変装して本を読んでいたら、婚約者さまにナンパされました。髪を染めただけなのに気がつかない浮気男からは、がっつり慰謝料をせしめてやりますわ!
「青い髪をなびかせる美しいひと、相席しても構わないかな?」
とある昼下がり。下町のカフェでひとりのんびり過ごしていたら、チャラいナンパに遭いました。
いや、普通に嫌なんですが。なんですか、そのクサい台詞は。そもそも話しかけないでくださいと言わんばかりに本を開いているのに、どうして声をかけてくるんですかね。
なんて言えるはずもなく、ため息をこらえて顔を上げ……、そのまま固まってしまいました。えっと、これはどういうことでしょう?
目の前には普段はひとつに束ねている後ろ髪を無造作に流し、にこやかに微笑んでいるイケメンがひとり。そう、私の婚約者さまです。
「やあ、僕の顔に何か?」
「……いいえ、とても素敵な方だったので見とれてしまいました」
驚きを呑み込んでご挨拶。ちょっと待ってくださいよ。え、もしかしてこの方、休日になるたびに今回のように女性に粉をかけて過ごしていらっしゃるの? 正直、ドン引きですわ。
「そう言っていただけて幸せだよ、愛しいひと。けれど、君の髪色ほど素敵なものは初めて見たよ。空よりも美しいその青に愛を誓おう。どうかな、お茶の後は一緒に街歩きを楽しもうじゃないか」
「……まあ、嬉しい」
うわ、最悪です。いくら髪の色がちょっと違うからって婚約者に気がつかないでナンパしてくるなんて、その頭と目は腐ってらっしゃるのかしら? でも私、気がついてしまいました。もしかしてこれって「浮気」にあたるのではないでしょうか。つまり、婚約者によるナンパの回数を積み重ねていけば、「婚約破棄」に持ち込めるのではありませんか?
***
自慢じゃありませんが、私の婚約者であるヴィンセントさまはイケメンです。美形で運動神経もよく、才能が溢れた宮廷魔道士でお金持ちの名門貴族。
一方の私はというと、貧乏伯爵家の長女で歴史だけはあるという状態です。歴史だけはあるというか、歴史しかありません。娘の持参金も用意できないくらいですものね。
史上まれに見る優良物件をあてがわれて、何が不満なのかと言う方もいらっしゃることでしょう。ですが、考えてもみてください。何もかも完璧な男の隣で微笑んでいられるのは、超絶美女か生粋のお馬鹿さんくらいなもの。一般人にはハードルが高過ぎるのです。
しかも私は、一般人ですらありません。まだ年頃だというのに真っ白なこの髪は、「魔力なし」と蔑まれるものなのです。この世界では、髪色は自身の魔力を示すもの。色が濃く鮮やかであればあるほど尊ばれます。それこそ美しい髪色、つまりはより豊かな魔力さえ持ち合わせていれば、平民であっても出世の道が開かれるほど。
正直なところ、この世界において私は無価値なのです。両親は私のことを愛してくれていますが、それはただ血の繋がりゆえのこと。とはいえ、他の家で魔力なしの子どもが生まれたら、産声を上げてすぐにくびりころされていたはずですから、両親のもとに生まれ落ちたことは私の人生の中で最大の幸運だったのでしょう。
それなのにあの方ときたら。
「僕の運命のひと。白雪よりも白く純粋なその髪に愛を誓おう」
歯の浮くような台詞で、彼は私に求婚してきたのです。会うたびに繰り返されるのは、教本を丸覚えしたかのような誰にでも使える薄っぺらい言葉ばかり。もちろんデートのお誘いなんてありません。きっとこれは何らかの思惑を持つ政略結婚。
初夜のときには、「お前を愛することはない」などと言われて、捨て置かれるのでしょう。読書家の私、そういう話には詳しいのです!
望んでもいない玉の輿に伴う淑女教育と周囲からのやっかみにより、ストレスは溜まっていくばかり。疲れを我慢しているだけで、機嫌が悪い、怒っていると婚約者に遠巻きにされる始末。あげく、気晴らしに出かけた下町で、こんなことになるなんて。
けれど、今回の件はチャンスとも言えるはずです。証拠を確保すれば相手側の有責で婚約解消できるはず。さらにうまくいけば、がっぽり慰謝料をもらって自由気ままな独身生活を送ることも夢ではありません!
