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第七十八矢 港町にて

「お~絶景だね~」


 見晴らしの良い丘から見えるのは、どこまでも澄み渡った大海原。

 俺たちは駿府から南に位置する清水(しみず)へと来ていた。

 しかし、決して海を見たいがためにわざわざ清水まで来たわけではない。

 俺はクルッと振り向いて、後ろに控えていた吉田氏好らに言った。


「じゃ、行こっか。」


 そうして、俺たちは丘を下ったところにある港町へと向かった。


 ここ数年、俺は金山開発の他にも力を入れている経済政策があった。

 それは物流網の整備。

 そこで俺は今川の領土を東西に貫く東海道(とうかいどう)に目をつけた。

 東海道とは律令時代に設けられた大道のことで、当時の重要な交通路だった。

 俺はその東海道の利便性を活かして、物流をより円滑化しようとしたのだ。

 また今川の領土は海に接していたため、海上を経由した運送が可能であった。

 ゆえに、俺は商人の船でここ一帯の特産品を京や堺などにも運ばせていた。

 それに加えて、その際に商人へ税を課していたことで、今川はさらなる利益を得ていたのだった。

 その中でも海に面し、かつ東海道の通り道となっていた清水を物流網における重要拠点としていた。

 今回は、その清水の港町の視察に来たのである。


「人めっちゃいる。」


 港町へと着いた俺たちはさっそく驚いた。

 港町は駿府の町と同じくらい人で溢れており、また海の方を見やれば多数の船が港を行き来していたのだ。


「茶屋とか商店とかもあるし、すごい充実してんじゃん。ここにも饅頭屋あるかな?」

「殿、あそこに饅頭屋があり申した!」

「え、マジで!?後で行こ。」


 その栄え具合に俺が感心しながら町の様子を見て回っていると、一人の商人が俺の姿を見て首をひねった。


「ん?あれはもしやお殿様では…」

「そうなのか?」

「やはりそうだ!一度駿府でお見かけしたことがある。あの方はお殿様じゃ!」

「なに?お殿様じゃと?」


 商人たちがそう言うのを聞きつけて、たちまち人々がぞろぞろと俺たちのところに集まってきた。


「お殿様!一体何のご用で清水に参られたのでございますか?」

「今日は視察です。にしても、人がすごいですよねー」

「はい!おかげさまで商売繁盛しております!」

「それは良かった。これからも商売頑張ってください。」


 そんなやり取りをしながら、俺は港町を視察&堪能した。


 視察を終え、俺たちは駿府へと帰り道を辿っていた。


「いやー、予想以上に栄えてたわ。ついでに饅頭もおいしかったし。」


 俺は港町の雰囲気を思い出して、感嘆の息を漏らした。


「でも、ドンドンあの調子で商人が増えていくと統制が取れなくなるかもしんないなー。反乱とか起きたら厄介だし。」

「確かにそうなると困りまするな。」


 氏好も俺の懸念に同調した。

 俺はつぶやく。


「…法律を追加してみよっかな。」

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