甘えて良いんだよ2
すみません…。文章が拙すぎて、読み辛いかもしれません…。
目が覚めると、そこは知らない天井だった……とは流石にならなかった。
しっかり俺が知ってる天井、俺の部屋だ。時刻は夕方らしく、オレンジ色の陽の光が差し込んでいた。
確か俺は、まともに起き上がることも出来なくて、お姉にナースコールかけて……その後どうなったんだっけ?寝起きなのもあって、記憶が曖昧だ。
……そうだ。お姉が部屋に慌てて入って来て、それから俺に死体にやるような布団のかぶせ方をしてから……そこからの記憶が無いな…。
とりあえず身体を起こしてみる。
まだ身体は怠いが、動けない程ではなさそうだ。だが明日からまた学校に行けるかどうかは怪しい所だ。また凄い吐き気がして気持ち悪いし、身体に血が足りてない感じがする。
だけどこれ以上学校を休み続けるのはマズイし、なんとか治さないと……
「……桐ヶ谷、君…?」
どう治そうか考えようとしたところで、横から声がかかる。
見ると、一人の女の子が心配そうな顔で、俺の手を両手で握っていた。半分寝惚けてて全然気付かなかった…。
「鹿野さん?なんで俺の部屋に…?」
本来、ここにはいないはずの鹿野さんに当然の疑問を聞く。
「その……桐ヶ谷君が、心配だったから…」
すると鹿野さんは涙目になり、声を震わせながらそう言った。
どうやら彼女は、二日連続で学校を休んだ俺が心配で、お見舞いに来てくれてたらしい。
「私、理乃先輩から桐ヶ谷君のことを聞いて、いても立ってもいられなくて……それで、仕事も休みをもらって…」
「おいおい。心配してお見舞いに来てくれたのは嬉しいけど、俺なんかの為に仕事まで休むことなんて……」
「なんかじゃないッ!」
鹿野が声を荒げる。
彼女はポロポロと涙を流して、握っている俺の手にぎゅっと力を入れた。
「鹿野、さん…?」
「なんかじゃ、ないよ…」
鹿野さんは涙で顔を濡らしながらも、優しい笑みを浮かべてさらに続けた。
「桐ヶ谷君は、凄く素敵な人だよ?だから自分のことを、そんなに卑下しないで?私はちゃんと、桐ヶ谷君のことを見てるよ?」
その言葉を聞いて、心臓が大きく跳ねた。
鹿野さんは知らないはずだ。だって彼女の前では、一度も話してないんだから。
俺が恋愛に対して、酷く悲観的ことを…。
俺が中学の時に……噓告されたことを…。
ということは、誰かから聞いた?
「……聞いたのか…?中学の時の話…」
「うん……全部じゃないけど、桐ヶ谷君がクラスの女子に酷いことされたって、理乃先輩から」
鹿野さんは涙を拭いながら答える。
お姉が?どうして鹿野さんに?わざわざそんな話をする必要は無いはずだ。
でも、お姉が俺のそんなデリケートな話をむやみやたらに話す人じゃない。ちゃんと何か理由があって、鹿野さんに話したんだ。
俺は彼女の涙が引くのを待ってから、聞いた。
「……どこまで聞いたんだ?」
「桐ヶ谷君のことを好きになる女の子はいないって言われて、恋愛に悲観的になってるってことくらい…」
「そうか…」
お姉がどんな意図があって、中学のことを鹿野さんに話したのかよくわからない。
だけど、一つだけ思い当たることはある。
『ちゃんと誠を見てくれる女の子はいるわよ』
その言葉が脳裏に浮ぶ。お姉が俺を励ます為に、何度も口にした言葉だ。
さっき鹿野さんは、俺のことを見てると言ってくれた。お姉はそれを知っていて、彼女に話したんだろう。それしか考えられなかった。
俺は不安気に鹿野さんの顔を見る。
するともう一度俺の手を安心させるように両手で包み込み、真っ直ぐ俺を見つめて来る。そうして俺が話すのを、ずっと待っていてくれている…。
きっと鹿野さんは、話したくないと言えば無理に聞いてくることはないだろう。今だって、話して欲しいの一言も言っていない。
だけどそれは、無関係なはずの鹿野さんに対して……なぜか凄く、失礼な気がした。
「……………俺、さ…」
身体が弱っていたのもあるだろう。人は弱った状態だと、つい誰かに甘えたくなり、弱音を吐き出したくなる。
気が付けば俺は、彼女の優しさに甘えるように、中三の秋に噓告されたことを話していた。
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