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ブラック企業モノローグ ~ロスジェネは仕事中毒?~

作者: 凜古風

 最近は、随分とホワイトになりましたけれど、私が入社した会社はブラック企業でした。ああ、そうですね「ブラック企業」という言葉がネットで生まれる数年前くらいになります。


 ホワイト化の原因は以下のとおり。

  ・経営者が創業者から息子に代替わりしました。

  ・労働基準監督署に入られました。

  ・転職サイトでボロクソに書かれました。


 そんなこんなで、有給休暇も取りやすくなりましたし、残業代が出ないのに残業を強要されることも減りましたし、色々と風通しも良くなったのです。

 

 でもまぁ、何と言いましょうか喪失感のようなモノを感じてしまい、あまり投稿することのないエッセイを執筆するに至りました。


 さて、創業者たる先代社長なのですが、これがまた強烈なジジイでパワハラの権化でした。従業員をクソでかい声で怒鳴りまくるし、暴れるし。暴言もひどいし。

 ろくでもないジジイだったのですが、熱さがあったんですよね。

 戦国武将みたいな?

「全員っ、俺に続けぇええええ。突撃ぃいいいい」

 な、人だったんですよ。

 まさしく興国の一戦と言っても差し支えなかった大企業からの圧力に対する必死の抵抗。

 品質の過剰要求や価格破壊、銀行の貸し渋り……そんなこんなで中小企業は破産・倒産・吸収合併etcで沢山消えていったあの頃、ヤバかったのです。

(あぁ~でも、倒産してたら転職しやすかったかなぁ)


 若かった私も前線に投入されました。

 会社の残り少ない資産をブチ込んでの背水の陣。

 発生するデスマーチ、倒れるエース、逃亡する4番、鬱病になるキャプテン。

 吠える社長(現在の先代)「まだだ、まだ、やれる」

 ベテランを失うという多大な犠牲を払いながらも、生き残ることができました。


 結果として、数人を補充しベテランのやっていた厄介な仕事を片付けることになったわけですが、これが上手くいかない。

 辞める、辞める、また辞める。ハローワークも大忙し。

 戦国武将のような我らが社長と付き合いが長い取引先社長達も、これまた戦国武将。

「最近の若いヤツは、お前みたいに神経太いんちゃうんかいッ!」

 知らんがな。っていうか、私が神経太いみたいな言い方しないで欲しいなぁ。繊細なのに。


「……社長。リンコフ君は世代に関係なく歴代全従業員で一番神経が太いと思います」

 そーですか。素敵なフォローありがとうございますクソ上司さんよ。

「英語でヨーロッパの取引先から、取り立てもしてくれましたし」

「オックス・フォードの博士号のヤツを英語で言い負かしたのか」

「はい。何故か関西弁に聞こえる英語ですけれども」

 やめて、技術部門がいいの。モノ作りがいいの。クリエイターなの。

 私の英語力なんてネトゲの外国人チームとスカイプで会話して遊んでた程度だからね。ビジネス交渉の小難しい単語は知らないからね。お金の取り立ては勢いだけでできるからね。


「よし。やれ。リンコフが技術部門から抜けても問題ないか」

「正直、周囲より少し浮いていますからね。彼」

 くっ、無能扱いした例のおっさんがチクりやがったな。

 っていうか、私を厄介払いしたいのかねぇ。

 誰のおかげでガタガタの状況でデスマーチを切り抜けたと思ってんだ?ん?

  ( ↑リンコフ心の声 )


「と、いうことで。リンコフ君。海外事業部行きで良いか?やりたいか?」

 一応、こちらの意向も汲んでくれるらしい。

「給料が増えるなら、やりたいです♪」

 うむ。お金には代えられない。人間関係もイマイチだし。

「そうか、やりたいか」

 ちゃんと聞いていたんだろうな。

 と、まぁそんなこんなで海外事業部付けになりまして15年以上過ごしております。


 でも、海外事業部付けになってから4月の給料をみたら。。。

 給料が減ってたんですよねぇ。

 腹が立つから技術部門に戻してもらおうと社長室へ直談判しに行ったんですけど。

「オマエが『やりたい』と言ったから、海外事業部付けにしてやったんだろぅが。ヴォケ」

 と吠えられ、シッシと社長室から追い出された次第です。

 まぁ、リストラ&減給で必死に調整しているのは知っていましたけど。

 『給料が増えるなら』といった都合の悪い内容は、聞いちゃいねぇ。

 そりゃねーよ と、思ったのでした。


 ロクでもない会社ですよねぇ。今はやや改善されましたけど、当時は有給取ったらボーナスの査定に響いてきっちり減額されましたし。

 で、海外事業部の仕事をするようになってしばらくしたころ、デスマーチで退職した人達が蜂起し、労働基準監督署がやってきて、技術部門がてんやわんやしていましたね。もちろん私は知らんぷり。それから、転職サイトでボロクソに書かれていました。ワンマンだのパワハラ地獄だのマンギョンボン号だの……


 そして、混沌の中、事態を重く見た社長息子が、父親を退陣させました。


 ところがまぁ、このジュニアは、コンプライアンスだの労働管理だの、うるさいうるさい。ビール飲みながら仕事できなくなって怒ってる人いるしwww。有給は取りやすくなりましたし、サービス残業も激減しましたけどね。


 新社長の息子はアウトボクシングというか狙撃兵というかそんな気質でして、インファイターで突撃兵だった先代の父親とは随分と気質が違いましてね……


 嗚呼、ロスジェネ世代の正社員の少なさよ。私より少し年上の新社長は、内線をかけてチョイチョイ私を呼び出すんですね。めんどう。

「なぁ、リンコフよ。親父から俺の代になって、随分とホワイト化したと思うが……知っての通り会社の業績がなぁ。新型コロナを抜きにしても、なにか原因がありそうか?」

「そうですね。『熱さ』ですかね?新社長は『突撃』とかしないですから」

「デスマーチを起こせと?」

「そうじゃないんですよ。強烈なリーダーシップとかやり切った後の達成感が最近ないんですよ。わかります?」

「デスマーチ抜きで、それは難しいかもな」

「社長が社員の闘志を鼓舞して『ウォオオオオッ!』って仕事したいじゃないですか」

「体育会系のノリって言われるぞ。ブラックだぞ」

「そうなんですよねぇ」

「君のいる海外事業部は順調だけど、国内事業はガタガタなんだなぁ。さて、どうするか」

「ブラックだった頃のほうが面白かったのは事実です」

「それな……」


とまぁ、そんな会話も交えて、しみじみ思うのですが。

「全員っ、俺に続けぇええええ。突撃ぃいいいい」

「ウォオオオオッ!」

みたいな環境って、しんどかったけど、

ちょっと楽しかったような気もします。

なによりも熱かったです。


決してブラック企業が正しいと言いたいワケではありませんので、あしらからず。


(おしまい)

熱さを求めて転職しよっかなー。

でも、40過ぎて体力もイマイチ。

ロスジェネは仕事中毒なんでしょうね。


そうそう「突撃」っていうのはね。

苦しい状況を分かった上で準備して行う勇気ある行動なんです。

何にも考えずに備えずに突進するのとはチョット違うんです。

若い子に、どうやって説明したらいいんだろう。

考えなしに突っ込んでいくのはアホウのすることなんですけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] ブラック時は何というか自分が支えてるんだW という感じが有るんですよ。 但し配置換えされたらやる気を無くしますが・・・。 いや本当に。 ボーナス無いくせにウダウダ煩いし。
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