王都からの使者
2作目の作品になります。前作[異世界の事情]に比べて、シリアスな内容となっております。
拙い作品ですが、楽しんで頂けると幸いです。
前作[異世界の事情]共々、宜しくお願い致します。
ユーリが逃げ込んだ森は、トランザ帝国の国境を越え、隣国のエイトピア共和国の中だった。
そんな辺鄙な所に住んでいるグスタフの元へ、来客があった。
心を開いたとは言え、グスタフ以外の人とは、交流がなかったユーリは、家の隅に隠れた。
現れた人物は、白銀の鎧を見に纏った、金髪、金色の瞳をした騎士だった。
その騎士は、グスタフに、
「お久しぶりでごさいます、大賢者殿。」
と、丁寧な挨拶をした。
ユーリは、大賢者?と、思っていたが、グスタフは、
「もう、わしは隠居した身じゃ。そんな大層な人間ではない。」
と、否定した。
しかし、騎士は、
「ご隠居されても、大賢者殿は、大賢者殿です。」
「よさんか、煽てても何も出んぞ。」
と、グスタフは、その騎士と、面識があるようだ。
すると、騎士は、隠れているユーリを見て、
「あのお子様は、どちら様ですか?」
「あの子は、わしの養子じゃ。ユーリ、出てきなさい。」
と、ユーリを呼ぶ、グスタフ。
言われたユーリは、家の隅から出ると、グスタフの後ろに隠れた。
やれやれと、思うグスタフ。
グスタフは、騎士をユーリに紹介した。
「こやつは、エイトピア共和国の親衛隊隊長の、ギニアス・アルシウスじゃ。これ、ユーリ。挨拶せんか。」
と、ユーリに挨拶するよう、促すグスタフ。
ユーリは、グスタフの影から、顔を出して、
「ゆ、ユーリ・マグドールです。」
と、なんとか、挨拶をした。
すると、ギニアスは、
「ユーリ君か、初めまして。ギニアス・アルシウスだ。宜しくね。」
「よ、宜しくお願いします。」
と、挨拶を交わした。
それを見届けたグスタフは、ギニアスに質問した。
「親衛隊隊長が、こんな辺鄙な所まで、何の用じゃ?」
「実は、大賢者殿にお願いがあって、参りました。」
「わしにか?」
「ええ、実は、王都周辺に、厄災級の魔物が出まして、冒険者や騎士団で、討伐に向かったのですが、多大な被害が出てしまい、更に、未だ、討伐出来ていないのです。」
「それを、わしに討伐せよと?」
「はい、ご隠居された大賢者殿には、大変失礼ながら、どうかお力添えをお願いしたいのです。」
「・・・それは、陛下のご意志か?」
「さようでございます。」
「ならば、仕方あるまいて。分かった、請け負おう。」
「ありがとうございますっ!!陛下もお喜びになるでしょうっ!」
と、話が決まってしまう。
厄災級。
魔物には、ランクがある。
下からF、E、D、C、B、A、Sだ。
その中でも、B級が災害級、A級が厄災級、S級が天災級と、呼ばれており、その脅威は計り知れない。
冒険者にも、同様にランクがあるが、魔物とのランクとは、かけ離れている。
魔物の厄災級、A級を倒すには、Aランクの冒険者パーティーが、5組は必要となる。
それは、騎士団、一個師団分の戦力だ。
下手な人数で挑んでも、返り討ちに合うだけで、実際に、エイトピア共和国は、窮地に追い込まれていた。
そこで、引退したとは言え、Sランク相当の実力を持つグスタフに、お呼びがかかったのだ。
グスタフは、この際だから、ユーリを同行させようと思った。
ユーリは、人見知りだ。
王都に行けば、それが、少しでも解消出来るのではないかと思っていたからだ。
その為、グスタフは、
「ユーリ、お前も一緒に来なさい。」
と、ユーリを誘った。
言われたユーリは、戸惑った。何せ、この森に来てから、外に出た事もないし、魔物との戦いも、初めてだ。
出来る事なら、家に篭っていたいと思った。
そんなユーリの考えは、グスタフはお見通しで、
「留守番などは、させんぞ。王都を、観光するのじゃからな。」
と、強制的に、連れ出すつもりだ。
話を聞いていたギニアスは、
「危険ではありませんか?」
と、ユーリの心配をしてくれた。
しかし、グスタフは、
「この子は、わし以上の魔法が使える。問題はない。」
「だ、大賢者殿以上ですってっ!?」
「そうじゃ。だから、連れて行く。」
と、決定してしまう。
すると、グスタフは、
「ユーリ、旅の支度じゃ。必要な食料と水を、アイテムボックスに入れて、出発じゃ。」
〈アイテムボックス〉
異空間魔法で、荷物を収納出来る魔法だ。
当然、ユーリも、使えるようになっていた。
言われたユーリは、干し肉やパン、水瓶を、アイテムボックスに入れていく。
まさか、アイテムボックスまで使えると思わなかったギニアスは、その光景を唖然として見ていた。
ユーリの準備が終わると、グスタフは、未だ、固まっているギニアスに、急かすように言った。
「此方の準備は、終わりじゃ。ほれ、馬車の用意をせぬか。」
「は、はいっ!すぐにでも、出られますっ!!」
と、あらかじめ用意していた馬車に、グスタフたちを案内するギニアス。
こうして、ユーリは、新しい街、王都へ、向かう事になった。
誤字等あると思いますが、楽しんで頂けたけたら幸いです。なるべく間隔を開けずに投稿しますので、続編も宜しくお願いします。
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