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陰キャ男子高校生と天真爛漫なアイドル  作者: 結城ナツメ
陰キャ男子高校生と天真爛漫な―――
95/112

白のセーター

 ハッキリ言葉にはしていなかったが、たぶん鹿野さんは俺に叱られると思ってうちに来たんだろうな。

 まぁ今までさんざん迷惑かけられた時には、俺は怒るなりお仕置きするなりしてたからな。

 まさかあんなに怯えるとは思ってなかったけど…。


 それはとにかくとして、あのバラエティ番組については小言を言ったけど、俺は鹿野さんと一緒に遊びたかったから呼んだんだ。

 なので今は、鹿野さんと一緒に外へ出掛けていた……のだが。


「う~ん。わかっていたが、凄い見られてんな」

「仕方ないよ。昨日の今日だもん」


 俺と鹿野さんは変装のへの字もしていない。その為、道行く人たちから凄い視線を送られて来ているし、めっちゃザワついている。

 これは鹿野さんの希望だ。ありのままの自分たちで遊びたいとか。

 まぁ、別にいいけどさ。


 鹿野さん(アイドル)と一緒に歩いても、何も問題はないんだから。

 彼女が構わないって言ってるんだから、それに甘えるべきだろう。あと変装しないことで、この間のデートの時のような変な虫が寄り付かないようにも出来るし。


「それにしても、まさか昨日のLITIが遊びの誘いだなんて思わなかったよ~。てっきり一日中お説教かと…」

「以前だったらそうしてたかもな。ほっぺを抓り、君の膝の上に乗っかるっていう、今までのお仕置きを添えてな」

「ひえっ…」

「でも別にいいよ、そんなことは。今はもう慣れちゃったし」


 もちろん、出来ることなら迷惑なんてかけないでほしい。

 だけどこの人にそんなこと期待しても無駄だ。どこかで俺を巻き込むようなことをしでかす。


 俺のことを嫌いにならない限りは。……そんなことは万に一つも無さそうって思うのは、自惚れだろうか?


「えへへ。でもあまり迷惑かけないように気を付けるよ」

「そうかい。まぁ期待しないでおく」

「あはは……何も言い返せない…。そういえば、どこに向かってるの?」

「俺が鹿野さんと一緒に行ってみたかった場所」


 俺の言葉に鹿野さんは、頭の上に「?」を浮かべたような顔をする。

 そんな鹿野さんに、今回遊びに誘った理由を説明する。


「今までは、鹿野さんの行きたい場所に行くことが多かっただろ?鹿野さんが好きなこと、好きな物……それは結構知ってきたけど、逆に俺の好きなこととかは教えてなかった気がしてさ。それを知ってもらいたいんだ」

「桐ヶ谷君の好きなことと好きな物……確かに、あまり知らないかも。ゲームや漫画、アニメ……一人で楽しむ系の物が好きなのは知ってるけど、あとはお米が好きってことくらいかもしれない。あ!でも理乃先輩のご飯が好きっていうのはわかるよ!一番美味しそうに食べてるもん」

「えぇっ?」


 マジかよ。それって俺が一番好きな飯って、お姉の料理ってことじゃねぇか。胃袋を掴まれてる気はしてたけど、まさかそこまでだなんて思わなかった…。

 弟の大好物を、自分の料理にしていたお姉は嫌いじゃない。無自覚だろうけど…。


「全然知らんかった…。自分じゃ案外わからないもんだな」

「あははっ。桐ヶ谷君ってば、テレビでシスコン疑惑かけられちゃうかもね?」

「普通の兄弟姉妹より仲が良いのは自覚してるが、シスコンではない……はずだ」


 なんか自信ねぇけど…。何とかコンって、本人に自覚がないことが多いもんな。

 ……いやでも、自分はお姉さまラブとか言うような人間ではない。それは確実だ。

 よし、俺はシスコンじゃない。そうだと信じよう…。


 なんて結論付けて、改めて鹿野さんを見る。

 そして思った。やらかしたと。


 ……俺、鹿野さんの服装を褒めてねぇ…。

 いかん、これでは俺は最低な男……までは行かなくても、鹿野さんに呆れられるかもしれない。

 だけどあまりジロジロ見る訳にはいかないので、ざっと鹿野さんの服装を確認することにする。


 袖のない白の縦セーターに、太ももまで露出している短パンジーンズという、シンプルながら活発な彼女を表した装いだ。

 ……今気づいたが、このセーターかなりスタイルがくっきりとわかるな…。お腹ほっそ。


 しかし活発な彼女を表したと言っても、それは元々鹿野さんのことを凄い快活少女だと知ってるから出てきた感想だ。

 喋ってない今は白のセーターのおかげか、大人っぽさと御淑やかさも感じて……て、あれ?このセーターって…。


「鹿野さんのそのセーターって、もしかしてこの間俺が…」


 俺がそう言うと、鹿野さんは頬を膨らませながら答える。


「あっ。やっぱり気付いてなかったんだ~…」

「……すまん…。周りの視線で、少し緊張してたもんで」


 やっぱりそうだ…。鹿野さんが着ているのは、この間のデートの最後に、俺がプレゼントした奴だ。

 着てくれて凄い嬉しいけど、それにすぐ気付けなかった自分が情けない…。


「ふ~ん。まぁいいや、結果的に気付いてくれたし。それでどう?似合ってる?今日はお説教されるって思ったけど、やっぱり桐ヶ谷君によく見て欲しくて着たんだ」


 鹿野さんは俺の前に立って、一回転して前屈みになりながら、上目遣いで聞いてくる。

 ……くそ。一個一個の仕草と言動が一々可愛いな。撫でてやる。


 その衝動に従うままに、彼女に返答する。


「ああ。凄く可愛いよ。普段の快活な鹿野さんも良いけど、大人っぽい鹿野さんも素敵だね」

「っ!?~~~~~~っ!」


 鹿野さんの頭を撫でながら思ったことを素直に言うと、彼女は顔を真っ赤にしたまま、喋らなくなってしまった。

 ……恥ずかしいセリフを言った自覚はしてる。俺のキャラじゃないことも。

 だからそんな目で見るんじゃないよ!見世物じゃねぇぞ!?


 周りの視線で段々恥ずかしくなって来た俺は、鹿野さんの手を引いて、その場から逃げ出した。

 慣れないことはするもんじゃないな…。

あまっ。


この話が面白いと思ったらブクマ登録と高評価、いいねと感想をよろしくお願いいたします。


明日は『俺が銀髪美少女に幸せにされるまで』を投稿する予定です。

https://ncode.syosetu.com/n5786hn/

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