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第9話 追放勇者、ケジメを付ける【その2】

 病院の遺体安置所は、大概は地下にある。

 遺体の腐敗が進まないよう、また、臭いなどの問題もあるため、外よりも温度が低く保てる場所として、地下が最適なためだ。


 遺体安置所に入ると、病院の敷地一面を全部使ったくらいの広い部屋になっていた。

 そこには患者が使用するものと同じベッドが整然と並べられていた。

 そして遺体は、丁寧にすべて、真っ白な布で包まれていた。


 これだけ遺体置き場が大きいのには、理由がある。少し前までは、ここビルガドのハクノ区は、魔王城の最前線基地になる可能性があったからだ。

 しかし幸運にも、七勇者の活躍もあって、魔王の手はハクノ区まで十分に届かず、この広い遺体安置所の全てが埋まったことは今まで一度も無い。


 もちろん、病院内で亡くなった人の遺体も、ここに一時的に安置される。

 サックがこの部屋に入った際には、4つのベッドが使われていたのが見えた。

 いずれのベッドの横には、病院側の計らいで、季節の花が供えられていた。


 いずれのご遺体も布で覆われ、中は見えない。しかし、彼は見えてしまっていた。

 まっすぐ、目的の場所に向かった。軋む体を引きずり、しかし今は、誰の手も借りず、自分の足だけで、その場所にたどり着きたかった。

 クリエは安置所の入り口で待っていた。流石に空気を読んだのだろう。サックと彼女を二人きりにすべきだと……。

 薄暗い遺体安置所は、外よりもだいぶ冷え切っており、吐く息もうっすらと白くなっていた。


 サックは、一つのベッドの前にやってきた。

 体は白い布で覆われているが、顔には、一枚の布が掛けられているだけだった。

 サックは左手で、布を外した。

 血色が抜け、真っ白な顔。そして、艶やかで真っ黒な、特徴的な長髪。

 サザンカが、眠っていた。

「……」

 遺体は、丁寧に処置されていた。体や髪に付いた血液や土汚れは綺麗に落とされ、いわゆる死に化粧も施されていた。


 サックの顔は、ただ一点。彼女の顔を見つめていた。その表情は、クリエの立つ側からは伺えない。


 サザンカの遺体と一緒に帰路に着いたクリエは、だいたいの事情を飲み込んでいた。

 部屋の外で縛られ身動きが取れない中、イチホと勇者アイサックの激闘が否応なしに聞こえていたし、サックの叫び声も、鮮烈に耳に響いていた。


「……けじめ、付けてくるぜ」

 サックは、サザンカの髪を触ろうと右手を出すも、そこには手がなかった。すぐに右手をひっこめ、左手で髪を避け、露わになった彼女の額に、キスをした。


「もうしばらく、そっちには行く気はない。成すべきことを全部終えてくる」

 サックは、ゆっくりと布を、彼女の顔に掛けなおした。ふわりと、優しく彼女の顔に覆いかぶさる。




「クリエ。単刀直入に聞く」

「……ふぇい!?」

 急に、サックはクリエに話を振った。全く油断していたクリエは、いきなり話し掛けられたため、変な声が出てしまった。

 サックは、入り口に体を向けた。振り向いた彼の顔は、先程までの無気力なものではなく、何かの決意を固めたもののように感じた。


「えっ……なんでしょう」

 彼の強い意志……気迫とも思える雰囲気に飲まれ、再度びっくりした表情を示したクリエ。だが、なんとなくではあるが、サックが何をしたいか、何を成し遂げたいと思っているのかを、彼女も察した。


「ボッサは……ボッサ=シークレ(あのバカやろう)の居場所は、どこだ」



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