表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰キャ男子高校生と天真爛漫なアイドル  作者: 結城ナツメ
桐ヶ谷誠を好きになる女子なんていない
51/112

甘えて良いんだよ2

すみません…。文章が拙すぎて、読み辛いかもしれません…。

 目が覚めると、そこは知らない天井だった……とは流石にならなかった。

 しっかり俺が知ってる天井、俺の部屋だ。時刻は夕方らしく、オレンジ色の陽の光が差し込んでいた。

 確か俺は、まともに起き上がることも出来なくて、お姉にナースコールかけて……その後どうなったんだっけ?寝起きなのもあって、記憶が曖昧だ。

 ……そうだ。お姉が部屋に慌てて入って来て、それから俺に死体にやるような布団のかぶせ方をしてから……そこからの記憶が無いな…。


 とりあえず身体を起こしてみる。

 まだ身体は怠いが、動けない程ではなさそうだ。だが明日からまた学校に行けるかどうかは怪しい所だ。また凄い吐き気がして気持ち悪いし、身体に血が足りてない感じがする。

 だけどこれ以上学校を休み続けるのはマズイし、なんとか治さないと……


「……桐ヶ谷、君…?」


 どう治そうか考えようとしたところで、横から声がかかる。


 見ると、一人の女の子が心配そうな顔で、俺の手を両手で握っていた。半分寝惚けてて全然気付かなかった…。


「鹿野さん?なんで俺の部屋に…?」


 本来、ここにはいないはずの鹿野さんに当然の疑問を聞く。


「その……桐ヶ谷君が、心配だったから…」


 すると鹿野さんは涙目になり、声を震わせながらそう言った。

 どうやら彼女は、二日連続で学校を休んだ俺が心配で、お見舞いに来てくれてたらしい。


「私、理乃先輩から桐ヶ谷君のことを聞いて、いても立ってもいられなくて……それで、仕事も休みをもらって…」

「おいおい。心配してお見舞いに来てくれたのは嬉しいけど、俺なんかの為に仕事まで休むことなんて……」

「なんかじゃないッ!」


 鹿野が声を荒げる。

 彼女はポロポロと涙を流して、握っている俺の手にぎゅっと力を入れた。


「鹿野、さん…?」

「なんかじゃ、ないよ…」


 鹿野さんは涙で顔を濡らしながらも、優しい笑みを浮かべてさらに続けた。


「桐ヶ谷君は、凄く素敵な人だよ?だから自分のことを、そんなに卑下しないで?私はちゃんと、桐ヶ谷君のことを見てる(・・・)よ?」


 その言葉を聞いて、心臓が大きく跳ねた。

 鹿野さんは知らないはずだ。だって彼女の前では、一度も話してないんだから。

 俺が恋愛に対して、酷く悲観的ことを…。

 俺が中学の時に……噓告されたことを…。


 ということは、誰かから聞いた?


「……聞いたのか…?中学の時の話…」

「うん……全部じゃないけど、桐ヶ谷君がクラスの女子に酷いことされたって、理乃先輩から」


 鹿野さんは涙を拭いながら答える。


 お姉が?どうして鹿野さんに?わざわざそんな話をする必要は無いはずだ。

 でも、お姉が俺のそんなデリケートな話をむやみやたらに話す人じゃない。ちゃんと何か理由があって、鹿野さんに話したんだ。


 俺は彼女の涙が引くのを待ってから、聞いた。


「……どこまで聞いたんだ?」

「桐ヶ谷君のことを好きになる女の子はいないって言われて、恋愛に悲観的になってるってことくらい…」

「そうか…」


 お姉がどんな意図があって、中学のことを鹿野さんに話したのかよくわからない。

 だけど、一つだけ思い当たることはある。


『ちゃんと誠を見てくれる女の子はいるわよ』


 その言葉が脳裏に浮ぶ。お姉が俺を励ます為に、何度も口にした言葉だ。

 さっき鹿野さんは、俺のことを見てると言ってくれた。お姉はそれを知っていて、彼女に話したんだろう。それしか考えられなかった。


 俺は不安気に鹿野さんの顔を見る。

 するともう一度俺の手を安心させるように両手で包み込み、真っ直ぐ俺を見つめて来る。そうして俺が話すのを、ずっと待っていてくれている…。


 きっと鹿野さんは、話したくないと言えば無理に聞いてくることはないだろう。今だって、話して欲しいの一言も言っていない。

 だけどそれは、無関係なはずの鹿野さんに対して……なぜか凄く、失礼な気がした。


「……………俺、さ…」


 身体が弱っていたのもあるだろう。人は弱った状態だと、つい誰かに甘えたくなり、弱音を吐き出したくなる。

 気が付けば俺は、彼女の優しさに甘えるように、中三の秋に噓告されたことを話していた。

ブクマ登録や評価、感想をくださると作者のモチベが上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