炸裂っ!!鉄山靠
2作目の作品になります。前作[異世界の事情]に比べて、シリアスな内容となっております。
拙い作品ですが、楽しんで頂けると幸いです。
前作[異世界の事情]共々、宜しくお願い致します。
午前の実技で、またもや、やらかしたユーリ。
しかし、彼の受難は、これからだった。
なんと、魔導士学園なのに、武器を使った模擬戦があったのだ。
勿論、武器は木製で、酷い怪我をしないように、なっているが、武器は武器だ。
ユーリにとって、鬼門の授業だった。
ユーリは、使い慣れたナイフを選んだ。掴んだ手は、震えていた。
それを見た一人の生徒。黒髪で、金色の瞳をした、同学年とは思えない背と、体格をした男子、ザック・バロンが、
「先生〜、俺、ユーリ君とやりたいですっ!!」
と、ニヤニヤと笑いながら、挙手をした。
フランダは、それを了承。
ユーリ対ザックの、模擬戦が行われる事になった。
ザックは、
「どうした、チビ助っ!ビビってんのかっ!」
と、ユーリを挑発した。
しかし、ユーリはそれどころではない。木剣と言え、武器を持ってしまったのだ。その為、動揺していた。
反応がないユーリを面白くないと思ったザックは、両手剣で、ユーリに斬りかかった。
しかし、ユーリは、ナイフを使わず、震脚で踏み込んで、背中をザックに、打ち当てた。所謂、八極拳の〈鉄山靠〉だっ!!
ザックは、まるで、自動車に撥ねられたように、吹き飛んだ。
ユーリは、
「あっ!!」
と、我にかえったが、もう遅い。ザックは、気を失っていた。
余りにも衝撃的な展開に、言葉も出ないクラスメイト。
ザックは、そのまま、保健室に運ばれた。
一連のやり取りを見ていたマルクは、
「凄えなっ!あのザックをあんなに、吹っ飛ばすなんてっ!!」
「い、いや、咄嗟につい・・・。」
と、言葉を濁らすユーリ。
身体に染み付いた動きは、動揺していても、出てしまうものだった。
その後、授業が再開されたが、ユーリに挑戦しようとする者は、出てこなかった。
午前の授業が終わると、昼食の時間だ。
学園では、食堂のメニューから、好きな物を選べる。
ユーリは、オムライスを頼んで、空いている席に着くと、対面にマルクが、座った。
マルクは、どうやったら、あんな凄いぶちかましが出来るんだなど、ユーリに質問した。
ユーリは、練習すれば、誰にでも出来るよと、当たり障りないように、答えた。
すると、マルクは、
「俺もあれぐらい出来ないと、冒険者になれないのかな?」
「へっ?マルクは、冒険者になりたいの?」
「ああ、俺は男爵家の三男坊だからな、跡目は継げないんだ。だから、冒険者になって、身を立てようと思ってるっ!」
「そっか〜、冒険者か〜。」
「ユーリは、将来どうするんだ?」
「う〜ん、まだ、決めてないよ。」
「なら、一緒に冒険者にならないか?もう、俺たちの年齢だと、登録出来るからさっ!!とりあえず、なってみようぜっ!!」
「う〜ん、まっ、なるだけなら、良いかな?」
「良しっ!決まりだっ!!今度の週末、登録に行くぞーっ!!」
と、冒険者登録する事になったユーリ。
暗殺者じゃない人生を送れる事に、感謝するのだった。
午後の授業は、座学だった。ザックも無事、復帰していて、安心したユーリだった。
そうこうしている間に、週末になり、マルクと約束した冒険者登録の為、冒険者ギルドに来たユーリ。
冒険者ギルドは、飲み屋を併設した作りになっていて、新鮮な気分だった。
無事、登録が終わった二人。
勿論、ランクは、Fランク。一番下のランクだ。
同ランクの依頼を10件こなすと、上のランクに上がれるらしい。
マルクが、早速、依頼を受けようと言うので、常時依頼のゴブリン討伐を選んだ。
しかし、ここで、問題が発生した。
ゴブリンの討伐証明は、ゴブリンの左耳を持ってくる事だ。
つまり、耳を切り取らなければならない。
マルクは、鉄製の片手剣を持っているが、ユーリは、手ぶらだった。
そこで、急遽、ユーリの武器を買う事になった。
ユーリは、相変わらず、躊躇したが、人殺しの為じゃないと、割り切って、武器屋に足を運んだ。
ユーリが選んだのは、ナイフだ。
ナイフと言っても、同じ値段のものでも、切れ味が違う。
しかし、落ちぶれても、元暗殺者。
優れた観察眼で、良いナイフを見極め、購入した。
これで準備は整ったと、マルクと共に、王都の近くの森に向かった。
森に入ると、すぐにゴブリンは、見つかった。
マルクが、ファイアボールの魔法を、ゴブリンの頭に当てると、
「グギャキャっ!?」
と、頭に火かついたゴブリンが、暴れる。そこを、マルクが片手剣で、切り裂いた。
その一撃で、ゴブリンを倒したマルク。
左耳を切り取って、皮袋に詰めた。
「案外、簡単だなっ!」
と、マルクは言うが、相手が1匹だったからだと、ユーリは思った。
複数相手では、きっと苦戦するだろうと思っていたら、案の定、複数のゴブリンと遭遇した。
数は、4匹。こちらの倍の数だ。
ユーリは、アイスランスの魔法で、2匹を同時に倒したが、マルクは、1匹目の相手に夢中で、もう1匹が、マルクに襲い掛かろうとしていた。
それを見たユーリは、八極拳の〈斧刃脚〉で、ゴブリンの足をへし折ると、その首をナイフで、撫でた。
咄嗟の事であったが、ナイフを使ってしまったユーリ。
しかし、相手は人ではなく魔物だ。
自分にそう言い聞かせて、冷静さを取り戻すユーリだった。
誤字等あると思いますが、楽しんで頂けたけたら幸いです。なるべく間隔を開けずに投稿しますので、続編も宜しくお願いします。
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