ヴィンセントさまのお望み通り、その場限りのデートを満喫してやろうではありませんか!
***
早くこいこい婚約破棄、がっぽり慰謝料! ノリノリでヴィンセントさまからのナンパをOKしていた時代が私にもありました。カフェに図書館、植物園。噴水のある広場に、大きな池のある公園。どこにいても、どんな格好をしていても、彼は私に声をかけてきます。なんという節操なし。
でも今さらながら私は思うのです。それってやっぱり、あんまりなのではないでしょうかと。
「どうしたんだい、運命のひと」
「運命ですか……」
何が「美しいひと」、「可愛いひと」、「運命のひと」ですか。もうこれは彼が女性に声をかけるときの呼び声に他ならないのですね。きっと「こんにちは」、「すみません」、「やあどうも」と同程度の意味しか持ち得ないものなのでしょう。ついつい、ため息がひとつこぼれ落ちます。
「何が君を悲しくさせるのかい。君が君である限り、僕の愛は永遠に君に捧げよう。その燃えるような紅い髪に誓って」
「……はあ、どうも」
イケメンにキザなセリフを言われて、気乗りしない返事をしているなんて不逞な野郎だとお思いのあなた。今すぐ私と立場を交換いたしましょう。この状況でクサいセリフをささやかれても、正直白目になるのをこらえるので精一杯ですよ。
「疲れているときには、これだよ」
「……ありがとうございます。綺麗な赤色ですね」
「君の紅の髪には敵わないよ」
まるで宝石のように綺麗な飴玉を口の中に放り込まれます。真っ赤な飴玉は、苺ともりんごとも異なる甘い味わいです。これ、どこの高級店舗で作られているんでしょうね。あっという間に口の中で溶けてしまうせいで、名残惜しさを感じてしまうほど。
きっとびっくりするくらいお高いんでしょう。そんなものを、ほいほい与えてしまうなんて。美味しいものをいただいたはずなのに、ますます頭が痛くなりました。
この間はちょうど緑色の飴をもらったんでしたっけ。その前は深い琥珀色。どちらのときも、やはり髪色にちなんだ愛の言葉をささやかれたのでした。
「世界樹の葉よりも美しいその緑の髪に愛を誓うよ」
「どんな蜂蜜よりも甘いその亜麻色の髪と永遠を紡ごう」
本当に嘘ばっかり。その場限りの愛の言葉なんて、もらわないほうがよっぽど幸せです。
「ごめんなさい。今日はもうこの辺で失礼いたします」
「そんな、愛しいひと!」
「……そんな風に呼ばないで!」
私の言葉にヴィンセントさまが目を丸くしているのが見えました。テキトーに遊ぶ相手なら、好みとか関係ないんですかね? 性別が女性ならなんでもよいのでしょうか? それならばなおのこと、婚約者は私でなくても良いのではありませんか。
火の日、私は髪を赤に染めていました。
水の日、私は髪を青に染めていました。
風の日、私は髪を緑に染めていました。
土の日、私は髪を茶に染めていました。
生まれもった髪色を変えることはできない。それがこの世界の常識です。ですから私たちは変わらぬ愛を、相手の髪色になぞらえて捧げます。
けれど彼はそれぞれ別の髪色を持つ私に対して、「運命のひと」とささやき、愛の誓いを捧げたのです。何股するつもりなんでしょうかね。しかも、その誰にも名前を聞いておりません。
気ままな浮気よりも、よほどタチが悪いのです。女心をもてあそぶなんて。
普通のひととは異なる私だからこそ、髪色への愛の誓いは何より大切なものでした。それをこの方は、なんでもない顔で破ってしまったのです。
清々しいまでに誠意がないことに呆れて、それからとてつもなく悲しくなってしまいました。
――僕の運命のひと。白雪よりも白く純粋なその髪に愛を誓おう――
