第十九矢 余興
ミーンミンミンミンミー
騒がしい蝉の鳴き声が聞こえる駿府館の近くにある寺。
その寺の境内の墓地では今川氏輝が安らかなる永遠の眠りについていた。
そんな氏輝の墓の前で義元と寿桂尼は目を閉じて手を合わせていた。
「氏輝が亡くなってから、もう二ヶ月経つなんて…時の流れは早いものですね。」
寿桂尼は目を開けて、昔の記憶を思い出してしみじみと氏輝の墓を眺める。
「さあ、では帰りましょうか。」
寿桂尼がそう言うと寿桂尼と義元は寺を後にして、駿府館へと帰っていった。
あの恵探軍との戦いから二ヶ月の時が経っていた。
家督争いを制した俺に待っていたのは、争いにより疲弊した国の立て直しであった。
また、恵探軍が占領していた地域の再統治や恵探軍に与した人間の処遇など国主としてやらなければならないことが山積していて、二ヶ月間ずっとそれらの問題の解決や手続きに追われていた。
そして、昨日でようやく一段落ついたのであった。
俺は自身の部屋で久しぶりに休息を取っていた。
「あー疲れた…」
(……どこか行ってリフレッシュしたいな。)
天井を眺めながらそう考えていた。
(そう言えば、城下町まだまともに行ってないよな…)
「よし、気分転換に城下町でも行きますか!」
ということで、俺は藤三郎や犬丸、そして吉田氏好らの少数のお付きと共にお忍びで城下町をぶらぶらと散策していた。
顔がばれると人が集まってきて散策どころではなくなると氏好が言うので、笠をかぶっている。
「おぉーやっぱにぎわってますな~」
改めて俺は城下町の活気と規模の大きさに感心した。すると、俺は饅頭屋があるのに気づいた
「ちょうど小腹が空いたし買ってこよ。」
俺が饅頭屋へと行こうとすると、氏好がそれをあわてて止めた。
「お待ちください!それがしが買って参ります。」
「じゃあ八本買ってきて。皆で食べよ。」
氏好は饅頭屋へ行って饅頭を買ってきた。
そして、氏好が買ってきた饅頭を俺は一口で食べる。
甘みが口の中で広がった。
「うん、おいしいー」
犬丸や藤三郎たちもおいしそうに食べていた。
俺はその後も様々な店を訪れて、城下町を充分に満喫した。
「うーん、どうしたものか。」
城下町を散策した翌日、大広間にて俺は崇孚と相談をしていた。
相談内容というのは恵探軍との戦で共に戦ってくれた城下町の民衆や武将をねぎらうための催し物についてである。
「いろいろと一段落ついたところだし、何か参加型の余興をやろうと思ってるんだけど承菊はなんか案ない?」
崇孚は少し考えてた後、意見を述べた。
「…蹴鞠はどうだ?蹴鞠は民衆にも親しまれておる遊びであるし。」
「確かに蹴鞠なら万人受けしそう…!」
俺自身が蹴鞠を好きだったこともありその意見を採用して、蹴鞠大会を開催することにした。




