鹿野結衣は自分の想いに気付けない
今回は鹿野さん視点です。
もうすぐホームルームの時間。だけど桐ヶ谷君がまだ来ていない。いつもは私と同じくらいの時間帯に登校しているはずなのに……どうしたんだろう?
たまに冴木君と早乙女君と一緒にギリギリで登校したりするけど、今日はあの二人だけで来てたし……
気になった私は、斜め前の席にいる冴木君に桐ヶ谷君のことを聞く。
「ねぇ、冴木君。桐ヶ谷君はどうしたの?」
「誠?あれ。そういえばあいつ、まだ来てないんだな?誠が遅刻なんて久し振りだな。中学の時以来か?」
「遅刻?なんでそう思うの?」
「あいつは今まで、ほとんど学校を休んだことないから。前に休んだのは、中三の頃だったかなぁ?まぁ体調を崩したとか、そういう訳じゃなかったけど。ちょっとした家庭の事情って奴?」
「理乃先輩や親に起こしてもらったりはしないの?」
「しないねー。ちゃんと一人で起きれないと、誠の為にならないからーって。誠もそれを受け入れてるし」
「それなら良いんだけど…」
「心配いらないって。誠は体調を崩したことないし、朝寝坊はしても、訳ありじゃない限り学校休んだりしないから」
「そうなんだ。良かった~」
それを聞いて安心した私は、安堵の息を吐く。
遅刻と決まった訳じゃないけど、幼馴染の冴木君が言うなら信憑性は高い。
「早く来ないかなー♪ふふふっ」
全く。遅刻なんて情けないなぁ、桐ヶ谷君は。なんだったら明日から起こしに行ってあげようかな?そうすれば、朝早くから桐ヶ谷君に会えるし。
ドラマの撮影してた時に、何回か事務所の車で桐ヶ谷君のお家に送り届けたことあるから、場所は覚えてる。
うん!そうしよう!桐ヶ谷君が来たら、早速提案しよう。嫌な顔されながら断られるだろうけど、物は試し!言ってみなきゃわかんないよね!
「おーっす。今日も元気か~、お前らぁ。顔色悪い奴が何人かいるけど、元気ってことにするぞ~」
そう言って教室にゆかりちゃんが入って来ると同時に、チャイムが鳴る。
冴木君の言う通りなら、桐ヶ谷君は遅刻ということになるだろうけど…。
不安を感じながら、一言一句聞き逃さないようにゆかりちゃんの話を聞く。そして……
「――――あと、桐ヶ谷だけど……今日は体調不良で休みだ」
「えー!?誠、休みなんすか?遅刻じゃなくて」
ゆかりちゃんの言葉を聞いて、驚きの声を上げたのは冴木君だった。
「ああ。貧血と吐き気が酷いそうだ」
「マジですか……誠が体調崩すなんて、初めてじゃないか?」
後半は独り言のように呟く冴木君。
私はというと、桐ヶ谷君が今日は学校に来ないという寂しさで、胸が苦しくなっていた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「皆で桐ヶ谷君のお見舞いに行こう!」
お昼休み。私は凜華ちゃんと純ちゃん、そして冴木君と早乙女君と一緒に昼食を食べていた。
そこで桐ヶ谷君のお見舞いに行こうと提案した。
「ごめん。俺、店の手伝いあるから無理」
「拙者も、テスト期間中に溜まってしまったアニメを観るのに忙しい故。ごめん」
だけど、桐ヶ谷君の幼馴染二人から、即断られてしまった。
「えー!?なんでぇ!冴木君ならわかるけど、なんで早乙女君まで断るの!?」
「いやいや。一回学校を休んだくらいで、大袈裟なんでござるよ。誰だって体調を崩すことはあるんでござるから」
「早乙女君の言う通りよ。それに、今日は隣町で撮影でしょ?そんな暇は無いわ」
「私もお見舞いに行きたいのは山々ですが、やはりお仕事を優先すべきかと…」
「ぶーーー…」
皆からそう言われて、私は頬を膨らませる。
確かに皆の言う通りだ。今日は仕事もあるし、私の反応は一々大袈裟だと思う。
ただ、お見舞いというのは建前で、本当は私が桐ヶ谷君に会いたいだけなのだ。
桐ヶ谷君に会って、今朝からずっと苦しくて仕方がない、この胸をどうにかしたい。可能であれば……撫でて欲しい…。
酷く我儘だとは思うけど、それくらい胸が苦しいのだ。
「う~……桐ヶ谷君成分が足りないよ~…」
「何よそれ…」
結局この日は仕事のせいで、お見舞いに行くことは叶わなかった。
明日は元気に登校して来るかな、桐ヶ谷君…。
「うえ~ん…。桐ヶ谷君に会いたいよ~…」
思わず目に涙を溜めて、そんなことを言ってしまう。
土日はLITIや電話で話すことが出来てたから、寂しいとか苦しいとかは無かったけど、さすがの私も体調が悪い人にそんなことは出来ない。
おかげで寂しさと胸の苦しさが増す一方だ。
「重症だな…」
「重症ね…」
「重症ですね…」
「友達に会えないだけで、なんでそんなに寂しいんでござろうか?」
「「「え?」」」
早乙女君の言葉に、他の三人が信じられないような目で見ていた。
―――――――そういえば、なんで会えないだけでこんなに寂しいんだろう?なんで、こんなに胸が苦しいんだろう?
自分のことなのに、考えても全くその理由がわからず、ただ首を傾げるだけに終わった。
総司お前もか…。
もう貫徹が当たり前になって来てしまっている…。無理に毎日投稿を頑張ろうとして、結果倒れては元も子もないので、時々休ませてもらいます。
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ではおやすみなさいzzz