あんな子どもだましの嘘を、後生大事に抱えていたことに気がつくなんて。ヴィンセントさまは、私以外の女にも簡単に愛の言葉をささやくのだと知ってしまったというのに、どんな顔で隣に立てばいいのでしょう。
***
「そこの綺麗なお姉さん。今から俺たちとお茶しない?」
「すみません、急いでおりますので」
「そんなこと言わずにさあ」
「申し訳ありませんが、この手を離してください」
半泣きでヴィンセントさまの元から逃げ出した私は、あっさりとガラの悪い男性陣に捕まってしまいました。
無我夢中で走っているうちに、下町でもあまり治安の良くない場所に来てしまったようです。鮮やかな髪色をしていますが、それは所詮まがいもの。魔力なしの自分では、魔法で自分の身を守ることさえできません。
思い通りにならないことに苛立ちを覚えたのでしょう。男のひとりにすごまれました。握られた手に力が込められ、ぎりぎりと痛みます。
「ブスのくせに気取ってんじゃねえぞ」
でもそのブスに声をかけたのは、あなたたちですよね? なんて言えば頬を打たれたあげく、酷い目に遭うのでしょう。そうです、どうせ私はブスなんですよ。こんなときだというのに、私の心にいじけ虫が出てきました。
私が顔だけではなく、性格まで卑屈なブスでなければ、婚約者さまが手当たり次第に女性に声をかけることもなかったのでしょうか。
あれだけ愛の言葉を疑い、逃げ回っていたくせに、本当は愛されたかったなんてお笑い草。もっとちゃんと向き合えば良かったのに……。今さらそんなことを嘆いてもあとの祭りなのですが。
怖くて、苦しくて。ぽろりと涙がこぼれます。そのとき。
「彼女から、離れろ!」
ふわりと甘い匂いに包み込まれるのと同時に何かが私の中から引き抜かれました。間髪を容れず、目の前の男たちがどかんと爆発します。え、爆発? 季節外れの花火のようにふたりが空へと飛んでいきました。
「……ヴィンセントさま」
「僕の可愛いひとを泣かせるとは、死ぬ覚悟はできているんだろうな?」
「あの、私が泣いていたのは、どちらかと言えばあなたのせいです……」
「なんてことだ。つまり、死なねばならないのは僕のほうだったのか!」
いや、そんなわけないでしょう。と言いますか、家屋の向こう側でぴくぴく死にかけの黒光りするあの虫みたいに動いているあのひとたち、大丈夫ですか? これ以上攻撃したら過剰防衛になりそうなので、速やかに警らの皆さんをお呼びしたいのですが。
暴漢を引き渡すにはどうしたらいいかと眺めていれば、ヴィンセントさまにぎゅっと抱きしめられました。なんて手の早いかたなのかしら! まだ婚約者である私だって、抱き締められたことなどないのに! ナンパした女性を体を張って助けたあげく、こんな破廉恥な!
「パメラ、出かけるときにはもう少し気をつけて。心配で僕の身がもたないよ」
「普段はもうちょっと気をつけています! だいたい私のことを襲う物好きなんていないと思うじゃありませんか……うん?」
あれ、あれれ?
「いつ、私がパメラだと?」
「パメラはパメラだが。パメラがパメラでなかったときがあるのか?」
「そういう哲学的な答えは求めていなくてですね。ほら、この髪の色を見て何か言いたいことはありませんか?」
「ああ、世紀の大発見だよ。どの髪色のパメラもとても可愛らしいことがよくわかった」
うそ、でしょう? 宮廷魔道士であるヴィンセントさまが、髪色を変えられるという重大発見をスルー? さらには私のことをべた褒め? いえいえ、騙されてはいけません。このまま結婚して、合法的に実験動物にするおつもりかもしれませんし!
