デート4
日に日にコロナが拡大しています。
マジで仕事や食料と暇潰しの為のゲームなどを買いに行く以外は外出しないことをオススメします。
稚拙ではありますが、私は皆さんの暇潰しになれるよう、こうして小説を書いて役立てるように頑張ります!
桐ヶ谷君が服を買いたいってことで、ショッピングモールへやって来た。
どうも桐ヶ谷君はファッションに無頓着らしく、私に似合う服を見繕って欲しいってことだった。
私は気合を入れて彼に似合う服を選んであげた。文句の一つも言わずに選んだ服を全部買っちゃうから、昔から服は誰かに選んでもらっていたのがよくわかった。
これから俳優として活躍することは江月ちゃんだけでなく、私も期待している。
だから少しは自分でもファッションに気を遣うように言っておいた。他人じゃなくて自分でも選ぶようにって。
私に正論を言われたのが相当悔しかったのか、渋い顔をしていたのはなかなかに失礼だったなぁ…。
私だってアイドルなんだから、あんな顔しなくてもいいのにねー。
桐ヶ谷君の服を選んだ後、せっかくだから私も服を買おうと思った。
目ぼしい物が見つからない中、ようやく見つけたのは縦に線が入っているセーターだった。
凄く大人っぽくて可愛いデザインだから、さっそく試着してみて桐ヶ谷君に感想を求めたんだけど……
「セーターって、もっと落ち着いた人が着てそうなイメージだからなぁ…」
そう言われて、買うのは断念した。
色っぽくて綺麗とか、可愛いとか言われたかったなぁ…。
……そんな風に思う辺り、私はやっぱり桐ヶ谷君のことが好き、なのかな…?
一緒にいるだけで楽しいし、幸せを感じちゃうし……でも、自信が無い。
今まで恋なんてしたことないし、ドキドキはするけど胸がキュウッて締め付けられるっていう感覚は無い。
桐ヶ谷君なら良いかな?みたいなすっごく失礼な考えに近いような気もするし、本気で好きかもしれないし……という問答をずっと繰り返している。
「というか前者の考え方、桐ヶ谷君に酷いことした女の子と同じじゃん…」
アクセサリーを見に入った雑貨屋さんで、そんなことを呟く。
桐ヶ谷君は買い忘れた物を買いに、一度お店を出た。
私は思っていたよりも醜い女なのかもしれない。
などと少し自己嫌悪に陥るが、最初は皆そんなものなのかもしれない。
恋って、本当によくわからない。それを知る為に、桐ヶ谷君を遊びに誘ったのになぁ…。しかも恋愛映画を一緒に見たのに、面白かっただけでこの好きがラブなのかライクなのか全くわからなかった。
それがわかる瞬間が、どこかであるのかな?
「はぁ~……結局、私は桐ヶ谷君とどうなりたいんだろ…」
「お待たせー」
ビクッと身体が震える。桐ヶ谷君が戻ってきたみたい。
私は自慢の演技でいつも通りの笑顔を作る。普段から自然な笑顔が多い私だけど、今日ばかりはずっと作った笑顔ばかりだ。
「おかえりー」
「えっと……悪い。ビックリさせるつもりは無かった」
「ううん。大丈夫。ちょっと集中して見てただけだから。欲しい物も無かったし、行こっか」
「もう良いのか?」
「うん。無理して買うことないしね」
結局、アクセサリーも良い物が無かった。
そのまま雑貨屋さんを出た後、そのまま帰路についた。
―――――――――――――――――――――――――――
桐ヶ谷君が家まで送ってくれるとのことで、まだ一緒にいたかったしお言葉に甘えることにした。
「……………」
「……………」
お互いに沈黙が続く。
最初はなんとか話題を出して気を紛らわせてたけど、さすがにネタ切れ…。どうしよう……さっきまで桐ヶ谷君とどうなりたいか考えてたせいで、どう話せば良いかわからなくなってきちゃった…。
えっと……この間のバレーの試合楽しかったねーとか?それをネタにハイ○ューの話が出来るから……うぅ。でもそんな話を急にしだしたら、変に思われちゃうかも…。
桐ヶ谷君はずっと表情を変えずにいるし、気まずいとか思ってないのかなぁ…。
などと考えている間に、もうすぐ完全に日が沈む時間になった辺りで、現在借りているマンションの前に着いてしまった。
「……それじゃあね、桐ヶ谷君。ここが私が住んでるマンションだから」
「そうか…」
別れの挨拶をして、マンションの中に入ろうとカードキーでロックを解除しようとしたところで桐ヶ谷君から声がかかる。
「鹿野さんっ!これ…」
少し緊張した面持ちで、プレゼント包装された物を差し出された。
私はそれに驚いて、思わず目を見開いた。明らかにそれは、私へのプレゼントだ。
「これって…」
「プレゼント。お見舞いに来てくれたのと、俺に前を向かせてくれたお礼」
「そんな……気にしなくても良かったのに…」
「気にするわ。あんな恥ずかしいこと…」
「あ…」
私が桐ヶ谷君を抱きしめたことか…。
はうぅ…。思い出したら、顔が熱くなってきちゃった。
「えっと……プレゼントありがとうね!開けても良いかな?」
「うん。どうぞ」
赤くなった顔を誤魔化そうと、プレゼントを受け取ってさっそくと丁寧に包装を解く。
中身を見て、また目を見開いて驚いた。それは私が買うのをやめたセーターだった。
「これ、どうして?似合わないって言ってたじゃん…」
少し拗ねるように頬を膨らませながら言うと、桐ヶ谷君は頭を掻きながら答える。
「似合わないなんて言ってない。むしろ似合うって言ったわ」
「そうだっけ~?」
ジト目で見ると、桐ヶ谷君は何かを言い淀みながら目を逸らす。
やっぱり似合わないって思ってるじゃん、と思っていると……
「その……めちゃくちゃ、可愛かった…」
「えっ…」
消え入るような声で言われて、思わず聞き返すような声を出してしまう。
「可愛かった。それにいつもと違って、色っぽかった。鹿野さんにめちゃくちゃ似合ってたし、なんならもう一回着ているところを見たいくらいだ」
真っ直ぐ見つめられながら、はっきりそう言われてさらに顔が熱くなった。
……ああ…。やっぱり桐ヶ谷君に褒められると、凄く嬉しい…。心臓がすっごくうるさいくらい高鳴っている。
「ふふふっ。ありがとう、桐ヶ谷君!そう言ってくれて、すっごく嬉しい!大事にするね」
私はセーターを大事に抱えながら、そう言った。
「……そう…」
無愛想に顔を逸らして言う桐ヶ谷君。
夕陽でわかりづらいけど、顔が少し赤くなっているのがわかった。
ふふっ。可愛い。
次回も鹿野さん視点の予定。
ブクマ登録や評価、感想をくださると作者のモチベが上がります。




