新しい家族
2作目の作品になります。前作[異世界の事情]に比べて、シリアスな内容となっております。
拙い作品ですが、楽しんで頂けると幸いです。
前作[異世界の事情]共々、宜しくお願い致します。
ユーリは目覚めると、ベットから起き上がり、部屋を出た。
すると、階段があり、下から、いい匂いが漂って来る。
その匂いにひかれて、階段を降りると、老人が、キッチンで料理を行っていた。
ユーリに気付いた老人は、ユーリに、椅子に座るよう、促した。
素直に、椅子に着いたユーリを見た老人は、ユーリにお茶を入れてくれた。
「飯が出来るまで、お茶でも飲んでいなさい。」
と、言って、ユーリを気遣ってくれる老人。
ユーリは、
「ありがとうございます。」
と、言って、お茶に手をつけた。
心が緩むような、ハーブの香りが、鼻をくすぐる。
ユーリが、お茶を飲んでいると、老人が、対面の椅子に腰掛け、ユーリに質問した。
何故、あんな場所で、しかも、死にかけていたのかと。
ユーリは、これまでの経緯を、嘘偽りなく、老人に伝えた。
暗殺一家に生まれた事。
暗殺に失敗し、逆に、命を狙われた事など、本来は、ザシード家の事は、秘密だったが、この老人には、嘘をつきたくなかった。
話を聞いた老人は、何故、ユーリが助かったのかを、教えてくれた。
たまたま、薬草を取りに、森の中を入っていた時に、瀕死のユーリを発見し、回復魔法をかけたのだと。
この世界には、前世ではなかった魔法が、存在する。
老人の名は、グスタフ・マグドールと言うらしい。
元宮廷魔導士で、今は引退して、この森に居を構えているそうだ。
ユーリの話を聞いたグスタフは、
「それは、辛かったじゃろう。だが、此処なら安心じゃ。好きなだけ、居ればええ。」
と、優しい口調で、語った。
しかし、ユーリは、その言葉に遠慮した。
「でも、ご迷惑になるのでは?」
「何、わしも独り身じゃ。一人より二人の方が、楽しいじゃろ。」
と、ユーリを歓迎した。
こうして、ユーリは、グスタフと言う老人と共に、生活していく事になった。
グスタフは、元宮廷魔導士という事もあって、途轍もなく、魔法に精通していた。
ユーリは、グスタフに、魔法を教えてもらう事になった。
嫌々、学ばされた暗殺術と違って、自ら望んで、魔法を教わるユーリは、メキメキと上達していき、魔法に夢中になった。
また、ユーリは、ザシード家の名を捨てた。
もとより、抹消された身だ。悔いはなかった。
そこで、グスタフは、ユーリを養子として迎えた。
ユーリは、新しい性。マグドールを名乗り、ユーリ・マグドールとなった。
教えた事を、どんどんと吸収していくユーリに、グスタフは、己の知識を惜しみなく、与えた。
魔法だけでなく、魔物との戦い方、薬草から作るポーションの作り方、この世界の歴史など、あらゆる知識を教えた。
そんな生活を、1年も続けていると、閉ざされていたユーリの心も開き、活発な少年へと、成長していった。
「爺さん、早くっ!新しい魔法を考えたんだっ!!見て欲しいんだよっ!!」
「これ、待たんかっ!わしの歳を考えて、走らんかっ!!」
と、森の中を駆けるユーリ。
それを追いかけるグスタフ。
ユーリは、魔法の練習場に使っている広場に着くと、息の上がっているグスタフを見て、
「これからやる魔法は、爺さんに教えてもらった魔法を、改良したものなんだっ!見ててよ。〈ローゼス・バースト〉っ!!」
と、ユーリが唱えると、薔薇の形をした炎が、辺り一帯を埋め尽くした。
すると、その薔薇の炎は、爆発を起こした。
次々と爆発を起こす、薔薇の炎。
それは、上級爆裂魔法の〈ヘル・バースト〉をも凌ぐ、魔法だった。
余りの規模の大きさに、腰を抜かしそうになるグスタフ。
改めて、この子は、天才だと思った。
そして、グスタフの思いは、ユーリが見せた、次の魔法で、確信へと変わる。
「次はこれっ!!〈ミラー・サンシャイン〉っ!!」
と、ユーリが唱えると、広場にあった岩が、太陽光の熱で溶け、地面まで溶かし、余りの高温でガラス状になった。
それを見たグスタフは、ユーリの才能に驚愕した。
「ユーリ、これらの魔法は、人に向けるではないぞ。」
「当たり前だよ。僕は、人を傷つけたくないっ!」
魔法の才は伸びたが、ユーリの性根は、優しいままだった。
その事に安心したグスタフは、今まで以上に、ユーリに魔法を教えていく。
それが、人類で、最強の魔導士を誕生させる事になるとも知らずに・・・。
誤字等あると思いますが、楽しんで頂けたけたら幸いです。なるべく間隔を開けずに投稿しますので、続編も宜しくお願いします。
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