***
「本当に最初から気がついていらっしゃったのですか?」
「君は僕の運命のひとだ。どこにいてもすぐにわかるよ」
「それ誰にでも言っていますよね? 何度もナンパされましたし」
「僕はパメラ以外には、この言葉を使ったことはないが?」
「つまり、すべて私だと認識してナンパしていたというのですか?」
「パメラ。なぜ君が僕のことを信用してくれないのかわからないが、僕が君を思う気持ちは本物だよ」
「だって、いつもふんわり聞こえの良いことしかおっしゃらないではありませんか。デートだって、普段は誘ってくださらないのに、髪を染めているときだけは声をかけてこられますし」
私のツッコミに、ヴィンセントさまが崩れ落ちました。そんな全力で「絶望」を表現されても困ります。
「伝えたほうが良かったのか?」
「むしろ、どうして伝えなくていいと思ったのですか。少なくとも私は、具体的に私のどこが好きか教えてほしいですね」
婚約者さまの言葉は、誰にでも使える美辞麗句過ぎて、口先だけの言葉にしか聞こえませんでしたから。
「そうなのか。陛下からは、『具体的過ぎて気持ち悪いから控えろ』と忠告をされていたんだが、失敗したな。悲しい思いをさせてしまってすまない」
「えーと、陛下がアドバイスをくださったのですか? やはりこれは政略結婚なのでしょうか?」
「まさか! 僕が陛下にお願いしたんだ。パメラとの結婚を許してほしいと」
「よくお許しが出ましたね」
こんな優良物件、下手したら、王女の降嫁先として挙げられるでしょうに。不思議がる私に向かって、婚約者さまがこくりとうなずきました。
「結婚を許してもらえないなら、君をさらって他国に逃亡すると宣言したからな」
「さらりと私の意思を無視しないでください」
「陛下からは、くれぐれも嫌がっている相手をさらうな、監禁するな、無理矢理添い遂げるなと言われている」
「恋愛指南どころか、犯罪防止のための注意事項なのでは?」
なんとまあ信じられないことに、私は想像以上に愛されていたようです。
「だが、そうか。パメラは具体的に愛の言葉があったほうが安心できたのか。ならば安心してほしい。君に伝えられなかったぶんのこれまでの愛の言葉は、すべて詩集にしてある。それを今すぐ届けさせよう。図書館に僕の寄贈本専用の書庫があってね」
「は、詩集?」
ちょっと予想外の言葉が出てきました。研究一筋のヴィンセントさまがポエムを口ずさむとか、想像がつきません。
「今までは迷惑がられると控えめにしていたプレゼントも、どんどんやっていこう。季節の花束を君に届けられるように、王都に植物園を作っていたんだが、気に入ってくれたようで嬉しいよ。あそこの名義も君にしておくからね」
「……は?」
「これからは、大手をふってデートができるな。結婚前に万一のことがあってはならないと言われていて二人きりのデートも禁止されていたから、街中で君を見つけたときは天にものぼる気持ちだったよ。しばらく様子を見てみたところによれば、髪を染めたパメラは魔力波動が変わって彼らも認識しづらいみたいだね。陛下の派遣した護衛も簡単に撒けるから正直助かるよ」
え、陛下が派遣した護衛? それって、誰から私を守っているのでしょうか?
首を傾げていると、私をぎゅうぎゅうと抱き締めているヴィンセントさまの力が強くなります。
「まったく、パメラは可愛いな。『パメラ』という名前はパメラにしか使えないようにしたい。ああ、それがいいな。今度報奨をもらうときには、それをお願いしよう」
「やめてください」
一体どこの暴君ですか。陛下の苦労がわかったような気がしました。今度から、日々のお祈りの際には陛下への感謝も捧げるようにしておきましょう。
***
「すみません、先ほど魔力波動が変わったという話がありましたが、私には魔力がありませんよね?」
「ああ。普段なら君からは魔力が感じられない。それが、髪を染めている時には魔力の匂いが漂うんだ。なんとなくで君を見分けている護衛たちでは、君を見失ってしまうんだよ」
なるほど。まるで自分は的確に把握していて、決して見失わないような口ぶりです。……今まで偶然出会ったナンパって、全部最初から居場所がわかっていて声をかけられていたんでしょうか……。怖っ……ちょっと考えないようにしておきましょう。
「それでは、どうやって髪の毛の色を染めたのか、予想はつきますか」
「普段とは異なる魔力の匂いがしていたからね。人工的に作られたそれぞれの属性の魔石を口にしたのでは?」
「正解です。なるほどそれがわかっていたから、私の体内にある魔力を引き出して先ほどの暴漢退治に役立てたのですね」
ヴィンセントさまの属性は水。私が髪を染めるのに使った魔石の属性は火。私は自前の魔力がないゆえに、魔法を発現させることができませんが、よく訓練された魔道士は自身の属性魔力以外の魔法も使うことができると言います。きっと水属性と火属性を組み合わせて、見た目に派手な魔法を使ったのではないでしょうか。衝撃的な魔法を使うことで、相手側の心を折ることもできますし。
「違うけど?」
「ち、違うんですか!」
じゃあ、一体どうして私の中の魔力を引き出して使用したのでしょうか。もしかして、趣味?
