバコを外階段の鉄板にすりつぶし、新しいタバコに火をつけた. 流石にしんどいだろ、休ませてくれとか言わなかったのか、おじさんは私に問いかけた。
もちろんいったとも。でもいつも「すべての不幸は本人の力不足だ」と聴き入れてくれないのだよ。
おじさんの質問に答えながら私は胸に胃液が上がってくるのを感じ、外階段の鉄板の上に唾を吐いた。何度も何度もあいつから言われた言葉は未だに私を蝕んでいるようだ。おじいさんはすまない、無理をさせてしまったかな、といった。いや大丈夫続けるよ。
私は今日も会社の近くのビジネスホテルから通って会社が開くのとともに出勤したよ。そしていつも通り仕事に取り掛かった.
そうすると黒瀬さんが今日珍しく話しかけてくれて僕の話を聞いてくれたんだ。嬉しかったよ。10分ぐらい話しただろうか、一段落つくと、じゃあそろそろ、と黒瀬さんがいって奥の部屋に入っていった。
まもなく部長が出てきて、怒鳴った。「お前全力でやっているって言ってたよな。さっき黒瀬と雑談してサボっていたそうじゃないか」私は何がどうなっているのか一瞬わからなくなった。「なぁ、黒瀬 お前さっきそう言ったよな」黒瀬さんは頷いた。
私はすべてを察した。私は心の支えになっていた人から裏切られたのだ。私は目がうるんで前が見えなかったが気づくと黒瀬の顔を殴っていた。黒瀬は、すまないこうするしかなかったんだ、殴るだけ殴ってくれといった。私は後ずさりし、呆然と立ち尽くした。「なぁ、すべての不幸は本人の力不足だろ」そう言い放った上司はなんとニヤニヤと笑っていた。
私は次の瞬間全力で殴りかかっていた。