「趣味で魔力の無駄遣いはしないよ」
「ですよね」
髪の毛の色を染めるために魔石を使う私が言うのもなんですが、魔石は安価なものではありません。魔力だってヴィンセントさまが規格外なだけで、普通は節約して使うものです。くだらない理由で消費してよいものではないのです。
「僕のパメラの中に、他人の魔力が入っていることが許せなくてね」
「……は?」
「さっきは、僕の魔力と君の魔力……正確に言うなら君が今日髪を染めるのに使った火の魔力を混ぜ合わせて、水蒸気爆発を起こしたんだ。ただそれだけだと髪の色が元の雪色に戻ってしまうだろう。可愛いパメラを僕以外のひとに見せたくはないからね、直前に別の天然魔石を食べさせておいてちょうどよかったよ」
「特殊体質がバレたら危ないからではなくてですか? って天然魔石?」
その先を知りたいような、知りたくないような。おずおずとヴィンセントさまを見上げました。
「パメラ、君がいつも食べているのは飴ではなく魔石だよ」
「ちょっと、待ってください。あれは私が買っている魔石とは全然味が」
「そうだね。君がいつも買っているのは人工魔石だ。適当な石に適当な使い手が余分な魔力を込めたもの。でも、どうして他人の魔力を僕の可愛いパメラの体内に入れなければならないんだい?」
高純度の天然魔石は、宝石よりも高価なもの。それを飴玉代わりにぱくぱく食べていたなんて。ヴィンセントさま、何を当然みたいなどや顔してるんですか!
***
「そもそも髪の毛の色が違うだけで、本人かどうかわからないだなんて。僕の愛はその程度のものだと思われていたことが悲しい」
うん?
何でしょう、雲行きが突然怪しくなってきたような?
「こんなに愛しているのに伝わっていなかったのか。やはり、身も心も僕色に染めてしまわなければ」
「ちょ、ちょっと、すみません! 何か今、不穏なこと考えていませんか?」
「いいや、全然、まったく」
「その笑顔が逆に怖いんですが!」
逃げ出したくても、いまだ私はヴィンセントさまの腕の中。完全に囚われの身の上です。
「パメラは知っているかな。魔力は人間のどこに宿るのか」
「か、髪ですか?」
「人間の肉体すべてに宿るから、間違いではないね。髪の毛が長い方が魔力をためることができるという利点も実際にある」
「へえ……」
「でも、髪の毛では魔力の受け渡しは非効率だ。より効率的なのは……」
「効率的なのは? ……ふぐっ!」
そのまま、角度を変えながらいきなり深い口づけをされました。ひ、ひ、酷いです! 初めての口づけがいきなりこれなんて、あんまりです! しかもここは、外なのに!
「人間の体液だ」
散々に口内を食いつくされた後、ふわりと揺れた私の髪の毛は、一房、艶めく青に染まっていました。
「どの髪色のパメラも可愛いけれど、やっぱり青色が似合うね」
「……ひえっ」
「さあ、続きは部屋に戻ってからかな」
効果的な魔力の受け渡し方法、え、ちょっと、これ以上聞きたくないんですけど!
私が汚れなき花嫁としてバージンロードを歩けたかどうか。その点については、どうぞみなさまのご想像にお任せしたいと思います。
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